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突発性難聴になって判った事 [たわごと♪]

 扨て、2024年も立春に差し掛かる時に、私の耳は突如「突発性難聴」となってしまいました。これにより音楽制作が思う様に捗らない状況に陥っている訳ですが、多くの場合ストレスや疲労が原因となっているケースが多いとの事です。

《そういや睡眠が浅かった事が続いたな》

と想起し乍らも、ニュースでは能くミュージシャンが突発性難聴になって予定コンサートをキャンセルだとかの報道はあっても、症状がどういう物なのか!? という事はなった人にしか判りませんし、著名な公人であったりすると、突発性難聴という病気こそが音楽家のスティグマであるかの様に思われているフシがある為か、なかなかその症状や実例が公になる事は少ないかと思います。

 そういう中であっても、ピッチ感覚が曖昧になる高音域ですらも私は自身の耳鳴りを採譜しようとした経験がありブログ記事にもした事があった位ですので(笑)、折角の斯う云う機会に、症状がどんな物であるのかを書き記しておこうと思った訳です。

 近年では、後に詳述しますが突発性難聴は増加していると言われており、思いもよらぬものが原因だったりもする様で、私もそうした検査を受けて治療に専念している所であります。

 扨て、私の突発性難聴は本当に名前の通り突然、耳の景色が変わりました。片耳だけで済んでいるのは不幸中の幸いですが、これが両耳だったらほぼ聞こえません。それくらい突然音が無くなりました。

 無くなったというのは言い過ぎですが、DAWやDTMに絡めて表現すると、低音はスッカスカで1.5kHz以下は-48dB/OctのHPFをかけた様にスカスカの音となり、しかも高域は高い耳鳴りだけを感じているにも拘らず、実際の高い音が聴こえないという状況。おそらく1.5〜2.0kHz位の音を聴いている様な感じです。

 聴こえない側の耳に指を入れると、通常ならば指が擦れて高周波の音が聴こえて来る筈ですが、シュワシュワした音にならず、蛇腹のホースがギンギン共鳴している様に、しかもフランジャーを通した様な音で妙にやかましく感じるのです。

 何と言えば好いか、フィルター・バンクの狭い帯域の1つだけが残った様な音なのです。しかもそのフィルター・バンクがセルフ・オシレーションを起こしているかの様な音を随伴させるのです。この周波数帯域に入って来る何某かの音が、音量そのものはなんて事はないのにやたらと耳障りに感じるのです。聴こえている方の耳を塞げば殆ど聴こえていない状況であるのに、五月蝿く感じる訳ですね。なんとも聴覚器官とは不思議な物です。

 朝起きた時には何ともなく、突如耳に閉塞感が現れ、周囲の音がジンジン聴こえる様になってしまったという訳です。もう片方の耳は何ともない訳です。ただ、聴こえない方から聴こえて来る音は判りづらく、特に声。喋り声が聞き取りづらいのです。

 然し乍ら耳鼻咽喉科やその近傍の薬局なども遉に専門家。感音性難聴および伝音性難聴などの患者の特徴を十分把握しているので、話し声の音量を上げる事なく、ある程度ゆっくりと喋ってくれるのです。こうした対応は非常に有り難く感じた次第です。

 今の私には、《あ、この人耳が遠いんだ》とばかりに声を大きくして話されてしまうと、それがとても不快なのですね。病院内の耳鼻咽喉科は若い患者が多くて、特に未就学児の子の声はほとほとウンザリしてしまいました。唯でさえ平時でも際立つ声である彼等の声は、いやあ拷問でしたね(笑)。

 知り合いの医師でもあるのですが、今回ばかりは結構神妙な面持ちだったのでこちらがドギマギしてしまった位。

 まあ、ストレスや疲れ、睡眠不足でなる事が多くの原因とも言われましたが、検査で糖尿病やあろうことかB型肝炎ウイルスの検査となる血液検査までされた事はかなり驚いたモノでした。医師によれば、近年B型肝炎ウイルスが原因による突発性難聴の症例が増加しているのだとか。

 私の脳裡には咄嗟にあの悪名高きビル・ゲイツの顔がふと過ったのですが、まあ、こんな所にまで手を染めていたとしても何ら不思議ではないだろうなとタカを括ってはおりますが、まあ、いざ突発性難聴とやらになると、健康の有難さをあらためて思い知る物です。

 一応誤解のない様に付言しておきますが私の突発性難聴と肝炎ウイルスと関連性はなく、それに加え肝炎ウイルスにビル・ゲイツが関与しているなどと言いたい訳ではありません。コロナ禍でワクチン疑惑が其処彼処で騒がれる様になり、「ウイルス」という話題になるとビル・ゲイツの顔が脳裡に浮かぶ様になった、という事を言いたいだけの事です。

 それと不思議な事に、突発性難聴となってしまった耳の方はピッチ感覚が曖昧になってしまうのです。聴こえる音に変調が掛けられている様に聴こえてピッチが定まらないのです。私も長らく生きていますが、聴こえて来る音の大半を何某かの音高に喩えられた私にはとても不思議な感覚で、シェパード・トーンでもないし、不思議な感覚を抱いております。こればかりは形容し難い感覚です。

 音高を特定しようとすると他の音へと聴こえ始めるというか、夢から覚めて、直後はハッキリと夢を思い出せるのに、時間の経過と共に夢がうっすらと思い出せなくなって来て、漠然とした状況でしか思い出せない様な感覚のピッチとでも言えば好いでしょうか。兎に角、特定しようとするとピッチが逃げるかの様に他の音が強調される様に聴こえるのです。聴こえている範囲など非常に狭い帯域であるにも拘らず。

 恐らく、ピッチを特定しようとしているのも私の脳の《類推》なのだと思います。実際に聴こえている範囲の周波数帯の外の音なのですから。で、特定しようとすると逃げ水の様に他の音に姿を変えてしまう。その時、ピッチも漸次変化している筈でしょうが、ピッチ変化は「ギンギン」とフランジャーがかかった様な音になって聴こえて来るのです。

 トンネルに入った時に生ずるジンジンとした回折に伴う音にも似た感じですね。実際には、蝸牛内のリンパ液が張った状態でしょうから、これで回折の様な状況になっているのだろうと。

 突如世界が変わった時には頭がボーっとしていまして、医師曰く、突発性難聴にはめまいもあるようなので、成る程とあらためて実感した物です。めまい自体は直ぐに治ったものの、まあ、この違和感は困った物です。音響曝露の祟りです。

 まあしかし慣れとは凄いもので、違和感はありつつも、自分の耳が治ったかの様な錯覚に陥る時があるもので、電話も聴き取れる様にはなりました。最初はほぼ無音でしたからね。

 こういう状況でも音楽は聴こえて来ます。治療中は音響曝露を避ける為にヘッドホンやイヤホンでの視聴は勧められないと言われておりますが、音楽が聴こえて来る時はあります。それで実感するのは、ローズ(エレクトリック・ピアノ)で左右にトレモロパンが振られている音の酷い味気無さは筆舌に尽くし難いです。テンポとは無縁のそれが片側からしか聴こえて来ない状況ですので、いやあ酷い音になってしまいます。

 トレモロというのも「音」とは感得する事のない振動ですので、低周波である訳ですね。低音域が全くスカスカの状態である突発性難聴が低周波を捉えられる訳もないと。音として実感していない低周波とて耳にとっては捉えるべき振動である事をあらためて実感した次第。

 また、コーラスの様な空間系エフェクトが全くかかっていなかったり、あるいはエフェクトが掛かっただけのチャンネルしか聴こえて来ないという状況もありまして、これもまた味気無い音として聴こえてしまうのです。Moogのエフェクトはエフェクト音を左右のいずれかにエフェクト音を任意に置ける様に設計されていたりしますが、曲によっては逆の配置となっている事もあってエフェクト音ばかりを聴いてしまう状況となる時、空間系エフェクトの「遅延」が如実に感じてしまうのも、片チャンネルしか聴こえない状況の産物なのだとあらためて実感した次第。

 そういう訳で、近年突発性難聴は増えているとの事なので、違和を覚えたらなるべく早い内に受診して下さい。重病だと知らされるのを忌避するばかりに平穏な日常を少しでも味わおうとしてしまい《ほっときゃ治るだろ》という判断が最も重症化させる判断だと医師も言っておりましたので、焦らずに受診しましょう。このブログ記事が何かの足しになれば幸いです。

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