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焦点の合わせ方 [プログレ]



扨て、今回もとりあえずは前回の続きとなるワケですが、前回はGG(=ジェントル・ジャイアント)の曲「Free Hand」を題材にしていたワケでございます。
前回の要点をおさらいすると、ピアノとギターのパートはそれぞれ異なるモードを奏で、さらにベースもそれらのパートとは「異なる」音をペダルにしている、と。それらの旋律が織り成すアンサンブルを「和声的に」捉えるとどうなるか!?ということですな。


普通に判りやすくコード表記するならば「G#△/A△/F#」ということになります。無論、一番下の「F#」は単音であります。


これを便宜的にムリヤリ、ポピュラーなコード表記にあてはめれば「F#m7(#11、13)」という具合の表記になりますね。


七声与えているワケですから、これ全体でモード・スケールを構築させうるワケでもありますが、7th音以降のアッパーの音達がもたらしてくれる、この独特なハーモニー感というのは「和声的に」鳴らせばそれこそフィル・ミラーやアラン・ゴウエンが好みそうな世界観でもありますな。


しかしながら、ケリー・ミネアーのそれは和声的なアプローチではなく、旋律的にもたらしているアレンジということで、一部のカンタベリー系のそれっぽさとはやはり世界観が異なるというワケでもあります。


ケリー・ミネアーの特長というのは、この人は本当にフーガを書くのが得意だと実感させてくれる、プログレ界隈限定でなくとも実に稀有な存在であります。デイヴ・スチュワートもエッグにおいてはフーガを書いていたりもしますが、バロック風なアレンジとは異なるアプローチでケリー・ミネアーのそれは実に多様でありまして、私はケリー・ミネアーのこういう感性が実に好きなワケであります。

ヒンデミットもフーガが得意な人ですし、特に「追っかけフレーズ」であるカノンの扱いというのはやはりとても巧みですし、ケリー・ミネアーという人は本当に素晴らしい人であると言えるのでありますが、少々過小評価されている向きがあるように思えます。


というのも、クリムゾンを除く○大プログレとか形容されちゃう方々の世界観など、正直この手の和声感は得られないのが実情なんですよ(笑)。判りやすいっていやあ判りやすいのでありましょうが、肝心の和声的な魅力はどっかに置いてきちゃってしまっているようなプログレ・バンドの方が名声を得ているような向きがあるんで、こればかりはそんな動きに惑わされることなく、本当に良質なプログレに出会ってほしいと願うばかりであります(笑)。


まあ、ドミナント7thが出てこないと情緒が得られない人なども数多く存在するワケでして、ヤッターマンで必ず正義のヒーローが勝ってしまったり、児童ですらも次の展開を予測できてしまうようなハリウッド映画のストーリーとか、そんな世界が好きなんだ!という方にはムリヤリお勧めはしませんが(笑)、判りやすい世界ばかり真砂の数ほど聴いても得られるモノは少ないよ、と言いたいんですな(笑)。


でまあ、ケリー・ミネアーの方を「旋律的」なハーモニーと見るならば、フィル・ミラーとかの方は「和声的」なアプローチとして区別することができるでしょう。

いずれにしても一般的には馴染みの薄いハーモニーとなるのは間違いありませんが(笑)、馴染みが薄かろうがその中でも「聴き方」が難しいのはケリー・ミネアーのような「旋律的」なアプローチの方だと思われます。


その理由というのはですね、各パートの「旋律」に惑わされてしまい、ハーモニー全体としての聴き方というのを人によっては希薄にしかねない(多くの人がこういう聴き方に陥りやすい)という「危険性」を孕んでおります。故に、重要であるはずの「ハーモニー全体を捉える」ということが蔑ろになりかねないという危険性がある、という意味です。


大概の人は、旋律的に「織り成す」ハーモニーであってもそれを「惰性」で聴いてしまいかねないという所に落とし穴がありまして、結果的にF#マイナーのブルージーなアプローチ程度でしか理解していないと、肝心のハーモニー感を聞き逃してしまっている、ということを意味します。


白玉でガツン!と「F#m7(#11、13)」という和声を聴いた時と共通するイメージを捉えなければならない、しかしながら「旋法的」なアプローチだと、旋律の前後の情感が強く反映されるので、和声の一挙手一投足に注意を払って聴かない限りは、「旋律の惰性」に埋没して惑わされる可能性が高いのであります。


更に言えば、GGの楽曲の魅力は何も「Free Hand」だけではなく、他にも沢山楽理的側面においても実に興味深い作品など存在するワケでありまして、たった1曲からもこういう重要な局面を聞き逃すコトのないように理解を深めていくことが重要ではないかと思うワケですな。


私の場合、興味深い作品というのはジャンルを問わずしてブログで披露しているワケでありますが、とりあえずは私の頭の中では音楽ジャンルというものは全く無意味ですので(笑)、いちいちジャズとかプログレなんて聴いてらんねーよ!とか思ってしまう方もおられるかもしれませんが、ソコをグッとこらえて音楽の深みを知っていただければな、と思うばかりでございます、ハイ。


でまあ、「通常の」世界観とやらのピントの合わせ具合がドミナント・モーションにあるとするならば、この手の「異端な」世界というのはドリアン基準で焦点を合わせていただければ理解が早まるのではないかと思います。

発想の転換とも言えますけど、音階の見方というものに角度を変えるとでも言いますか(笑)。