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モード奏法における「ヘプタトニック」と云ふ壁 [楽理]

今一度楽理的な話題に戻るとしますか。


扨て、そうして私は当時、後輩からの質問において先の例のようにして語っていたワケでありますが、彼自身、増四度と減五度の扱いというモノを厳密にしなければならないと理解を深めていったワケでありますが、今度は彼のモードの捉え方があまりに「実直」なため、私は彼に対して次のようなコード進行を提示してモード奏法で対処するように指南したワケであります。


●Key=Cにおける「C△7 -> Db△7」という、1小節ワンコードの繰り返し
●上記のコード進行において「トニック感」を演出すること


さあ、彼は困りました。特に「トニック感の演出」というコトに物凄く引っ掛かっているワケですね。彼の名誉の為にも言っておきますが、この当時の彼は既に初歩的なモード奏法の術は身に付けておりまして、チャーチ・モードで容易に対処できる位ではありました。ソコでハナシを戻しますが、無論、通常であればC△7の所でアイオニアンをしつこく弾けばそれもトニック感ではありましょうが、果たしてそこだけ注意を払えばイイものなのかどうか非常に悩んでいる様子が弾く前からコチラとしては見て取れるワケであります。しかも対峙している相手が底意地の悪い左近治と来ればスンナリとした解を求めようともそれで済む筈はなかろうと踏んでいる様もまざまざと感じ取るコトが出来るのであります(笑)。


彼は、このあまりに簡素なコード進行において私の意図を知りたくて仕方なくなり、自身の執ろうとしているアプローチの稚拙さを弾く前から私にカミング・アウトして観念したワケですな(笑)。私の意図の方を知りたいので、どうかそっちを教えてください、となったワケですな(笑)。

で、私はまず次のようにアドバイスしていったというワケでありますので、その辺りを解説していってみようかな、と。


率直なハナシ、「C△7 -> Db△7」という単純なコード進行を延々と続けたとしても、トニック感の演出次第によってはかなり多様な演出をすることが可能である、というコトを意図した上でテストしたワケですね。


楽理の初歩の初歩部分ですが、トニックから進行する次のコードはノン・ダイアトニックであろうがダイアトニックであろうが自由なんですね。その自由さがあまりに広大なため、トニックと同種のノン・ダイアトニックなコードに行く時は少々注意が必要になる、という点も、初歩的なモード奏法を学ぶ時に会得していくモノでもありましょう。

Cメジャーから見た「ノン・ダイアトニックな音」とは、鍵盤で言えば黒鍵部分ですな(笑)。これらの黒鍵部分をルートとするトニックと同種のコードに進行した場合、幾つかの注意が必要になるというコトを言っているワケですよ。


仮にC△7からEb△7、F#△7、A△7に進行する場合、これらは中心軸システムで見れば対極軸&二次対極軸ともに同じ所に属するいわば「トニック」属であります。ノン・ダイアトニックな音ではありますが、そうした同属の方へ進んだ場合、進んだ先でもEbアイオニアンやF#アイオニアンという風に選択するよりかは、寧ろ同属でありながらもこのような場合は進行した時に「リディアン」を選択する方が望ましいんですな。同属のトニックだとしても。つまりEbリディアンやF#リディアン、Aリディアンとした方がベターなコトが多いワケです。必ずしもそうとは限りませんが十中八九、こういうケースで満たされるコトが多いという意味です(笑)。


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しかし、「Db△7」という「Db」という音のベクトルはCのトニック属基準で見ると、Dbという音は「Db、E、G、Bb」という中心軸で言うドミナント属に当てはまる方角でありまして、トニックと同種のコードでこのドミナント属に向かう時は、「アイオニアン」を意識した方がイイんですな。つまる所「転調」だと思っていただいて結構なんです。


仮にC△7 -> Db△7という進行があったら、Dbの所ではDbアイオニアンで且つ「Dbメジャーに転調」という風に解釈した方がイイという意味です。Dbの部分を同属の「E or G or Bb」の「△7」に置き換えても勿論同様です。


つまるところ、基のトニックからドミナントの方角へいきなり進行する際は「転調」という解釈をした上でモードの処理をする方がラクなコトが多いワケです。



仮にですね、先のコード進行「C△7 -> Db△7」が複数回繰り返されると、これは一層多様性を生むんですな。先のコード進行が2回続いたとしましょうか。



C△7 -> Db△7 -> C△7 -> Db△7


1回目のDb△7というのは、ココを「トニック」として見立てたのであれば、次のコードである2回目の「C△7」というのは実は四度進行で出現してくれるはずのGb△7の対極として出現する「C△7」として見立てるコトが可能となり、自ずとこの2回目の「C△7」というのはこの時点で「サブドミナント」としての「C△7」でありまして、1回目のC△7(トニック)と和声的な構造は全く同一であるはずなのに、トニックとサブドミナントを使い分けるコトが可能になるのです。つまり、2回目のC△7ではCリディアンの選択を可能とするワケです。

そうして今度はサブドミナントとしての振る舞いから2回目の「Db△7」が現れるので、或る意味では通常の世界で言えばVIbからVへ向かう動きとも言えるかもしれませんが、Vはドミナント7thではありません。メジャー7thですからね。トライアドで表現すれば、C調におけるF -> Eの時とも似た動きとも言えるかもしれません。無論、2回目の「Db△7」に対して転調という属性を与えるコトも可能ですが、モード的な解釈としては2回目のC△7とDb△7の間にかなりのモード選択の自由度の力点を作るコトが可能となるのを察知していただきたいワケですよ。


もう少し判りやすい例としては、Dbという属音に対してFマイナー・トライアドが乗っているという和声構造という風に置き換えて考えれば宜しいかもしれません。ドミナントに向いてはおりますが、よくあるドミナント7thの形ではないですからね、ソコが注意すべきポイントなんですが、この「属音+ナンタラ」という考え方というのは、属音から3度累積構造の和音を乗っける際、属音からカウントした3度と7度に相当する音を、ドミナント7thのそれとは異なる音程として彩る、いわゆるバルトークの中心軸システム(半音階という世界を全方向から等価に導くための)を好意的に解釈したモノなのです(つづく)。