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同主調ってヤツは (2) [楽理]

つづきです。

扨て、同主調が五度圏において90度の関係で表されることが判りましたが、この90度の関係というのは中心軸システムで言う所の二次対極の関係なワケでありまして、「同属」として扱える位置関係にあるワケですな。


長・短の平行調が90度の関係にあり、さらに同主調の平行調がやはり90度の関係にある、という調的な牽引力というのは実に興味深い所ですね。


更に言うとこの五度圏で見た場合の「90度」というのは、完全五度累積というカタチで見ると3回累積させたコトとなります。フーガを書くような時や対位法を導入して多旋法なアプローチを用いる時というのは通常近親性の高い関係調を導入するという技法があるのはご存知だと思うんですが、この90度という範囲には少なくとも平行調・下属調・属調・同主調が何らかのカタチとして収まっている所は実に興味深い事実なのであります。


完全四度累積という「牽引力」というのは裏を返せば完全五度の累積とも見ることが可能なのですが、つい先日まで私はその方面の話題で調的拡大を見越して語っていたワケでありまして、その調的な世界の拡大をするために、属七の和音とやらの拡大解釈を行っているようなモノだとご理解いただきたいワケですな。


例えばハ長調における第7音をルートとする減三和音「Bdim」という和声は、古典的な世界ではドミナントとして扱っておりますが、バルトークの中心軸システムが構築される時代ではサブドミナントという解釈であります。いわゆる短三度音程跳躍の「減七フレーズ」(例:ブダペストの心など)やトリスタン和音などの取り扱いがその筋によって流行するようになってから役割を変えてきたのだと推察しますが(笑)、私左近治は「属七」と三和音の属和音は別物、として捉えておりまして、三和音の「G」であれば別に構わないのでありますが「G7」とした時、つまりドミナント7thとして姿を変えている時というのは「G音ペダル + Bdim」というカタチで捉えています。


その「G音ペダル + Bdim」というカタチは平たく言えば「属音ペダル + サブドミナント」という解釈でありまして、これらは三度音程にて収まるからこそ「G7」というドミナント7thのカタチで表記してはいるものの、左近治は「分数コード」的解釈を行っているというコトなのです。故にドミナント7th上で生じる3rd音に対してsus4あてがったり、色んなコードあてがう根拠というのはこういう捉え方があるからなんですな(笑)。

私はそもそもドミナント・モーションのありきたりな動きをする使い方というのは非常に懐疑的でありまして(笑)、どちらかというと非常に嫌悪するのでありますが(笑)、この辺の穿った見方というのがこうして変な見立てを行う基礎となっているのかもしれません(笑)。「G7 (b9)」というコードでしたら「G音ペダル + Bdim7」でありまして、「G7 (#9、#11、b13)」というカタチなら、「G音ペダル + Bディミニッシュト」を想起しているというコトとご理解いただければよろしいかと。この辺は左近治が過去にもブログでクダ巻いたコトもありましたが、ディミニッシュのコード表記において、減三和音としてのdimと減七の和音である「dim7」を厳密に区別しているというコトもこういうシーンがあるからであります。


まあ、この件に関して言えば減三和音というトライアドにb13thという音が生じることもあるディミニッシュ系の音、というのはコンディミを「モード」として(つまりオクターヴ内において7音を超える音列を想起)捉えている時というのは、想起するモード上において7度の次はオクターヴではなく「まだ先がある」という状況下に身を置けばこそ必ずしや遭遇するジレンマなのでありますが、この世界に疎い方というのは実にありきたりな「ディミニッシュ表記」をしてしまうものでもありますので、その辺に収まる事例が大多数であってもソチラには染まらず且つ誤解が生じないように配慮している区別なワケなんですな、コレが(笑)。


とりあえずハナシをディミニッシュの話題に戻しますが、例えばクラシックの世界においても「まーた減七フレーズ使ってんよ!」とか揶揄されたコトは当時から既にあったようで(笑)、そこで減七のフレーズに対してある一定の和声外の音を「分数コード」的に用いることも多々あったようでして、この辺を完全に体系的に確立したのはやはりバッハではなかろうか、と思うワケなんですよ(笑)。


まあ、そういったアプローチと共に五度・四度累積による応答で根拠を求めつつ多旋法的なアプローチを導入するというワケでして、例えば、以前GGの「Free Hand」をアレンジした時も「分数の分数コード」的表記をするに至ったのも、垂直レベルで和声構造を見た場合には便宜的にそのような表記をせざるを得ないという断腸の思いを表したモノとも言えるかもしれません(笑)。


他にも、例えばチック・コリアの特徴的なアプローチのひとつでもある過去にも「King Cockroach」の件で語ったハイブリッドなスケールすなわち「ミクソリディアン+エオリアン」という混合されたスケールというのは、解体すればそのスケール内において「I -> IIb -> Vb」という変換(コード進行)というプロセスに見立てることができるとも語りましたが、つまるところコレはそれぞれのミクソリディアンとエオリアンは9度の応答なワケでして、五度を3回累積している応答よりもより近い五度の応答の多旋法的アプローチによるものだ、というコトもここで再確認することができるワケですね。










多旋法的アプローチによってハイブリッドな型として垂直レベルに和声を「解体」してみると、そこにはベース・ペダルに加えて複数のポリ・コードの姿が見えて来ます。そこに内包しているポリ・コードというのは上声部・下声部共に限りなく最小限のカタチとして姿を見せてくれるように分析する事が重要でありますが、そうして解体した時の姿というのは、減三和音もしくは増三和音を生じるタイプに分類可能なシーンに出会すコトになると思います。


解体された時に減三和音を内包するカタチとなった時はおそらくやアカデミックっぽい響きを見せてくれるでしょうし、増三和音の場合は些かハイパーな響きに感じ取れるコトでありましょう。無論、このような解体をしてもどちらにも属さないタイプのハイブリッドな和声というのも勿論存在するでしょうが、概ねいずれかのカタチに分類できるコトが多いのではないかと思います。因みに以前語ったチック・コリアの「King Cockroach」のパターンは、増三和音タイプに解体する事が出来、オーギュメンテッド・メジャー7thの分散を鏤めたものを多旋法的に見立てている姿というコトをご理解いただきたいと思うワケであります。


私自身がハイブリッドな和声として用いる時の「それ」とは、和声自身が進行感を誘うチカラとは別の「牽引力」というのを四度累積によって導き、同時に上声部には五度の共鳴、すなわち「よくある」タイプの和声構造を下声部と上声部で異なる牽引力というものを用いているアプローチと言えます。

例えば下声部にメジャー・トライアドがあって、上声部には下声部のそれと長七度セパレートした所をルートとするハイブリッド・コードが有ったとしましょう。ココでは仮にFメジャー・トライアドが下声部にあり、上声部にEマイナー・メジャー7thが有るとします。

Fから見た長七度音程Eというのは五度の共鳴では四度累積よりも近い音程ではありますが(四度累積を繰り返すより五度累積を繰り返した方が累積数は少ない)、ココで五度累積の側で長七の音を求めてしまうとハイパーな音にはならない、というコトを意味します(笑)。


同主調という世界が結果的には四度・五度累積による近親性を備えていて、そこには変格としての姿を持っている。たまたま多くの人がそれを「正格」として見出すからこそ結果的に同主調になるのでありますが、では長調の同主調から得られた四度の累積でAb音の二次対極は(90度セパレートしている)どうなのか!?というコトがすなわち下声部のルートから見た長七度音程の「呼び起こし」なワケです。



それでは、ココであらためてCメジャーの五度圏の図を見てもらうコトにしましてですね、今一度ご確認していただきたいワケですが、図では時計に相当する時計回りに11時から5時の範囲の部分を示す所にもう一度注目です。

Cmajor.jpg


Cメジャー/Aマイナーの音列から生じる、いわゆる「変格」としての姿で代表的な「変格」の扱いというのはGミクソリディアン、Dドリアンというのは90度の範囲に収まっているのがお判りですね。それらの90度の両脇に生じているEフリジアンとFリディアンというのも、その「寄り添い」方を見れば、これらの代表的な「変格」の姿というのは四度/五度の応答で成立しているのもあらためてご確認できるでしょう。

そもそも変格旋法の終止音の扱いというのは正格の姿の四度/五度音に基軸を移している作法なワケですから、四度/五度の応答に位置するのは至極当然とも言えます。音楽理論を学ぶ際、変格旋法を扱う時は最も最初に触れる重要な要素なので(ここを蔑ろにすると対位法も学べません)無粋なコトだとは思いますが、今一度ご確認願いたいな、と。

で、五度圏にてCを主音とする同主調を確認すると長調・短調の範囲というのがそれぞれ判ると思いますが、同主調の短調側の反時計回りの「Ab」の二次対極というのは「B」。四度累積側(つまり反時計回り)の応答で見ても、半円の半分をわざわざ越えるコトなく呼び起こすことも可能なワケですが、勿論全てを使って良いというモノではなく、「和声的に」聴かせようとする狙いがあれば、それを聴かせるための響きは無秩序であってはならないと思うワケですな。

例えばハ長調において白鍵全ての7音を「Bm7(b5)/C△」なんていうのをハイブリッド・コードだ!なんて呼ぶのはチト無理があるワケですな(笑)。トニックもサブドミもドミナントもあったモンじゃない(笑)。どうせ胃袋入れば糞になるだけ!とばかりに白いご飯にオカズにケーキとキムチで青汁ブッかけ!とばかりにメシ食らう位何でもアリじゃダメなワケですな(笑)。

この手の調性内における(7音で構成される所の)音程全てを和声的に構築可能なのはそれが倍音列に則っている時であり、バルトークはこれを全音階システムと呼び、拡張的に考えればこれはメロディック・マイナー・モードを生じ、メロディック・マイナー・モードという世界の多様感を突き進めている根拠にもなっているワケですな。


まあ、何でもアリとはいえど器楽的な情緒はある程度備えていた方が、その音がどんなに異端であろうとも情緒とやらを第三者に判別してもらえる方が判りやすくもあるワケですな。とはいえ予測はかなり困難でありましょう。ある一定のモチーフ(欠片)のフレーズを引用してそれを多旋法的なアプローチで、よりアウトサイドな音を導入するという応用力と唄心が要求されてくると言いたいワケでありますな。


12個の半音の集まりの内9音を選んで情緒を得ようとしましょうか。ここでは五度の共鳴として最も得られやすい9音というのはチェレプニン音階なワケです(異端な音階であるにも関わらず)。とはいえ、チェレプニン音階とは違った並びを持った音列になったとしても、そこにある程度の情緒を得るとしたらチェレプニンに寄り添う近似的な音並びになりつつも、図形的に見ても規則正しく残りの3音が余るワケでもありません。等しく90度の関係で残るワケでもないでしょう。そういった情緒を感じつつハイパーな音世界を意識するというのが重要であると言えるのでありますな。


ジャズ屋の人達ですら、こういうコトまで意識せずとも「体系化」されたジャズ理論とやらを知っているがために、ジャズなんて一切知らずとも形式だけである程度の音は出せてしまうモンなんですよ(笑)。ある程度楽理的な知識備えていればロックな兄ちゃんですらジャズやポピュラー理論なんて会得しているのでありますから、形式だけの音というのは出せてしまうというコトを意味します。

体系化している以上、出てくる音も「察し」が付くワケですな(笑)。トーシロに毛が生えたような聴衆にすら予測されうる音というのは果たしてジャズなのか!?


という疑問が生じます(笑)。


無論、私はそれをジャズとは呼びませんし、予測してしまった自分がアーティストに近い感性を持つようになったと短絡的に自画自賛するようでもこれまたダメダメなんですな(笑)。予測可能な音しか出せないようなアーティストはいずれ埋没してしまうワケですよ、残念ながら。それがその人の得意技であればまだ評価されるワケでありますが。

とはいえ予測不能な無秩序な世界を許容するワケではありません(笑)。和声感というものを形式的にしか体得しておらず、判ったようで判っていない連中がいかに多いコトか(笑)。故に、杓子定規な和声とアプローチになってしまうのだと言いたいワケですな。

現在において少なくとも「異端」と思えるような音を見つけてはブログで紹介する。それが左近治ブログだと思ってもらえれば幸いです。免許証やパスポート類の証明写真のような「真正面」ばかりが音楽ではないんですよ(笑)。


とまあ、今回は同主調をテーマにしつつもいろいろな側面を語ってみたワケでありますが、いずれにしてもチャーチ・モードの類というのは五度圏の図で見るならば五度の共鳴で得やすい時計回り側にあるのでありまして、二次対極を頼りに反時計回りに四度の応答で得られる側というのは多様性を持っているワケでありますな。

例えばハ長調においてサブドミナント・マイナーはFmであるワケですが、Fをトニックとするマイナーではなくこれまた同主調の平行調、つまりFドリアンという近親性から生じている事例だと言えるでしょう。ハ長調の平行調であるAマイナーとは対極にあるEbのトーナリティーというワケですね。


一挙に対極の世界に行くのではなく二次対極をクッション的に用いれば対極側も縁遠くはありませんし、こうして考えると増三和音の音程関係は少々縁遠い多様性を持っておりますし(進行感を伴う可能性が高い)、色んな可能性が見えてくるワケでありますが、単一方向だけでなく見てみるのも重要かな、と(笑)。お判りになっていただけるでしょうかねー!?