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ジェフ・ベックの「El Becko」がハーフ・ディミニッシュではない理由 [楽理]

 今回はジェフ・ベックのアルバム「There And Back』収録の「El Becko」について語る事にします。この曲の作者はアンソニー・ハイマスとサイモン・フィリップスがクレジットされている所も特徴的であり、これほど複雑で多様なハーモニーにドラマーが関与しているとはあらためて驚くばかりです。


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Eikの微分音にLogic Pro X内蔵音源のSculptureを活用 [楽理]

 私のブログでSculptureについて語るのは何年振りでしょうか。おそらく、坂本龍一の「きみについて」を語った時以来の事となると思いますが、微分音のSEを再現する為にSculpture活用はどれほど効果があるのか!? という事を語ってみようかと思います。


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Blue Lagoon(高中正義)が減七でない理由とルーマニアン・メジャー・スケールの関係 [楽理]

 機能和声を標榜する場合であるならば、主和音がディミニッシュとなる状況というのは短和音が一時的に半音変位したりというオルタレーションの状況を先ず考える必要があり、「トニック・ディミニッシュ」という状況を機能和声の方から照らし合わせるのは危険な事であると私は考えるのでありますが、現代のジャズ/ポピュラー音楽に於てはドミナント7thコードを「Ⅴ」としてだけではなく「Ⅰ」として聴く事もある様に、ディミニッシュ・コードをトニックとして聴くという状況も確かにあります。とはいえその世界観を、カデンツ(終止)を標榜する機能和声社会と同一視してしまってはいけないので、その辺りは区別し乍らディミニッシュ・コードという物を視野に入れておく必要があるという物です。

 ひとたび3度音程堆積構造へと還元すればこそ、トリスタン和音とてハーフ・ディミニッシュ・コードへ還元する事は可能です。とはいえジャン゠ジャック・ナティエが33人の大家によるトリスタン和音の解釈を33人33様の例として取り上げている様に、トリスタン和音を一元的に、しかもハーフ・ディミニッシュ・コードとして見立てる事は非常に危険である訳ですが、トリスタン和音出現以降、和音体系は大きく変容したのも事実であり、ディミニッシュという世界観も結果的にはそうした多様な世界観を拡大させる事の助力となっている事も確かなのであります。


 例えば、ホ音 [e] 音を根音とする減七の和音を形成してみましょう。和音構成音は下から [e・g・b・des] を形成する事となります。つまり、英名表記をすれば「E・G・B♭・D♭」という事になりまして、[des=D♭] は決して [cis=C♯] ではないのであります。


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ジノ・ヴァネリ「Appaloosa」のコード表記に思うリック・ビアト氏への感謝 [楽理]

 前回、ビアトさんの『THE BEATO BOOK 3.0』について語った様にビアトさんの体系整備にあらためて感謝しておきたい一つに、四度和音のコード表記としての分類を挙げる事ができます。


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『THE BEATO BOOK 3.0』へ更新す [書評]

 昨年の11月でしたか、リック・ビアト氏の頒布する音楽理論書『THE BEATO BOOK 2.0』について語ったブログ記事を掲載したのは。それから1年と経たぬ2019年9月5日に、ビアト氏からのお知らせメールで『THE BEATO BOOK 3.0』更新の報せがあり、早速ダウンロードする事に。


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Mother Terra(KYLYN)のカウベルの部分音考察 [楽理]

 坂本龍一作曲の「Mother Terra」はアルバム最後の曲を飾るスローなテンポで、シンセ・パッドのクリシェが印象的なイントロでありますが、リフが希薄なので殆どが白玉で構成されている所が一般的にはウケが良くなかったりしたりする物です。処が、バッキングに用いられるシンセのフィルターの漸次変化やフェイザーなどを随所に用いて、特に渡辺香津美のギター・ソロの部分では巧みにシンセ・パッドのフェーダーをコントロールして抑揚を付けており、そういう意味では90年代に入ってからのハウス・ミュージックなどで試みられた、コード進行が希薄乍らも音色を漸次に変化させる手法のヒントになっており、学ぶべき点の多い楽曲であります。


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空間系エフェクトを用いる時のちょっと一工夫 [DAW]

 今やMacではGaragebandが標準装備されている為より多くの人が音楽制作に臨める環境にあるのですが、何よりGaragebandの上位に位置付けられるLogic Pro Xというソフトの普及度の高さも群を抜いているのであり、GaragebandのみならずLogic Pro Xを用いている方も多いのですが、いかんせんエフェクト接続やらセッティングとなると音楽の実経験がモノを道うので、こうした経験に乏しいと途端に音を悪くしてしまいがちです。

 今回はYouTubeの方で、デチューン系統となる空間系エフェクトの接続・設定例の動画をアップしたので、そちらの動画の解説記事として語る事になるので、動画と平行してお読み下さい。





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四度(よど)の響き─Softly / Weldon Irvine [楽理]

 どういう訳か、日本国内では「アーヴィン」やら「アーヴィーン」やらと発音されてしまう「ウェルドン・アーヴァイン」。カリフォルニアにも Irvine という土地がありまして、フツーに「アーヴァイン」と呼ばれるのでありますが、まあ日本国内には能くある担当者の謬見が禍してネーミングされてしまう事など音楽業界では珍しくない物で今更やいのやいの言いたくは無いのでありますが、私のブログに於ては Weldon Irvine を「ウェルドン・アーヴァイン」と呼びますのであらためてご理解いただければ幸いでございます。

 今回はYouTubeでウェルドン・アーヴァインのソロ・アルバム『Spirit Man』収録の「Softly (Pt.1)」の譜例動画をアップした事もあり楽曲解説も併せて語っておこうと企図した物でありまして、2016年にはYouTubeの方でコード進行のみを載せた動画をアップしていた事もあったものです。

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近年の5連符&7連符 [楽理]

 今回は趣向を変えて、タイトル通り近年ではかなり方法論としてポピュラーになりつつある5連符と7連符のリズム活用例について語ろうかと思います。以前にも細野晴臣のソロ・アルバム『泰安洋行』収録の「蝶々San」での林立夫に依るずんぐりとした5連符のリズムをはじめとし乍ら幾つかの記事にて取り上げた事もありましたが、今回は新たなる側面から照らし合わせて語る事に。


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40年が経過し、今あらためて思うKYLYNの「Sonic Boom」 [楽理]

 坂本龍一プロデュースに依る渡辺香津美のアルバム『KYLYN』が発売されたのは1979年6月25日の事。私が最初に入手したのは長兄に録音してもらったカセット・テープを長らく愛聴していた物でしたが、このカセット・テープは長兄が目敏く入手した初代ウォークマンの為に録音したカセット・テープを譲り受けた物でした。というのも、TDKのMAに録音された『KYLYN』でしたが、ウォークマンはメタルテープに対応していなかった為、偶々私がそれを譲り受ける事が出来たという代物だったのでありました。

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YMO名義の「Plastic Bamboo」考察 [楽理]

 扨て、私はYouTubeに於て坂本龍一の初期作品である「Plastic Bamboo」をYMO名義で演奏された『ライヴ・アット紀伊国屋ホール1978』のテイクを基に譜例動画のデモを制作した事もあり、その解説を兼ねて坂本龍一の初期作品にしばしば見受けられる「完全和音および下部付加音(=オンコード)」の解釈の差異を語っておく事は看過できぬ重要な事だと思うので、この譜例動画のアップを機にあらためて語る事に。それについては後ほど縷述します。


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「riot in Lagos」(坂本龍一)にみる微分音活用例 [楽理]

 坂本龍一の微分音活用に関する話題をあらためて語る事に。前回も「iconic storage」を取り上げたので記憶に新しい所だと思いますが、その時に「riot in Lagos」も一緒に取り上げなかった理由は微分音の取扱い方が異なるからであります。「微分音」を取扱っている楽曲ならば総じて何もかもが同じ所に収斂する訳ではありません。



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 12等分平均律(=12EDO)という半音階を用いる体系とて、多くの転調を辷り込ませつつも特定の調のトニックを強く向く曲調もあれば、原調など気にせずに赴いた先が帰着点とする曲もあれば、半音階を駆使している訳でもないのに旋法的な世界観とか、或いは十二音技法だのと色々と性格が違う様に、微分音であろうとも異なる世界観を備えているものです。

 微分音という体系が一般的に周知されていない所で私が慮る事のないままに単に好事家だけを食い付かせるだけの情報を十把一絡げにして提供しまった場合、元来の微分音が持っている魅力をも希釈させてしまいかねないという事に加え一挙に多くを語る事でまるで私が「慫慂」するかの様にレコメンドしたりするのも気が引けてしまいかねないでありましょう。手順を踏まえた上で分別し乍ら深く語って行こうという私の狙いをあらためてご理解いただければ幸いです。


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半音階的全音階社会での和音の振舞い [楽理]

 エイブラハム・ラボリエルという稀代のベーシストの存在がありますが、ラボリエル御大が嘗て教則ビデオとしてリリースされた 'New Bass Concepts' というタイトルで収録されていた一部のベース・ソロ演奏のそれには心を奪われた物でした。

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坂本龍一の微分音 ─「iconic storage」楽曲解説─ [YMO関連]

 イエロー・マジック・オーケストラ(以下YMO)が各メディアで挙って取り上げられる様になり爆発的な人気を博していた1980年。その年の初夏にアルバム『X∞Multiplies 増殖』を戸塚で購入したという事は先日も語った通り。音楽でもファッションでも最先端の存在という誉れ高き名声を恣(ほしいまま)にして来た坂本龍一が突如アルファ・レコードからソロ・アルバムを発表するのがその年の秋の事でありました。

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非和声音 エシャペとノータ・カンビアータ [楽理]

 今回は非和声音に括られる「エシャペ échappée」と「ノータ・カンビアータ」について語っておこうと思います。これらの非和声音の取扱いは非常に重要であるのですが、ジャズ/ポピュラー音楽界隈に於てこれらの非和声音を詳らかに語られる事は先ず無いでありましょう。通俗的な音楽を規準に語られる事のない題材だと嘆息混じりに読むのを止めてしまう方も居られるかとは思うのですが、私のブログで取り上げる以上は西洋音楽界隈だけの見渡しで語る事はないのでお付き合い願いたいと思います。

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『ハーモニー探究の歴史』と《「調」と「調性」》 [書評]

 2019年初頭、音楽之友社から『ハーモニー探究の歴史』が刊行された事は記憶に新しい所ですが、ソメイヨシノ開花の報せを聞いてからの書評とさせていただく事に。

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「Jingle Y. M. O.」 楽曲解説 [YMO関連]

 イエロー・マジック・オーケストラ(以下YMO)のアルバム『X∞Multiplies 増殖』(以下『増殖』)収録の「Jingle Y. M. O.(以下「ジングルYMO」)の譜例動画デモを急遽作る事になったので、これを機会に楽曲について語る事に。

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ディミニッシュ系和音から見るジョージ・ベンソンの「Mimosa」 [楽理]

 今回はジョージ・ベンソンの楽曲「Mimosa」を取り上げる事にしますが、YouTubeには既に「Mimosa」のイントロを挙げているのでお判りの方もご存知かと思います。イントロ部を楽理的に縷述する事になりますが、その前に述べておきたい事が幾つかありますので、先ずは「Mimosa」の別ヴァージョンについて語る事に。

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長短混淆 [楽理]

 今回の記事タイトルは音楽的な意味に於ける「長・短」の世界観が混淆とする世界観の事を表わす物であります。長調と短調と言えば良いでしょうか。

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『シュトックハウゼンのすべて』を読んで [書評]

 2019年2月末、アルテスパブリッシングから松平敬著『シュトックハウゼンのすべて』が刊行されたのは記憶に新しい所であり、待ちに待った音楽書の発売に胸を躍らせ、シュトックハウゼンの全作品が網羅されるそれを拝読、否、拝戴させていただいたのでありますが、それにしても素晴らしい本が刊行された物だなと感服する事頻りであります。作品毎に断章を取って読む事が出来る様に纏められているので貴重な音楽資料が新たにひとつ加わったという印象であります。読んでいて茲迄知的好奇心を揺さぶってくれる緻密な内容に加え、詳らかな脚注、図版・譜例などの圧倒的な情報量の前に、能くもまあこの価格で発売する事が出来たものだと驚かされるばかりで、著者をはじめとする出版関係者の並々ならぬ努力と労劬が垣間見える物であります。どんな言葉で言い表わそうとも卑近な言葉にしてしまうのでないかという恐懼の念に堪えぬ、まさに筆舌に尽くし難いとはこういう書籍の事を道うのだろうとあらためて痛感させて呉れる物です。

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『関ジャム 完全燃SHOW』について [楽理]

 テレ朝系列で毎週日曜23時台に放送されている『関ジャム 完全燃SHOW』という番組は多くの放送回にて音楽の楽理的な側面を掘り下げているのが特徴的な所であり、そうした側面を音楽的素養の浅い視聴者が目にしても理解される様に作り上げる制作サイドの並々ならぬ努力には相当な労劬を伴うであろうと思い乍ら視聴している私であります。

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マイケル・ブレッカーの四分音運指について(2) [楽理]

 故マイケル・ブレッカーが執るインプロヴィゼーションに於ては頻繁に四分音(=クォーター・トーン)を伴わせるフラジオ奏法が顕著であるのを語るのは今回が初めてではなく、以前にもマイク・マイニエリでの「I'm Sorry」での実例やドナルド・フェイゲンのソロ・アルバム『ナイトフライ』収録の「Maxine」でのソロでも聴ける事を述べて来たのであらためて参考にしてもらいたい所であります。

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メトリック・ストラクチャー [楽理]

 今回のブログ記事タイトルを訳すと「拍節構造」という意味であります。小節線や拍子に括られる事のない特定のリズムの断片でもあります。4/4拍子にて8ビートを3:3:2のパルス構造でリズムを刻む事は多いと思いますが、小節線や拍子構造(=この場合は4拍子)の平滑なパルス構造とは異なる構造が先の3:3:2という拍節構造となっている訳です。

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時効警察のテーマに見る短増和音と和声的対位法のアイデア [楽理]

 2019年の正月を終えて飛び込んで来たビッグニュースのひとつに挙げる事の出来るのがドラマ『時効警察』が復活との報せ。

 警察ドラマを謳うも、血生臭い流血シーンも無ければ人命が失われる事も無いシュールでコミカルな警察の描写。だからといって血も涙もないという人情の欠片もないという訳ではなく、事件を俯瞰する事で淡々と分析されるそれにやたらとユルユルとして描写に挟まれる小ネタの配合が実に素晴らしいドラマだった訳でありますね。

 まあ、こんな感想など私が述べる必要なども無いほどに他のメディアでも書かれている感想に類する物でありましょうが、何れにしても譱い報せに心躍らせ乍らテーマ曲を振り返ってみると、なかなか興味深い事実が忍ばされている訳で、そうした興味深い所を緩々と語って参りましょうか。

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「愛しのマキシン」を楽譜面にて比較する [スティーリー・ダン]

 昨秋シンコーミュージックからドナルド・フェイゲン『ナイトフライ』【ワイド版】があらためて刊行されたのは記憶に新しい所でありますが、私個人の見解を語る為にYouTubeには既に「Maxine(邦題:愛しのマキシン)」のイントロのピアノ譜をアップしているので、これを期に色々と語ってみようと思います。



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微分音表記におすすめのフリー記譜フォントEkmelosがバージョン2.3に [楽理]

 2019年初となるブログ記事投稿がよもや2018年の話題になろうとは思いもよりませんでしたが、いつもの冗長な記事とはメリハリを付ける意味で、前年(2018年)師走の音楽方面の話題に触れる事ができればと思い立ち、今回は微分音を表現するにあたりうってつけのフリー・フォントのひとつであるEkmelosフォントをレコメンドする事に。


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移調ですと!? 云うほど簡単ではありません [楽理]

 私はかなりの「原調」主義者であります。原理主義者という訳ではありませんけれどもね(笑)。まあなにせ、カラオケで唄うとなればピッチ・コントロールは手放せなくなる物です。勿論相対音感もきちんと身に付けてはいるので、曲がどのようにトランスポーズ(移調)しようとも追随して唄う事は出来るのですが、原調と異なるキーで唄うというのは最早別の曲の情感で唄っている感じとしてしか堪能できない様な感覚に陥るのであります。


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敷衍され迆《ゆ》く微分音 [楽理]

 12等分平均律の世界に於て一定以上の半音階的音楽社会に馴染んで来た頃、嘗て耳にしたジャコ・パストリアスの「トレイシーの肖像」の中盤に用いられる第11次倍音の捉え方に変化が起きた事を今猶思い返す事があります。

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『THE BEATO BOOK 2.0』を自家製本す [書評]

 今回の話題はリック・ビアト氏の著書『THE BEATO BOOK 2.0』を取り上げる事に。YouTubeでは夙に話題のひとりでもあるビアトさんの繰り広げる音楽理論の話題は兎にも角にも多岐に亘っており、それが機能和声の範疇には収まらない物なので興味を惹き付けて已まぬ方でもあり、私自身、ビアトさんのバイトーナル(複調)関連やホールズワースを題材など氏の論考に疑念を抱く事などなくその確かなる論考にいつも深く首肯している一人であります。とはいえ私の音楽ネタはビアトさんを元にしているのではないのですが、ある程度音楽の高次な部分に触れようとすると、その志向性は同じ方向を向く所があるので共通する様な物を感じてしまうのであり、同時にシンパシーを感ずる物でもあります。


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日野皓正の楽曲 [Newborn Swing] に見る調性プラン=Tonal Plot [楽理]

 今回の楽曲解説にて取り上げる曲は1983年に発売された日野皓正のアルバム『New York Times』に収録される「Newborn Swing」という曲でありまして、私にとってこの曲の位置付けというのは《死して猶天国に持って行きたい》楽曲のひとつである物なので個人的な思い入れは大変強い曲であります。とはいえ楽曲解説に於て単に私の主観だけを鏤めるだけでは本曲の凄さは伝わりにくいと思うので、数多ある楽曲の中でも何故こうした曲が普遍的で在り続けられるのか!? という側面を語る事が出来れば好い哉と思っております。
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