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メランコリックな秋ですか!? [楽理]

前々回の記事の続きに行く前に、Kクリの方で新たにリリース曲が更新されたので先ずはそれらについて述べて行こうかと思います。


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今回の更新曲については、左近治としては比較的珍しい所かもしれませんが、ラリー・カールトンの「Don't Give It Up」のハーフタイム・シャッフル・バージョンにてメイン・テーマをベース(スラップ)で繰り広げているという、まあ、ベース弾きの「お遊び」とやらをそのまんま具現化してしまったワケですが、別にアイデアに困って、自分の手癖とやらを安直に打ち込んでしまったというワケではありませんよ(笑)。新アルバムも控えているようですしね。

いわゆるブルースを基にしている進行であっても、ナチュラル11thを忌避するような方ではなく、経過的にではなく和声的にも用いるような方向でドミナント7thコード上におけるナチュラル11thについては今後も語って行くことになるんで、今一度「フツーの」使い方の方をKクリにて更新しておくべきかな、という意図があったのが真相でございます。


まぁ、カールトンって結構有名ドコロなんで今更私が語る必要はないかと思うんですが、うるせーコト抜きにして左近治は単純にこの曲「Don't Give It Up」がメチャ好きなんですわ(笑)。しかもライヴ・バージョンである「Last Nite」のバージョンの「Don't Give It Up」で、オリジナル・スタジオ・アルバム盤はそんなに好きではないんです(笑)。まあそれもエイブラハム・ラボリエル御大のプレーの差というモノが影響しているのではないかと思うのでありますが、まあ自分自身が思い入れの強い曲というのは今までも耳にタコが出来るほど述べているかと思いますが、制作するのは難しいモンです。

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どのみちオリジナルの良さ(アルバム盤であろうとライヴ盤であろうと)を超えるコトはできないのだから(笑)、それ故原曲にはない発想のアレンジで弄ってやろうという(逆にそれをやらなければ完全コピーという方向にしか目的が無くなってしまう)、矛盾した発想かもしれませんが、本来なら思い入れの強い曲をアレコレ弄りたくはないものの、ついついこういう風に表現してしまいたくなるジレンマというのは自分の欲求を超えた所にあるので、或る意味でバイアス掛かっていないので巧く功を奏することもあるモンです(笑)。

一応、曲が一通り再生すると次のループからは指弾きにしているのは、チョットしたさりげない私の配慮でございます。


とまあ、今回声高に語りたい部分は、実は左近治オリジナルの方の「Hyper Melancholic Two」の方でして、この曲は確か去年の暮れ辺りに制作していて年明けくらいにリリースされたかとは思うんですが、いわゆる左近治が嗜好する「ハイパーな」和声を使っているので手前味噌ではあるものの、提示したというアレですね。

今回ももう少し弄って曲自体のアレンジはまた別アレンジで、コード進行においては未発表部となる2ndテーマの部分を用いながら改めて披露したワケであります。6小節目と8小節目は若干当時のコードと違うコトがお判りになるかと思いますが、こういうハイパーな和声については、当時リリースした時よりも左近治のブログにてアレコレ披露しているんで当時よりも耳に馴染んでいらっしゃる方もおられるのではないかと思いますが(笑)、まあ、この手のハイパーな和声を何処の馬の骨か判らぬような所から会得するよりも、出自の確かな所から学びたいと思っていらっしゃる方ならオススメの本があります。この間もチラッとブログで触れましたけどね。


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まあ、カンタベリー系なら避けては通れぬアーティストであるデイヴ・スチュワートの著書がリットー・ミュージックからリリースされているワケですが、これって以前キーボード・マガジン誌上で連載されていたモノでもあるんですね。で、この本にはデイヴ・スチュワート本人も私の提示するハイパーな和声というのを紹介しているのでそちらを参考にしてみても宜しいのではないかと思います。あとは、本人のサイトにて触れられている譜面等を参考にすると、デイヴ・スチュワートがどういう世界観を持っているような人なのか、というコトが彼のバックボーンを全く知らない人にもこうして確認するとあらためてお判りになるのではないか、と。

まあ、アレですね。例えばコード表記等はかなりポピュラー・ミュージック界に寄り添った配慮をしているものですが、ポピュラー基準で見るとクラシック系のような度数表記をしているのも特徴的な部分かな、と。そういう特徴的な部分ではなく、和声的な部分を実感してほしいのでありますので、こうして紹介をしているというワケです。



しかしながら、その手のハイパーな世界の分析やら根拠やら誘因とやらは左近治のブログの方が深く語っているかと思うんですが、まあ、何処の馬の骨か判らぬ戯れ言なんで、きちんと名のある方の方をご覧になってみてはいかがでしょうか(笑)。その辺の本読んでも、この手のハイパーな世界がちっとも理解できねー!って人は首長くして左近治のブログを閲覧しておいていただければいつかは語るかもしれませんので、期待しないでお待ちいただければ幸いでございますな(笑)。


ハイパーな和声の世界について例を掲載しつつ語っている理論書やらガイドブックというのは意外にも少ないモノだと認識しております。とはいえ私とてあらゆる理論書に目を通しているワケではありませんので無責任なコトは言えないのですが、少なくともポピュラー界隈(ジャズ畑含)においては、なかなかハイパーな和声の世界観を詳細に語っているモノにはそうそう遭遇しないのが現実なのではないかな、と私は実感しておりますし、ましてやその手の話題が少ないからこそ、左近治のようなブログですらも検索して来られる方もいらっしゃるとは思うんですよ。但しこの世界観というのは、ある特別な和声的な世界観のニーズがあるというよりも、情報が少ないが故に拠り所としての安息のポジションを求めている人が「止まり木」を求めてやってくるのではないかと推察するワケであります。

例えて言うなら、ご自身の健康面や身体面であんまりに見聞きしない症例を感じてアレコレと思いを募らせるというような行為と似たようなモノなのではないかな、と思うワケですよ。人それぞれ音楽(和声感覚)の習熟度は十人十色なワケでありますが、ある一定以上の器楽的な心得があると見えてくる世界があると思うんですが、ハイパーな和声の世界観というのはさらにその先の世界観なのだと朧げながら感じていただければ判りやすいかな、と。というワケで、まずは今回の本題に入るといたしましょうか。



扨て、今回リリースした「Hyper Melancholic Two」の、前回とはほんの少しだけ違うコード進行というのは先述の通り8小節ループにおける6小節目と8小節目にあるのですが、今回のコード進行の方は次のようになっているワケです。


6小節目・・・F9 -> F△/Ebm (※いずれも2拍ずつ)
8小節目・・・Am7(#11) -> G△7(+5)/Ab△ -> D△/C△ (※8分音符において3+3+2)


以前に提示したコード進行というのは、いわゆる今回のコード進行の1st verseみたいなモンですので、多少変化を与えているので前回と違う箇所が出てくるワケですが、今回記したコード表記において少々留意すべき点は、ハイブリッド・コードの表記で、6小節目の分母部分にマイナー・トライアドが出現する所ですね。因みに「F△/Ebm」のコトです。

この構成音を満たすオルタード・テンションの7thコードというのは幾つか想起するコトはカンタンですが、そちらを想起せずに、上がメジャー・トライアドで下がマイナー・トライアドという世界観から生じたハイブリッド・コードという世界観を演出したいがためのコードなんですね。ヴォイシングにおいては左近治の今回のこのヴォイシングが意図したモノなんですが、敢えて明記しませんので、このヴォイシングはきちんと音を採って分析していただきたいと思います。このヴォイシングが判らないようだとチョットこの先ツライかもしれませんが、頑張って音を採ってみてくださいね、と。一応、このコードはキーボード・ドメインだけで見れば「上も下も一緒」みたいなハイブリッドなヴォイシングとして弾いてはいるものの、このハイブリッドな和声は、あくまでも「下はマイナー&上がメジャー」というバイ・トーナルな世界から呼び起こした産物ですので、その世界観というのは注意してくださいね♪

もう少し詳しく語っておくとですね、キーボード・パートという単一のパートで「F△/Ebm」という和声を白玉で補おうとすると下と上の和声というのは混ぜこぜ状態になってしまいますが、この和声観を呼び込んでいるキッカケというモノはそもそも、下にEbマイナーの世界&上にFメジャーの世界というバイ・トーナルの世界を想起していて、概してそういう世界というのは二つの異なる調性が対位的に織り成されている事で生じている響きだというコトを念頭に置いていただきたい、というコトなんですな。ですので、キーボード・パートだけでこのコードを抜粋した場合、ヴォイシングとしては上と下のトーナリティーが明確に分断されたようなヴォイシングではなく、上も下も一緒になっているようなヴォイシングになるので、それをきちんと見抜いた上で、このヴォイシングの妙味とやらを各自探ってほしい、という意味合いで語っているんですね。

1年以上前でしたでしょうか。左近治がハイブリッドな和声を用いる時に、そのような分数コードが生じる時に、分母が短和音の時というのはよっぽどのコトが無いと用いないと述べたコトがあるのは。というのも、そういう世界観を語るには順序がありましてですね、こうして今に至るワケなんですな(笑)。概ねウォルター・ベッカーのコトを語っていた時期も記憶として呼び起こされるので、この手の話題を順序立ててブログで披露すると1年以上どころか2年くらい余裕で費やしてしまうモンでもありまして、面と向かって話せば数時間もあれば語れるコトなのに、文章にするというのは実に骨が折れるモンです(笑)。まあ、書き手もそれほど忸怩たる思いを抱いているので、遅々として進まぬように感じていらっしゃる方もおられるとは思うんですが、その辺の思いは互いに共有していければな、と(笑)。墓入る前までには役に立つコトがあるかもしれない、という思いで長い目で見てくれればよろしいかと(笑)。


この特徴的な「F△/Ebm」というコードの下の分母部分を平行長調の世界に置換して「F△/Gb△」という風にして、別のハイブリッド・コードを得る方法もありますが、これらをバリエーションとして覚えておくとイイかもしれません(笑)。特に後者の上と下が長七度セパレートしたメジャー・トライアドのハイブリッド技は、よ~く私は使いますし、デイヴ・スチュワートも著書の方でこのようなハイブリッドな和声を例に挙げておりますのでご参考まで。デイヴ・スチュワートの述べているポピュラー界隈の解釈というのはかなり端折っておりますが、古典的な和声観を払拭した上で述べている所が注目すべき点であります。特にドミナント7th上のナチュラル11thの扱う例とか、マイナー・コード上における13th音の扱いとか、この辺りは私自身これまで熱く語って来ているワケですが、何処の馬の骨か判らぬ者が語っているよりかは、名のある方の著書にて習得していただければな、と思う事しきりです。


ただ誤解してほしくないのは、私の楽理的背景がデイヴ・スチュワートに則っているモノでもなくパクリでもありませんので、その辺はきちんとご理解していただきたいな、と。


で、今回のブログにおいて最後に今一度語っておきたいのは、先述のコード進行(今回Kクリでリリースした)で8小節目の最後のコード「D△/C△」ですが、これはよくあるメジャー・トライアドのスーパー・トニック型(スーパー・トニックとは九度関係のコトを意味しております)のハイブリッド・コードではなく、実際に曲中で用いているのは、下のメジャー・トライアドは5th音をオミットした(G音省略)の「C、E、D、F#、A」という構成音ですので、通常「よくある」タイプのスーパー・トニック・レイヤーのメジャー・トライアドのハイブリッド・コードとはチト違いますので、その辺もよ~く聴いていただければな、と。

無粋ですが、左近治のブログを読まれる方で混同してほしくないのでとりあえず今回2種類のハイブリッド・コードについて語っておきますね。私が頻繁に表現するトコロのハイブリッド・コードで特徴的なのは次のようなモノがありますので今一度ご確認をしておいてください。


メジャー・トライアドが上下に双方存在するタイプで「セカンド・ベース・タイプ」の方は
「Bb△/C△」

メジャー・トライアドが上下に双方存在するタイプで「スーパー・トニック・タイプ(7thベース・タイプ)」の方は
「D△/C△」


という風になりますので、今一度ご確認しておいてくださいね、と。


※低い方から高い方を見て七度関係になっている方を2ndベース・タイプと呼び、九度関係になっているのを7thベース・タイプと呼ぶのは変じゃないか!?と思われる方もいるとは思うんですが、「○○ベース」という方は、下声部が単音のコトを意味していて、今回の下の世界が和声である、というのとは別なんですね。ですので「○○ベース・タイプ」と、わざわざ「タイプ」という風にしているので、ソコんところも注意していただきたいな、と。



というワケで次回からさらに詳しくバイ・トーナルな世界の方を語っていきますんで、その辺もお楽しみにしていただければな、と。