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『ハインリヒ・シェンカーの音楽思想』を読んで [書評]

 調性音楽の音楽的文脈や骨格を分析にするに当り「シェンカー分析」や「シェンカリアン」という言葉を、音楽を志す者は一度は耳にした事があるとは思います。機能和声にて厳格に取扱われるのは長調の世界観であり、短調というのは多義的な側面を多く含みますが、それを解釈する側には多義的な解釈のままを許容せずに一義的な解を求める様にして解釈しようとする者もおります。とはいえ、音楽を分析・解釈するに当っては個人の裁量でどうにでも許されるという物でもなく、音楽の分野はこうした個人的な裁量という良心を万人に向ける様な事はしない程に実際には手厳しい物であり、誰にでも自由発想を許容する様な物ではありません。西洋音楽に客足を向けようとする時というのは概して優しさを伴い敷居を低くして温かく迎えるものですが、ひとたびその世界に身を投じると、界隈の厳然たる流儀や個人の主観・臆断を許容せずに形式や様式の在り方を厳しく取扱う事に歎息してしまう人も少なくはないでありましょう。


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ちくま学芸文庫『バルトーク音楽論選』を読んで [書評]

 2018年6月初旬、ちくま学芸文庫にて『バルトーク音楽論選』が刊行されたのでありましたが、刊行前にふと私の脳裡を過った事は、文庫化する前の単行本の存在が筑摩書房に有ったであろうか!? という事でありました。
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エッティンゲンに見るDクレフ [楽理]

 唐突ですが、今回はエッティンゲンが用いた「Dクレフ」について語る事に。D-clef すなわちニ音記号とでも訳せば良いでしょうか。Arthur Joachim v. Oettingenに依る1905年の論文 'Das duale System der Harmonie in Annalen der Naturphilosophie' 4 - 126頁にて用いられるのでありますが、このDクレフが意図するのは、通常の五線譜がその第3線を中心に採る事で、上下に示される音高が視覚的に対称構造を容易に得られるのが利点とする物であります。嘗てTwitterにて呟いた事もあるのであらためてご参照いただければ幸いです。

Das duale System der Harmonie(和声二元論 関連論文) / Arthur Joachim von Oettingen






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