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しきたりの落とし穴 [楽理]

大概のケースでは、自身の勉強不足が招いてしまっていたり盲目的になってしまって肝心な事を覚えていなかったというコト、よくありますよね。


で、その「肝心な部分」ってのが巧いことシンプルに要約されていたりすると、これまた見失いがちになったりするもんで、そこまで大事なコトなら注意喚起を促すくらいの文章やら言葉にしてくれたってイイでしょうに!なんて人のせいにしてしまっているコト、よ~くありませんか!?(笑)。実は、音楽の世界、特に理論的な世界でもこーゆーシーンって非常によく見受けられるコトなんです。


いわゆるコード(=和声)のポピュラー音楽界隈の表記というものは、今日ではあらゆるシーンでこちらの方が一般的ではありますが、クラシックの方だと多少ポピュラー界隈の表記とは違ったりするものの、和声的に捉えるコトで認識が必要とされる根幹の部分というのはどちらのシーンでも踏襲しております。

しかし、この一般的な表記というのが、今後左近治が繰り広げる「ハイパーな」世界とはチョット趣きが異なるトコロがあるので、あらかじめ「注意喚起」しておきたいというのが今回の左近治のスタンスであります。とはいえ何に混同するのかも判らないトコロで色々話し込んでもムダなので、注意喚起の前に「問題提起」をしつつ、「あ~、なるほど。こーゆー時に生じるギモンね!」という感じを抱いていただきたいので、色んな例を挙げながらハナシを進めて行こうかと思います。


一般的なポピュラー音楽界隈のコード表記ですが、みなさんどうやってそれを習得しましたか?

まあジャズやポピュラー界隈を扱う音楽学校もありますが、多くは音楽系の雑誌だったり、その手の指南書だったり、その手の情報出自によるモノだと思います。無論、中には構造的なルールよりも全てのコードのタイプを覚えてしまった人もいるかもしれませんが(笑)、いずれにしてもその手の表記法を学ぶ際に感じたコトって

「いいから早いトコこのコード表記の流儀に慣れてくれよ!」

ってな感じでコード表記のルールの解説を目にして、教える側もそうだからこっちも性急にその流儀に慣れようとしていたコトが大半のケースだったのではないでしょうかね!?


と、私は常々感じているワケですよ。本当はコード表記というものは「なにゆえこういう流儀になったのか!?」というコトも声高に説明すると、楽理的に重要な背景がその時に理解できたりして、コード表記の流儀とやらを習得する時期にとても重要なモノを一緒に吸収してくれる筈なんですが、教える側がその重要な背景を語らずに端折ってしまって、コード表記の流儀ばかりを性急に教えてしまうモノだから、重要な背景の理解がおざなりになってしまって、楽理的な知識が狭い範囲に追いやられてしまっている人が非常に多いのが実際なんですな(笑)。


ですので私は、本来重要である筈の背景とやらを語って行こうと思うワケですが、この時点でポピュラー音楽界隈のコード表記の知識が全く無いという人は残念ですが、その手の知識を得てから本ブログをお読みになっていただけると助かりますんで(笑)、必要最低限程度のコード表記における知識前提というコトでハナシを進めて参ります。とはいえ、これまで結構楽理ネタ扱って来ているんで、継続して私のブログを読まれている方でこの辺の知識の無い人ってまず存在しないと思いますけどね(笑)。


扨て、コード表記の流儀ってぇのはポピュラー音楽界隈であろうとクラシック界隈であろうとも、そこにはどちらも踏襲した上で成立しております。その踏襲している部分は、左近治が言う所の「ハイパーな」世界ではない方の世界観から成立しているモノであります。


で、ココからはポピュラー界隈の表記をメインに語って行きますが、母体のコードがどうであれ、ある程度の表記には慣れている方がいらっしゃると思います。


和声というのは「通常」7声を最大限とする構造というのも既にご存知だと思います。いわゆる3度を積み上げて行くタイプのコードだと「13th」という音が7つ目の音となるワケですな。


「全音階」という言葉があります。全音音階ではないですよ(笑)。これは「ダイアトニック」という意味で、多くの場合通常は、7音で構成される音階(教会旋法の範疇)の全てを満たす音、という風に理解していただければ「通常は」十分な理解だと思います。


扨て、みなさんが既にご存知である筈のポピュラーなコード表記を用いて「ダイアトニック」な音7音を全て満たすコードを、ポリ・コード/ハイブリッド・コードの表記を用いない単一のコード表記になるもので表現していただきたいと思います。問題が分かりにくいでしょうか!?「ド レ ミ ファ ソ ラ シ」という音を全て満たすヴォイシングのコードを表記してください、という問いです。


じゃあハ長調の「ド レ ミ ファ ソ ラ シ」を使って「C D E F G A B」の7音全部を満たすコードを書いてもらいましょうか。私の問うてる事はこーゆーコトです(笑)。


Cをルートとしてみましょうか!? すると、「11th」の部分がナチュラルになってしまうんですよね。通常メジャーコードが母体なら「#11th」が通常のコトですからね(笑)。

Gをルートにしてみましょうか!? すると「G13」でもイイんですが「G7 (9、11、13)」確かにアリそうですが、よくよく考えるとドミナント7thコードのドミナント・モーションの解決先である「ナチュラル11th」をこちらも表現してしまうコトになるんで、本来はナチュラル11th表記は避けて通りたい所なんですが、GミクソリディアンをGのメジャー類の響きとして扱うコトもあったりするんで必ずしも間違いではないんですが、本当は避けて通りたいトコロなんですよね。

じゃあ今度はDをルートにしてDm母体にしてみましょうか。

すると、マイナー・コードってぇのは六度=13度の扱いというのは♭6th(=b13th)が便宜的に許容されるワケで、ナチュラル6(=13th)は「通常」避けられるワケです。


これらのコード表記において厳格に「踏襲」されているコトは、どんなに3度を重畳してもトライトーンを作らないようにするコトなんですな。


「メジャー7thの#11thって、ルートと増四度作ってるやん! コレはなんでイイの!?」


というようなギモンをお持ちの方もおそらく沢山いらっしゃると思うんです(笑)。ええ、判ります(笑)。でも、その前に先の質問の「ダイアトニック」な音、表記できたでしょうか!?


答えは、単一なコードとしては表記できませんね。Emを母体にしようがAmを母体にしようが、コード表記のルールに則っていると表記できないんです。


7音を構成すれば「ダイアトニック」な音全てを包含する和声がなぜコード表記では出来ないの!?という矛盾が存在しますが、確かにGをルートとしてナチュラル11thを「許容」すれば可能ではあります。


そもそも、コード表記が厳格に踏襲しているのは、「自然倍音列」なワケです。長調/短調の音並びに収まる全ての「ダイアトニック」な音並びを解体したものが和声ではなく、倍音列基準で見立てており、そこからコード表記の流儀っていうのが構築されているワケなんです。コレが「通常の世界」のコト。


で、多少なりとも楽理学んでいくと、「全音階システム」やら「倍音列コード」とやらの言葉を耳にすると思うんですが、コレというのは確かに倍音列から生じている音を抜粋しているモノではあるんですが、この別名「アコースティック」な抜粋というのは結果的に自然倍音列と合致するものは我々が通常使っている「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」の音並びとは全く異なる体系で、この差異感に醍醐味を覚えているワケでありますな。


結果的にこのような「アコースティック」という倍音列に則った音というのは、いわゆるメロディック・マイナーの音列をモードとする音並びにもなりまして、始める音を変えればリディアンb7thと呼ばれたりすることもあるでしょうし、リディアン・オーギュメンテッドなどと言われたりするコトもあるでしょう。倍音という音並びの方へ目を向けると、ごく普通に用いていた「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」という音並びとは異なるモノに寄り添うワケですが、コード表記というのは、こちらの世界に重きを置いているワケでありまして、通常メジャー・コードやドミナント・コードを母体とする表記においてナチュラル11thという表記は忌避されるワケであります。


まあ、余談ではありますが我々がごく普通に用いている「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」という音並びと、「アコースティック」な音列であるという「倍音」の世界との音並びは少~し違うワケですな。我々は背景にある倍音列と和声の差異を的確に感じ取っていて、この差異で生じる調和や濁りのメリハリで、トニック感やサブドミナント感やらドミナント感とやらを得ているワケであります。

仮に意地悪して倍音を含まない音を使って一定の音列「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」を用いても、結果的には和声から生じる進行感によって、最も親近性の高い進行を選択することが近道、として認識されるでありましょう。道なき道を歩かせても、通る道はさほど大差ないというようなトコロに落ち着くのでありましょう。


とまあ、ほんの少し横道に逸れたような話題だったかもしれませんが、ココは和声的な背景を語る上で非常に重要なモノだったので、その辺りを吟味していただいて、従来のポピュラーな和声の表記とやらの成り立ちの背景をあらためて知っていただくと助かるワケですな。


でまあ、一般的に体系化された音楽の語法というのは「調性音楽」というトコロに殆どが馴染むモノでありますから、こっちの世界に閉じ込めておいた方が都合がイイわけです。和声表記にしても調性音楽をターゲットとすると、それ以上の飛躍的な表記はあまり好ましいモノではなくなるため、こっちに閉じ込めてある、と認識していただくと有難いのでありますな(笑)。まあ、閉じ込めると言ってもこの世界はとても広大で、あまりにも知れ渡った空間で、おおよそのコトでは閉じ込めるなどとは申せないモノでもあるんですが(笑)、まあそういうこってす(笑)。

手前味噌ですが、今から二年ほど前に提示したコード進行において、今回取り上げているテーマと密接な関係になるコード進行を今一度載せておきますので参考にしてみてください。
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