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お隣さん [楽理]

 扨て、ココの所iPhone関連の話題を挟みましたが、いつもは楽理的なネタで窮屈な思いをしておられる方にも、音楽関連ネタを絡めながら興味を抱く事ができるような、そんな話題を鏤めたつもりです。


 でまあ、楽理的な話に戻すと左近治が最近力点を置いていた事は、『隣接し合う五度圏の調域を利用したフラつき加減』に尽きるワケですね。


 大概の「オプション的な旋法」すなわちそれは、トニック・メジャー上においてリディアンを当ててみたり、トニック・マイナー上でドリアンを当ててみたりというオプション的な調性のフラつきを玩ぶ術は、実は五度方向の「片方」の調域しかフラついていない遊び方なのでして、自身の構える調性から五度前と五度後ろ、みたいなフラ付きを備えてみると直ぐにチェレプニンは視野に入って来るモノだと言いたいワケですな。


 調的なフラつき加減という側面に気付かない事が蒙昧な楽才だのと自己嫌悪に陥る必要は無いとは思いますが、高次な楽音を長い年月を経て聴いても耳が育たないのはそりゃチョットまずいかもしれないものの、そこにコンプレックスを持っていようとも、殆どの人は自分を卑下しつつもいざそれを明け透けに自分自身を語るのかというとそんなことはなく、大体は愚痴ってたりするのが関の山です(笑)。そんな愚痴に付き合っていても仕方ないので楽理的側面から一刀両断していくのもオツかと思いましてこうして語っているワケであります。


 そもそも日本人というのは、その特異な言語体系から生じている耳と脳のせいで低音を聴くのを不得手とする所があるというのは実に興味深い現実でありまして、私の周囲にも分数コードの類や、四声体やそれ以上の音を累乗した和音のルートを聴き取る事がトコトン苦手な者が意外に多くて驚くことがあるんですが、それは私自身と比較してのコトですので私が秀でた能力を有しているワケではなく、私より劣る連中が私よりも輝かしい学歴だったりするのは実に羨ましい限りです(笑)。左近治の欲しいのはソコかよ!?とツッコミが入りそうですが、まあそれは冗談でありまして(笑)、実際に低音の聞き取りに弱い人は驚くほど多いです。大笑いしたくなるくらい低音の聞き取りがヘッポコな人は器楽的な経験が豊富である人ですら多いのが現実です。


 おそらく日本人の能力というのは朧げに&感覚的に調的な重心を「ザックリ」と聴いていて、ある程度判っていれば最早根音自身には頓着せずに上声部や内声を聴く人が多いのではないかと思うんですな。


 私自身が自分よりも聞き取りが劣る人に指を指して嘲笑しているワケではなく実際にはきちんと指南したりしているワケでして、そのオススメとしてよく取り上げるのがヒンデミットという希代の作曲家の一人なんですな。無論、私自身が好きだというコトもありますが。ヒンデミットの特徴として低域や中音域のフレージングはとても群を抜いておりますし、やたらめったらすぐに高音域へ行って目立たせようとしない巧みなフレージングが絶妙だからオススメしているワケです。言うなればチェロの音域とかファゴットやバスクラとか。そういう音域の組み立てと言いましょうか。


 ポピュラー界隈で例を挙げるとするなら、ベースという楽器の上にテナーがいるような状態。判りやすく言うと二声のベースがいるような状態のアンサンブルと言えばいいでしょうか。上と下のベースは別々の旋律を奏でている状態とでも言いますか。チャカ・カーンで例えるなら「チュニジアの夜」のカヴァー版「And The Melody Still Lingers On」のスラップ・ベースとシンベは全く別々の旋律奏でてますよね。あーゆー状態に近いと言えば判っていただけるでしょうか(笑)。低域方面に二声以上のフレーズが欲しいんです。勿論、その上の方で人々が食い付いてくれるメイン・メロディが鳴っているんですけどね(笑)。


 
 とりあえずとっとと本題に入りましょうか。3つのAugmented Major 7thによる(1 - 2♭ - 5♭)ブロークン・フレーズへの発展ですね。通常よくあるマイナー7thコード上でそれらに置換してしまうというやり方ですね。まずコレで注意しなくてはいけない点は、マイナー7thコードが現れる所とはいえ、元々そこがフリジアンを想起し得る体では扱えないというコトと、元がトニック・マイナー上でドリアンを当てるコトが相応しい場面での使用に先ずは限られて来るという用法になってくるので注意が必要です。


 例えばDm7というコードがハ調の調域でありながらトニック・マイナーなシーンってどういう時かを今一度確認してみることとしましょうか。それは調号が♭1つのDマイナーをDドリアンとして弾いている時というコトです。

 この例においてもハ調の調域をFの方角(平行短調はDm)から見ている事となります。そういうシーンにおけるトニック・マイナーに用いる例として今回の3つのAugmented 7thブロークン・フレーズを置き換える例として覚えていただきたいワケです。


 因みにチック・コリア・エレクトリック・バンドの「King Cockroach」では今回のような3つのオーギュメンテッド・メジャー7thではありません(左近治の例を用いた場合もっと飛躍します)。とはいえ「1 - 2♭ - 5♭」に変換する例は他にも色んな等音程に置き換えたりすることもできる簡便的な置換方法なので覚えておくと便利かな、と(笑)。ekb01.jpg

 
 「King Cockroach」の用法は過去にも語ったようにそちらを参考にしていただければ幸いですが、今回あらためて語っておきたい事は、「別の調域」という方角から見つめたアプローチだというコトです。「King Cockroach」のソレに現れる音の特徴的な音は、Fm7というコードで調そのものを確定するシーンではありませんがFドリアンを当てるのが通常のシーンだというコトはお判りいただけるかと思います。Fm7をFドリアンとして見た場合「真のトニック・メジャー」と見るべき所があります。それがトーナル・センターでありCmには解決する必要もありませんが、Fm7をドリアンとして見立てるのであればCマイナーのトーナル・センターというのは必然です。










 つまり、トーナル・センターをそのまんま調性の基軸として使っていれば別の方角を得ることはないまま調性を見つめることができますが、音楽を学べば学ぶほどにオプション的な使い方をするコトが増えてきます。つまりAマイナー(Aナチュラル・マイナー)という世界にわざとAドリアンを当てる、と。これはEマイナーのトーナル・センターですがAマイナーっぽく聴かせる、というコトです。もはやこの意味を理解できない方はモード奏法すらも会得出来ていない方だと思いますので、まさかコレを理解できない方は左近治ブログを読んでいる方でいらっしゃるとは到底思えませんが、原点を見つめ直す意味でも念のため語っておきます(笑)。


 ここからがようやく本題の続きですが、Dm7を3つのオーギュメンテッド・メジャー7thのブロークン・フレーズに置換し得るシーンというのは、トーナル・センターがAmにある時であり、そこで生じる音で、特にDm7からDM7(+5)で生ずる音での「F#音」というのは、マイナー・コードから見たらバリバリのM3rd音なので、これはとても使いづらくはありませんか!?と言い出す人がいるかと思います。

 旋法的に使う、いわば奏でる旋律そのものが強い牽引力を持っているならば、そのコード上でアボイド・ノートが生じようともそれが収まってしまう強い力という物はあります。無論、それを成立させた場合、単一的な調性は崩壊或いは基の調性を強く感じながらも併存させるコトは可能なんですが、ボキャブラリーとして疎いので、どうしてもマイナー・コード上でメジャー3rd音を使っただけの間違った音のようにしか弾きこなせない人も勿論いるかと思います(笑)。そういう人はとりあえずは「Dm7、EbM7(+5)、AbM7(+5)」というそれぞれの和音のブロークン・フレーズにしておいて学んでいけばいいかと思いますが、いずれはDm7を「DM7(+5)」に置き換えるという心得は必要になるかと思います。ekb02.jpg

 もちろんその「無理矢理」とも思える置き換えは基のマイナー・コードからそれを基準にF#音がM3rd音として成立しているだけでして、DM7(+5)がKey=Bmで生じたIIIbのダイアトニック・コードだと思えばイイだけのコトで、それを想起しているから背景のコードがどうであろうと「そっちの世界で弾かせてもらいますわ」という振る舞いだという風に感じればある意味楽かと思います。但し、Dm7上でやはりF#音が突然出現するようなのはあまりにも脈絡がありませんし(笑)、脈絡としてのフラつき加減としての「前戯」は必要かと思います(笑)。


 でまあ、Dm7というコードがあってそれは「Dドリアンを当てるのが適切」というシーンにおける先の3つのオーギュメンテッド・メジャー7thのブロークン・フレーズについて詳しく語っていくのでありますが、どんな状況でのマイナー7thコード上でM3rd音が使えるようになるなどとは決して理解しないで下さい。少なくともバイトーナルの概念を導入した上での一例ですので、その辺りは肝に銘じておいてほしいと思います(つづく)。