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杉本拓著『楽譜と解説』を読んで [書評]

 私のブログは茲の処、音楽書関連書評の話題が続いているのでありますが、今回取り上げる音楽書〈杉本拓著『楽譜と解説』〉を取り上げたいが故の事だったのです。これまでの書評に関して私が述べていた脚注と出典の重要性やらシカゴ・スタイルが好みではないというそれも、今回取り上げる書籍の脚注の類が概ね愉しく読む事のできる物ではないかと思い、刊行順としては先行のそれらと前後してしまうのでありますが、敢えてこうして紹介したかった訳です。脚注のタイプとしては、章末毎に脚注を充てられる物ですので近年の音楽書で例えるならば、ヤニス・クセナキス著 野々村禎彦監訳 富永星訳『形式化された音楽』を挙げる事が出来ます。  

 あらためて本の脚注・訳注の重要さという物を思い知る事が出来るのが『形式化された音楽』でありましょうが、本文が巧くテーマが別けられていると、文章のコントラストはより一層明瞭になり深く理解が出来る物です。それにひきかえ、フィリップ・ボール著『音楽の科学』という物を振り返ると、その圧倒的な文章量とは裏腹にテーマ別けは不明瞭で散文化しており、読む事に骨の折れる類の一冊である事は疑いの無い所でありましょう。それでも杉本氏は『音楽の科学』に興味を抱いている事を跋文にて告白しておりますので、骨折りを厭わないという事も同時に謂わんとする物なのかもしれません。


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