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坂本龍一『B-2 UNIT』収録の「differencia」のメトリック・モジュレーションと微分音 [楽理]

 2019年9月25日に再リマスタリングが施されてSACDハイブリッドとしてリリースされたのは記憶に新しい所です。SACDでなくとも既存のCDプレイヤーでCDDAクオリティーの再生は担保されているので、新たなリマスタリングであらためて聴く事ができるのは至高の嗜みとも言えるでありましょう。
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鉄道マニヤに捧ぐ 首都圏主要鉄道会社の踏切音に使用される微分音 [楽理]

 今回は踏切の警報音を採譜するとどういう風に表す事ができるのか!? という側面で語る事としますが、採譜に於て重要な事は、楽譜の音符が持つ音高・歴時(音価)ばかりではなくテンポも非常に重要な要素となります。

 ブログ初稿時に於ての譜例動画ではテンポを示さず、微分音記譜に伴う音高を重視した物でありましたが、当初の譜例に付与した幹音からの微小音程の増減の数値や微分音変化記号の誤りもあり、それらを修正する際にテンポもこの機会に明示しておこうと思い、ブログ終盤ではYouTubeにアップした譜例動画をあらためて例示しておきましたのでご確認ください。


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コジュケイの鳴き声を採譜 [楽理]

 私の若い時分の頃などは動植物や自然には全く無頓着でありました。科学的な側面で捉えないと興味を抱かないかの様な所もあったもので振り返れば、己の知識や力量など大した事ないクセして、体系化された文明社会の大いなる力を我が物顔の様にして科学の後ろ盾を得たかの様に虚勢を張っていた子供であった事でしょう。今にも飽和しそうなヘッポコな脳しか持たぬクセして、齧歯類が頬袋にエサを蓄えるかの様に興味深い科学的な情報を掻い摘んでいたものです。

 そんな私も齢を重ね健康増進の為にウォーキングや屋外ジョギングを積極的に行なう様になってからは、不思議と季節の草花や野鳥などを愛でる様になった物です。とはいえ普段のジョギングで私が遭遇する自然環境は「自然界」と呼ぶには烏滸がましい環境であり、車はビュンビュン行き交っておりますし、道中にある谷戸の様な起伏のある場所で自然を満喫する程度の物でしかありませんが。


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ジェフ・ベックの「El Becko」がハーフ・ディミニッシュではない理由 [楽理]

 今回はジェフ・ベックのアルバム「There And Back』収録の「El Becko」について語る事にします。この曲の作者はアンソニー・ハイマスとサイモン・フィリップスがクレジットされている所も特徴的であり、これほど複雑で多様なハーモニーにドラマーが関与しているとはあらためて驚くばかりです。


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Eikの微分音にLogic Pro X内蔵音源のSculptureを活用 [楽理]

 私のブログでSculptureについて語るのは何年振りでしょうか。おそらく、坂本龍一の「きみについて」を語った時以来の事となると思いますが、微分音のSEを再現する為にSculpture活用はどれほど効果があるのか!? という事を語ってみようかと思います。


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Blue Lagoon(高中正義)が減七でない理由とルーマニアン・メジャー・スケールの関係 [楽理]

 機能和声を標榜する場合であるならば、主和音がディミニッシュとなる状況というのは短和音が一時的に半音変位したりというオルタレーションの状況を先ず考える必要があり、「トニック・ディミニッシュ」という状況を機能和声の方から照らし合わせるのは危険な事であると私は考えるのでありますが、現代のジャズ/ポピュラー音楽に於てはドミナント7thコードを「Ⅴ」としてだけではなく「Ⅰ」として聴く事もある様に、ディミニッシュ・コードをトニックとして聴くという状況も確かにあります。とはいえその世界観を、カデンツ(終止)を標榜する機能和声社会と同一視してしまってはいけないので、その辺りは区別し乍らディミニッシュ・コードという物を視野に入れておく必要があるという物です。

 ひとたび3度音程堆積構造へと還元すればこそ、トリスタン和音とてハーフ・ディミニッシュ・コードへ還元する事は可能です。とはいえジャン゠ジャック・ナティエが33人の大家によるトリスタン和音の解釈を33人33様の例として取り上げている様に、トリスタン和音を一元的に、しかもハーフ・ディミニッシュ・コードとして見立てる事は非常に危険である訳ですが、トリスタン和音出現以降、和音体系は大きく変容したのも事実であり、ディミニッシュという世界観も結果的にはそうした多様な世界観を拡大させる事の助力となっている事も確かなのであります。


 例えば、ホ音 [e] 音を根音とする減七の和音を形成してみましょう。和音構成音は下から [e・g・b・des] を形成する事となります。つまり、英名表記をすれば「E・G・B♭・D♭」という事になりまして、[des=D♭] は決して [cis=C♯] ではないのであります。


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ジノ・ヴァネリ「Appaloosa」のコード表記に思うリック・ビアト氏への感謝 [楽理]

 前回、ビアトさんの『THE BEATO BOOK 3.0』について語った様にビアトさんの体系整備にあらためて感謝しておきたい一つに、四度和音のコード表記としての分類を挙げる事ができます。


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『THE BEATO BOOK 3.0』へ更新す [書評]

 昨年の11月でしたか、リック・ビアト氏の頒布する音楽理論書『THE BEATO BOOK 2.0』について語ったブログ記事を掲載したのは。それから1年と経たぬ2019年9月5日に、ビアト氏からのお知らせメールで『THE BEATO BOOK 3.0』更新の報せがあり、早速ダウンロードする事に。


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Mother Terra(KYLYN)のカウベルの部分音考察 [楽理]

 坂本龍一作曲の「Mother Terra」はアルバム最後の曲を飾るスローなテンポで、シンセ・パッドのクリシェが印象的なイントロでありますが、リフが希薄なので殆どが白玉で構成されている所が一般的にはウケが良くなかったりしたりする物です。処が、バッキングに用いられるシンセのフィルターの漸次変化やフェイザーなどを随所に用いて、特に渡辺香津美のギター・ソロの部分では巧みにシンセ・パッドのフェーダーをコントロールして抑揚を付けており、そういう意味では90年代に入ってからのハウス・ミュージックなどで試みられた、コード進行が希薄乍らも音色を漸次に変化させる手法のヒントになっており、学ぶべき点の多い楽曲であります。


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