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ハイパーな音世界においても叙情的に [楽理]

扨て、今回左近治はKクリにおいてちょっぴり叙情的&官能的に響いてくれるコード進行のデモをリリースしております。ついついコード進行のソレにメランコリックに没頭しちゃいそうな感じのヤツを。まあ、左近治の今回の意図としては、どんなにハイパーな和声を用いていようとも、それそのものを異端に感じさせるコトなく聴く人の多くが官能的に響くように感じ取ってくれたらな、という思いを抱いて作ったモノであります(笑)。ラテンな世界というのは時としてハイパーな和声が多いにも関わらず、前後の叙情的な世界が功を奏しているためか、官能的な世界にドップリと浸らせてくれる世界観が存在したりするものです。

突き詰めすぎるととても「クサく」なるくらいメランコリックになっちゃう時だってあるものの、ハイパーな和声とやらを真っ向から拒絶される嫌悪感とはまた違うと思います。ある意味、非常に親しみやすくも聞こえるデオダートのような肌触りを参考にしながら試しに作ってみちゃった、というのが今回のデモなんですな。とはいえ、左近治が日頃よ~く使うコードが殆どですけどね(笑)。

それでは、今回リリースした曲について述べていくことにします。それでは下記の例を確認してもらうことにしましょうか。小節単位のコード進行と、2種類のモードを載せております。

01.jpg


まず1小節目のコードは、左近治がよ~くやる「便宜的」なコードですが(笑)、ロウワー部が「Db7」で、アッパー部が「Fsus4」というハイブリッド・コードと なっております。
※先の画像の譜例にある2つの音列(DbミクソリディアンとBbジプシー・マイナー)は、それぞれのスケール名はそのままに、上段と下段との音列を入れ替えてください。レイアウトを間違えてしまいました(笑)。実際に音追えば自ずと判ってくれるだろうと思いましたが、左近治の不手際なのでそこまで強要してはマズイかな、と思いまして(笑)。

まあ、普通に考えてもこの手のコード表記など一般的な世界からはかなり乖離された世界のようにも思われるかもしれませんし(笑)、この手の和声など参考にならないと思われるかもしれませんが、実のところ、この手の和声を欲する理由というのはそれなりに理由があるものでありましてですね(笑)、その背景とやらを端的に記すと、2つの異なるモードの組み合わせで生じた結果、というコトを明示しておかなければ理解に苦しまれるのではないかと思い、まあ、その 辺りを端的にご説明しようかな、と。


2つの異なるモードによって生じた「ハイパーな響き」というものを、垂直レベルに和声を与えているがために、コード表記としてはこのような馴染みの薄いモノとして成立してしまっているワケでありますが、仮にここで垂直レベルの和声というのを排除して、異なる2つのモードによる旋律、つまるところ「たった二声」による上と下の声部で異なるモードを奏でた場合、どういう風に全体の響きは「織り成す」ように響くのか!?というシーンから端を発しております。


すると、下声部ではDbミクソリディアン、上声部ではBbジプシー・マイナーという旋律を弾いたシーンというものである、という風な解釈をしてほしいのであります。

コード表記としてはとても馴染みの薄い表記であっても、垂直レベルに和声を捉えることなくもっとシンプルに考えた場合、こういう風になるということを意味します。

この手の技法はジャズやポピュラー音楽においてはかえって馴染みの薄いものかもしれませんが、対位的な響きを導入すればこの手の技法などクラシックの世界のアカデミックな部分では非常に顕著かもしれません。

こういう多様な世界(ひとつのモードで表すことのできない立体的な響き)の演出というのは、クラシックの、特にフーガの技法などはとても参考になるのではないかと思うワケですが、こういう「立体的な」世界観をジャズにおいても体現しようとしているアーティストは、 モード・ジャズ期以降のウェイン・ショーター、チック・コリア、ハービー・ハンコックなどが顕著なワケですが、中でも顕著なのがウェイン・ショーターではないかと信じてやみません。


スティーリー・ダン関係、といっても2人になっちゃいますけど(笑)、「モーフ・ザ・キャット」におけるドナルド・フェイゲンというのは、かなり顕著にカノンを導入して、多様なコードワークをさらに立体的に響かせようとする試みが顕著に現れております。一方で、ウォルター・ベッカーという人はハイパーな和声をより垂直 レベルに追究しているそれがビンビン伝わってくるのでありまして(笑)、このお二方の試みというのは実に興味深いものでありまして、いまさらながら「なるほどな」と感じさせてくれることしきりなワケであります。


まあ、そういう「立体的」な響きというものも、実際にはシンプルに解体できるものでもありまして、奇異なコード表記だからといって必ずしもそこまで奇をてらっ た響きなのではなく、シンプルな複数の旋律が織り成すことで生じている一例である、ということを認識していただきたいワケであります。

無論、その響きを「ガツ ン!」と縦軸に鳴らすことで印象的にしようとする試みと、ごくありふれたコード表記に合致してしまうような世界観とは違った響きを導入したいという欲求の表れ から、今回このようなデモを作り、且つメランコリックな情緒を用いてダマくらかそうとしているのが左近治の今回の試みなワケであります(笑)。


で、通常この手の「立体的」な響きを多く耳にするのはクラシックの世界なのは前述の通りなワケですが、その技法というのは、ある旋律においてカノンの技法を採り入れ、さらにハモらせる(例えば3度でハモらせる)。

各声部が調性内に収まる3度のハモりであればこれはそれほど和声的な彩りというのはごくごく浅い世界。し かしながらここで各声部に別のモードを導入することで(概ね近親調)、それらの世界から構築される響きは多様なものとなるわけでありまして、この辺はバッハが顕著でありましょう。

バッハのオルガンとて不等分平均律によって調律されていたので、あらゆる縁遠い調に転調させるようなことまではしていなかったのでしょうが(笑)、それでも減七のフレーズの扱いというのは、現代のジャズやポピュラー系の世界から見ても目を見張るような使い方をしているのがあらためて凄い部分だ な、と。C音ペダルにBdim7とかね(この曲を知らない方はまず居ないでしょう)。

まあ、話がちょっと逸れましたが、この「立体的」な世界ということに関しては、あらためて後述することにしますので、まずは話を先に進めて参りましょうか。


そうして2小節目には「F#m△9」がやってきます(笑)。

好意的に見れば、1小節目の下声部から四度進行させているワケですが、この辺りも後述しますので今ここでは触れません(笑)。

この1~2小節目辺りというのはウェイン・ショーター、ウォルター・ベッカー、フィル・ミラーの世界観が好きな方なら、おそらくやこの2小節でグッと来てくれる のではないかと信じてやまない左近治なのでありますが(笑)、前述の方達のコードワークをパクっているワケではありませんので、その辺りは誤解のなきようご理解願いたいな、と。


まあ、そうしていきなり今度は7小節目に行きますが、このハイブリッド・コードというのも左近治ブログをお読みになられている方なら上声部と下声部が長七度(=半音)セパレートしているメジャー・トライアドというのは頻繁に出現するモノですが(笑)、譜例の注釈で小さくコード表記で付随させているそれは「便宜的な」 オルタード表記にしたモノであります。簡単に言えばメジャー7thにシャープ9thと増六度(=シャープ13th)を使うようなモノ、と理解していただければイイんですが、メジャー7thのコード上でマイナー3rdと同じ響きの音と短七の音を使うってぇのはどうにもこうにも扱いづらいんじゃねーのかよ!?と思われる方が多いかと思います(笑)。


しかしながら、このハイブリッド・コードをココで欲する左近治には一応それなりの理由がありまして(笑)、この2つのメジャー・トライアドが醸し出す世界観とい うのは、実は次のようなモード・スケールに寄り添う重要な世界観であるのです(次回に続く)