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減五度と増四度の違い [ネタバレ]

扨て前回の続きとなりますが、増四度と減五度の扱いは結局一緒じゃないの!?

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と「誤解」してしまっている者に対して「違い」を説明しなければならず、続きを以降語って行くこととしますが、当時の対話形式ではなく、とりあえず先ずは解説していこうかな、と。

管弦楽をやる方なら、増四度と減五度の取り扱いの違いというのは、今日の音楽という現場において最も顕著に遭遇する場所なのかもしれません。まあ、現在最もポピュラーに扱われる十二平均律ではない時代、増四度と減五度は明確に違っているのを実感することができたのでありましょうが、平均律の世界でしか音楽に触れ合うコトがない人だってある程度楽理部分を知る方なら、平均律であれば増四度も減五度も等しく600セントの音程幅だというコトはお判りだろうと思います。ゆえに増四度も減五度も双方いずれを転回しようとも同等だろう、と。ココが最もつまずきやすいポイントですね。正解は


「殆どのケースにおいて、平均律であろうとも増四度と減五度は区別した取り扱いが必要」


というのが真相です。まずはそれについて述べていきましょうか。


例えばジャズというのも12音という「半音階」という音を使いますが、実際の8割方は曲をマクロ的に見ればこその「半音階」であって、転調(≒トーナリティーの変化)が目まぐるしく変わる事が許容されている音楽であり、断片的(ミクロ的)に見れば「七つの階名」に収まる世界を使っているのが殆どです(笑)。


だって、「モード奏法」の初歩は、ノン・ダイアトニック・コード上において如何にしてチャーチ・モードを当てはめれば良いか!?という所から始まるワケですからね(笑)。



「左近治は何を語ろうとしているのか!?」とお悩みになる方もいらっしゃるとは思いますが、とりあえず次の部分をお読みいただければお判りになるかな、と。


減五度と増四度のそれぞれの解決の仕方は既に譜例でお判りと思いますが、例えばハ長調(Key=C)におけるG7の基本形のヴォイシングから根音と5th音を一旦省いてみましょうか。そうすると「減五度」は「減」というベクトルによってより狭いダイアトニックな音程へ解決し、「増四度」は「増」というベクトルによってより広いダイアトニックな音程へ解決しようとする、とでも覚えていただければ結構です。


G7のヴォイシングの基本形はハ長調としての導音は内声にあるワケでして、3rd音と7th音の度数は嬰変無関係に「5度」なワケですな。絶対値だと思っていただければ幸いです。


ハ長調の階名として見ると更に判りやすいんですが、「シ」が内声にあるトライトーンが「減五度」。ではトライトーンの「ファ」と「シ」を上下入れ替えてみましょうか。「シ」が上に来た場合は、「ファ」から「シ」を数えると度数は自ずと「四度」なので「増四度」となります。


つまるところ、「トライトーンをどのように転回しようとも、アナタは何の世界をイメージしているドミナント7thなんですか!?」


と言いたくなるワケですな。


例えば、G7の代理コードは「Db7」であり、完全に対極となる音程にあるので「裏コード」とも呼ばれるという風に、ポピュラー音楽界隈でもそれが当然のように教えられますが、じゃあDb7のヴォイシングの基本形で見た場合、G7の基本形であるトライトーンの動きとDb7のそれは違うだろ、というコトはポピュラー界隈では論ずるコトなく「等しく」扱われてしまうという功罪があるんですな、コレが。


Db7が許容されるモード・チェンジとして、モード奏法の初歩では「Dbミクソリディアンを想起する」コトから始まるワケですな。つまりトーナリティーはGes(もしくはFis)の時をDb7が現れたコトで、それまでのハ長調の世界が突然そっちの世界を暗示して結局また「C」に解決するのって、少しガメツキ過ぎでしょ!?と左近治は言いたいワケですな。


まあDbミクソリディアンを想起したとしても、H音(=英語名B音)はDb7側の世界では「導音」ではないワケですよ。ソコを「等価」に扱うってぇのはチョット端折り過ぎじゃねーの!?という疑問をまず抱いて欲しいワケですよ(笑)。


C調の世界の「導音」を導音らしく響かせずにDbミクソリディアンを想起して、ガラリと変わる感じを万華鏡のように演出するのかイイんじゃないか!と仰る方もいらっしゃるでしょうが、でも、仮にそうしたとしてもハ長調の世界とDbミクソリディアン想起しただけで、本当に12音を網羅した半音階の世界を形容としている、とは到底コレでは呼べないのは明白ですね(笑)。転調さえしていけばいずれは12音を網羅しているだけのコトと等しく、ただ単に少々短い転調が来ただけのモンですわ、コレだと。Db7が出てくるまでのそれまではハ長調のダイアトニック・コードのオンパレードだったので、ココでDb7が必要とされるシーンにおいてDbミクソリディアンっていうのは突飛な世界でもあるワケですな。


更に言えばDbミクソリディアン側の世界ではKey=Gesで導音は「F」であるべき世界ですよ。いくらトライトーンが平均律で等しい音程差だとしても「7つの階名で構成される音列を想起する限り、トライトーンの度数は4度と5度で異なる」モノなんですね。


これまで説明しているのは、ハ長調という判りやすい調性においてドミナント7thを本来なら「G7」のままで良かったモノを「等価と妄信」することでDb7を想起してDbミクソリディアンを弾いてCに解決するという行為が行われたというシーンに近いモノです。ハ長調においてG7の代理コードであるDb7を「音楽的」に用いているのであれば主旋律やそれらは自ずとDbミクソリディアンを「示唆」する世界観をDb7上にて形成するはずですが、それまでの一連の流れがハ長調の世界観だけで統一されていた進行において、Db7が出現して「Ges」の世界観を示唆するのはかなり突飛な世界であろうと思うワケですよ。

しかも、Gesの世界では特徴的な音としてB音(=Bb音)とCb音(=H音と異名同音)が出現しますが、Ges durの世界において導音は「F」であります。トライトーンが便宜上異名同音としても等価とはいえ、度数で見ると違う方を示唆してしまっているのです。この「示唆」とやらをもう少し深く語ってみるコトとしましょうか。


多くの人は、一時的な転調感やらを「解決時」のコードに求めているでしょうが、殆どのケースでは解決直前のドミナント7thコードが「示唆」しているのであります。それはどういうコトかと言うと、解決するコードの直前ですでに暗示がドミナント7thで行われているのであります。とはいえそのドミナント7th上においては解決先の主音は「通常」アヴォイドなワケですな。


暗示しているにも関わらず、アヴォイドしているだけなのです(殆どの場合は)。これはアンティシペーションという「先取り」とは全く異なるコトですが、結果的に解決先をわざわざ暗示しているのが「初歩的な」モード奏法の例なんですな。ココの音楽観から脱しない人が大多数なのであります、実は(笑)。



先述にあるように、トライトーンの役割というのは「ダイアトニックな音への解決」が特徴なんですよ。これがドミナント・モーションなワケですが、「ダイアトニック」という世界観の構築こそが既に「示唆」を示しているワケです。殆どの大多数の音楽は、ドミナント7thが出てくる以前にも調性は「ほぼ」理解できているワケです。ドミナント7thが「予想通り」出てくると、ハリウッド映画のようなハッピーエンドを描くような「確定」を思い描くワケです。そして「解決」することでめでたしめでたし、となるワケですな(笑)。

つまり、多くの楽曲はドミナント7thが出現しようとしまいと、調性は朧げながら把握しているワケです。そう感じているコトが「ダイアトニック」な音ですが、ここでの「ダイアトニック」という世界観はあくまでも、チャーチ・モードに収まる世界観における「ダイアトニック」でありまして、この世界観から逸脱した非チャーチ・モードでの「ダイアトニック」の世界というのはまた別にあります。メロディック・マイナー・モード内でのダイアトニック・コードを形成すれば、ドミナント7thは2種類でてきますが、それぞれ度数は違う所に位置します。それを「使い分ける」コトによって「ダマし」のテクニックというのもあるワケですな(これまでも語っておりますが)。


私のまず述べたい今回の重要部分は、チャーチ・モードに収まる世界観のドミナント・モーションであろうとも、平均律を免罪符にしてトライトーンを厳密に意識することなく勝手に代理に置き換えちゃったりしていないか!?というコトなんですよ。いくら平均律を振りかざそうが、殆どのケースでは7音で構成される世界観を有しているケースが多いワケですから、その時点で「どの調性を向こうとしているのか」という示唆するベクトルというモノを見抜ける人は見抜いてしまうワケですよ。結局は7音で構成される世界観を有しておきながら、「ファとシ」の位置を曖昧に、「どっちでもイイや」みたいな(笑)使い方しちゃう、そんな安直な初歩的モード奏法から脱するコトのできない人が実に多いワケですよ、現実は(笑)。


そこで私の後輩は次のように言いました。


X君 「増四度と減五度を厳密に区別するのは判りました。 でも減五度と増四度の解決するそれらの例と、「バルトークの作曲技法」の16ページではそれらの解決の動きとも全然違いますよ!」



確かに、彼のその当時の理解からすれば、私が説明した「増四度と減五度」のそれがバルトークのそれと合致しないじゃないか!?というコトに疑問を抱くのは当然です。譜例の「減五度」を例に言えば譜例の図では「CとE」に解決していますが、バルトークの場合では減五度を形成してトップを解決先の「導音」として「示唆」することで、FisとAisに導かせるワケですからね。そりゃあ譜例とは違うのは当然ですわ。


彼は「バルトークの作曲技法」における9~10ページに渡る「註3」をきちんと理解していなかったのでありましょう。ココを私が次のように述べると、彼は自然と理解できるようになったワケなんですが、その語った事を要約してみましょう(つづく)。