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レゲエ感覚 [楽理]

リリースも控えていますんで、ガッツリとブログを更新しなくてはならないと思いまして、今回はレゲエな話題にしてみようかと思います。とはいえ左近治流ですけどね(笑)。昨年の今頃だとウォルター・ベッカーの新作「サーカス・マネー」の話題に集中していたのもあったのでありますが、ベッカー御大のレゲエ好きな感じはとっても伝わって来るのでありますが、レゲエ臭さという点で言えばかなり抑え気味にしている方だと思うんですな。無論、レゲエをあまり好まない人だと、アノ手の類でも拒絶してしまう人もいらっしゃるようですけどね(笑)。


率直なトコロ、レゲエというのはダブもそうですけど、ビートの調性感が「アッチの世界」に行く感覚が酩酊感を誘うワケでありますな(笑)。覚醒剤の話題が席巻するこの頃ではありますが、何も薬物投与しなければ得られない「酩酊感」のコトまでの部分を述べているワケではないですからね(笑)。とはいえレゲエとはドラッグとは近親性がある音楽であることには間違いありません。


楽理的側面で言うトコロの「調性感のアッチの世界」ってぇのはどういう意味なのか!?と言いますとですね、別にアウトな音の導入でもなんでもないんですな。

その手の調性の「アッチの世界」ってぇので特徴的なのは、メロディに6th(=メジャー6th)音を導入するのが特徴的でしょうね。キーはBbメジャーがまたよくマッチしたりする(笑)。


トニックにおける長六度というのは、或る意味平行調と同じ音でもありまして、長調ながら短調の世界の音を導入しながらも決定的に違うのは、例えばCメジャー・キーにおいてC6を用いるソレと、AmキーにおいてAm7の3度ベースとはベース音が同じだからといって性格は全然異なるワケでありますな。


前者ならメジャー・キーたる振る舞いのアンサンブルがあるでしょうし、後者ならマイナー・キーとしての振る舞いのアンサンブルが成立しているはずなんですね。構成音としてはC6とAm7が同じとはいえ、Am7に3度ベースを用いようとも、これを同一視してはいけないコトだと思っております。


メロディにおいて、トニック部分にメジャー6thを経過的にではなく明示的に用いると、チョットばかり「アッチの世界」の感覚が出て来ると思います。Cメジャー・キーにおける終止音はCですが、平行調のAmの終止音はAであるのと同様に親近性はあります。で、チョットばかり「切なさ」感も演出されると思います。


自分が終わろうとする(終止感を得るための)音とは別の、ちょっと異なるんだけど妙にくつろげる別の音でモジモジしていると言いますか(笑)、そういう感覚がトニック上におけるメジャー6thの音だと私は感じておりましてですね、レゲエは特に6th音は欠かせないモノだと思っております。


余談ではありますが、6th音を導入することで、さらにハーモニーを充実させようとすると近親性の高い9th音も視野に入って来るワケでありますな。


ただ、平行調に行っちゃうパターンもありまして、コレはコレで或る意味特殊なのでありまして混同してははいけません。誰もが知っているだろうと思われる例を挙げるとですね、「プチシルマのテーマ」なんてぇのは、トニック・メジャーから平行調のトニック・マイナーに行ってしまうという、ズッコケ感があるんですな(笑)。

調的な世界を謳歌して欲しいとばかりにトニック・メジャーから解き放たれた音達は色んな「起承転結」を見つけて音を思う存分彩るのかと思いきや、すぐに平行調のトニック・マイナーで終止させられるかのような唐突な感じが演出されているのが「プチシルマのテーマ」というワケでありまして(笑)、この手の例と混同してはいけませんよ、ってぇコトを私は今語っているのであります(笑)。

「よ~い、スタート!」という合図でスタートしたと思ったら、平行調のトニック・マイナーに引っ張られてしまうようなそんな感覚だと思ってもらえればな、と。


まあ、演歌の世界でも唄い回し(=メロディ)を優先させているが故に、多様な進行を選択せずにトニックの次にはドミナント行って、それの繰り返しで唄い回しちゃってるようなのもチョット古めの演歌にはあってですね(笑)、コレはコレでまた別のもどかしさがあるんですがね(笑)。しつこい感じが延々続くようなクドさがあると言いますか(笑)。


多くの人が知っているであろうと思われる、トニック・メジャーにおけるメジャー6thがメロディに使われているという代表例では、私はドラゴン・ボールのエンディング曲の


「おいで ファンタジー 好きさ ミステリー」という、菊池俊輔の曲を挙げます。


「挙げます」という語句をタイプして今思い出しました。「ロマンティックあげるよ」って曲です(笑)。



アニメ界隈のサブカルチャー文化には疎い私でありますが、私ですらも知っている曲、というコトでおそらく大半の人が知っているだろうな、という思いからこういう風に例を挙げているだけなのでありますので、「なんだよ、結局アニメの世界の話題かよ」と嫌悪されないようお願いしたいと思います(笑)。

この「ロマンティックあげるよ」という曲の良さはメジャー6thの使い方だけではなく、セカンダリー・ドミナントとサブドミナント・マイナーの巧みな演出も挙げるコトができると思います。サブドミナント・マイナーってぇのは、同主調の世界の一時拝借(Cメジャー・キーであればCマイナー・キーの世界を拝借)というコトで、和声的な世界においては義務教育過程レベルではあるものの(笑)、キッズという層というのは、大半は、譜面に臨時記号も全く表れないような曲(転調しているのはさておき)を耳にしているコトが多いと思われます。そんな子供達に音楽の世界観を少しでも拡大させて彩りを添えようという狙いと優しさが込められていると思うんですな。


まあ、こういう技法をさりげなく導入することで曲が構築されている所に着目してもらいたいワケでありまして、本題となるメジャー6thの在り方とは少々ハナシが逸れてきましたが、ごく自然にメジャー6thを導入する、という点においてはジャンルがどうであろうと無関係なのであります。



kootch.jpg


そうしてレゲエの話題に移るとしますが(笑)、今回リリースする曲のひとつに、ダニー・コーチマーの1stソロ・アルバム「Kootch」収録の「Up Jumped the Devil」という曲を挙げるコトに。


ダニー・コーチマーという人は、結構ミュージシャンズ・ミュージシャン的なトコロがあるため、一般的には知られていないと思われます。ジェイムス・テイラーやザ・セクション絡みでないと知る人は少ないかと思いますが、ザ・セクションというのはAOR、クロスオーバーの先駆的バンドであるため結構重宝されていたりするんですが、40代以下の人でセクションやらジェイムス・テイラー語れる人というのは結構マニアックだと思います。


まあ、そんな人のソロ・アルバムですが、レゲエというジャンルではないものの、すごくヒップな曲が多くてですね、その辺のエセ・レゲエなんか吹っ飛んじゃうくらいレゲエの要素があったりする曲が多いのも特徴であるんですが、今ではレア・グルーヴ系としてももてはやされるアイテムであろうと思います。まあ、そんな曲が「Up Jumped the Devil」というのでありまして、今回はコレをキッズ・アレンジに仕立ててみたワケですよ。


原曲はiTunesのリンク辿っていただければお判りになると思いますので、アフィリエイトでもないので気軽にリンク辿っていただければな、と。


この手の曲を聴いていただければ、メロディラインにメジャー6thを用いるという事がどういう事なのかお判りになるかと思いますが(必ずしもトニック上ではありませんよ)、「アッチの世界」と形容している様が少しでも伝わればな、と信じてやみません(笑)。


Coolhipnoise.jpg


また、近年のレゲエ/ダブのエレクトロ界隈ですと、CoolHipnoiseの「Manobras」という曲もありましてですね、こういうメロディラインを理解していただければ、レゲエ界隈の「アッチの世界」というのをご理解いただけるのではないかと思います。


チャーチ・モードという「狭義の世界」のダイアトニック・ノートであろうと、使いようによってはこういう調的なフラつき加減を演出させるコトが可能なワケでして、そこで多様な世界で特殊なモードも導入すると、スンゴイ世界になるのは明白(笑)。


聞き慣れない響きがあると、何が何でもジャズにしか聴こえねー、みたいな耳習熟していない輩が多い中、経験が乏しい子供ならまだそれは許せる段階でありましょう。イイ年した大人が臨時記号も全く表れない曲いつまで経っても聴いていて、しかも器楽的な心得があるとしたら致命的でしょう(笑)。さりげなさとエグさの絶妙なバランス感覚を養ってこそ音楽の聴き方にもチカラが入るってぇモンですよ。