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クロマティシズムへの欲求 [楽理]

 半音階主義。今回扱うクロマティシズムに関しては、嘗てのセリエル(十二音技法)のそれとは異なる、調性を拡大する事で用いられる半音階的変化音の側を取扱います。嘗てのトゥイレ/ルイ共著『和声学』(山根銀二/渡鏡子訳)では、こうした世界観を「半音階的全音階」という風に自著の後半部分にて取扱っている物です。

 音楽的素養が高まると全音階という7つの音を容易く使える事に飽き足らず、次第に人々は基となる7音以外の音への欲求を深めて行く物でもあります。

 その「基」となる7音列を「音組織」呼ぶ訳ですが、この音組織は通常は長調と短調という風にして区別して用いられている物です。勿論機能和声音楽のみならず旋法音楽に於ても基となる音組織が準備される物です。

 体系をご存知の方ならば「ドレミファソラシ」という長音階の音組織を短調(平行短調)では「ラシドレミファソ」という音組織であるに過ぎないのである事は先刻ご承知でありましょう。加えて短調は、その音組織を適宜ムシカ・フィクタと呼ばれる可動的変化音を用いて来ます。平行長調との音組織のままでは居られない状況は可動的な半音の変化を生ずる。すると、短調を曲全体で俯瞰した場合、長調よりも遥かに半音の臨時可動的変化が起こる可能性が高い事は自明であります。

 ディーター・デ・ラ・モッテはこうした調性が備える音組織を「材料音」と呼んだのでありましたが、前述の様に長調と短調の音組織では、材料音の数が短調の可動的変化音の存在があるので異なる事になります。それは長調よりも材料と成る音の数が増えるという事でもあるのです。


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