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ハーモニック・メジャーの応用 [楽理]

短三度の音程を含む音列というのは、ポピュラーな所では「ハーモニック・マイナー・スケール」があるワケでありますが、それ以外ではそれほどポピュラーな使われ方はしていないと思われます。大概は、ナチュラル・マイナーの一時的な変化として経過的に用いられる程度で、ハーモニック・マイナーに準ずるポピュラー性で言えば次にはハンガリアン・マイナーでありましょうか。スパニッシュ系から派生した多くのスケールやら6音音階のオーギュメンテッドなども挙げれば色々とありますが、スパニッシュ系に関しては元はフリジアンの派生だったりもするので、根幹を知るコトは結構重要だったりするのでありますが、少なくともメジャー系の響きを持つスケールで短三度音程を有しているのは少ないモノであります。

そこで今回はハーモニック・メジャーから「派生」した人工的なスケールについて応用していこうか、と画策しているワケであります(笑)。

以前にもハーモニック・メジャーのダイアトニック・コードなど掲載した時に述べたコトですが、ハーモニック・メジャーを「メジャー」として使うよりも、そこから生じるモード・スケールとしての用い方の方が扱いやすいので、結局はマイナー系の世界で応用したりすることがあったりするワケですね。例を挙げればCハーモニック・メジャーの第2音から生じるモードを「Dマイナー系」の世界で用いたりとか。そのような例をいくつか過去に挙げたコトがありましたので興味の有る方は過去の記事を探っていただこうと思います。

今回は更に、ハーモニック・メジャーを変化させてしまうワケですな。

LydianHarmonicMajor.jpg


Cハーモニック・メジャーというのは、調号の無い譜面上では「ラ=A音」だけが半音下がる臨時記号を与えた音階となります。そこでさらに「ファ=F音」を半音上げてしまおうか、と(笑)。


すると、ド・レ・ミ・ファ#・ソ・ラ♭・シ・ド

という風になりまして「C、D、E、F#、G、Ab、B」という音並びになりまして、短三度音程を含みつつ、半音が連続するという、これまた奇怪な音並びになっているワケであります(笑)。


まあ、コレを便宜的に「ハーモニック・メジャー#4」とか「リディアン・ハーモニック・メジャー」という風に呼ばせていただくことにしますが、どこかの世界では全く別の名前が与えられているかもしれません(笑)。但し、ポピュラーではないコトだけは確かです(笑)。


譜例を確認していただくと、音列やらダイアトニック・コード群は一目瞭然なのでありますが、よ~く確認してみると!?


とりあえずC音をセンターとしてモードを形成したとしても、第5音(=G音)から開始するモードを中心とした場合、「G△7、C△7、D7(b5)」という、あたかもGメジャーのスリー・コードに以上に近しいモノとなってしまうワケであります(笑)。

これをGメジャーで用いるとしたら、常にAb音を意識して弾いていればイイんでしょうが(笑)、これではあまりに面白くないワケですな(笑)。


特殊なモードを用いるにしても、どこかではチャーチ・モードの世界に近い姿は持っておりますんで、上記のような使い方しちゃったら折角の特殊な響きをあんまりキワく使えない(笑)。


それに加え、Cをトーナル・センターだと想起していたにも関わらず、上記の例のようにGに強いトーナル・センターを持って行くと途端にそんな使い方になってしまう、と。


ジョージ・ラッセルの提唱する「リディアン・クロマチック・コンセプト」というのは、C音を基準として共鳴度の高い5度音程を積み上げていくと、6つ目でF#音が出現するのでCメジャーの重心はCではなく「Gメジャー」にあるのだ、というお話。


まあ、そのリディアン・クロマチックを突き詰めて肯定的に拡大解釈していくと、通常のモードの導入では得られない半音階的な音を得られるワケですが、ココからも判るように、リディアン・クロマチックにおける「特殊な音」というのは、何もリディアン・クロマチックを用いずとも、ハーモニック・メジャーの応用で、その特徴的な音の一部は得られるワケですよ(笑)。とはいえ、リディアン・クロマチック・コンセプトが打ち出す「全ての」可能性ある音達をたかだかハーモニック・メジャー#4が満たしてくれるワケではありませんし(笑)、リディアン・クロマチック・コンセプトというのは早いハナシが、コード・チェンジの旅にあらゆる音世界をアタマん中で想起してあらゆるモードをぶつける作業から「解放されたいがための」包括的な視点であるワケで、或る意味では、リディアンという世界の拡大解釈によって都合良く自分の庭に持ち込んじゃってる部分もあるんですよ。

私は、リディアン・クロマチック・コンセプトとして包括的な視点で12音を見るよりも、都度、自分の想起しうるモードで対処していきたい、またはそのひとつひとつの「局面的な」世界を大事にしたいという思いから、敢えてリディアン・クロマチック・コンセプトの道は使わずにその音を得ようと、まあ、そういうキモチを抱いているひとりであるワケです(笑)。


とはいえ、私たちは常にインプロヴァイズしているワケではありませんし(笑)、Cメジャーという調のチャーチ・モードに収まる世界を操る人たちの間にもモード奏法をひとたびマスターすれば、Dm7とEm7というそれぞれのコードにおいて、Em7上でも迷いなくドリアンで対処して基のテーマの情感ブッ壊すようなプレイを避けたり、或いはシーンによってはそれが許容されるなど「使い分け」を会得して行くのでありますな。


そんな情感の「使い分け」が出来るようになれば、少なくともCハーモニック・メジャー#4というモードをわざわざ導入しておきながら、5度上の世界のG△7、C△7、D7(b5)という3つのコードで安易にGメジャー・キーにおいて「俺、Cハーモニック・メジャー#4の5番目のモード使ってんだぜ!」と悦に浸るのはあまりに愚の骨頂だと思うワケですよ(笑)。


ですので、非常に特殊な音並びでありながら、ダイアトニック・コードを列挙するとチャーチ・モードに近しい世界があるので、ソコを巧い事避けながら導入しなければ、折角導入した意味が希薄になってしまうんですな。


ただ単に、5度上の世界をあたかも見出して弾くだけのような世界観として用いるにはあまりに勿体ないのが「ハーモニック・メジャー#4」なんです。


「じゃあ、左近治はどういう風に使ってるの?」と言われるとですね、例を挙げるとするなら、Cハーモニック・メジャー#4の第4&5音の所に注目ですな。


例えば、左手で下からG、D、F#弾いたとしますね、鍵盤で。アッパーはAb、C、Dという音。まあ、左手は単純に七度でGとF#だけでもイイですよ(笑)。

ま、これはGmM7に11th音が入る音です。更に言えば、ロウワー部が単音でAbでアッパーがG△7という「G△7/Ab」というようなシーン。これくらいならハンガリアン・マイナーだって使えるモノですが、C△7上で#11、b13も使えるとなりゃあ、こりゃあ便利なこと極まりありません(笑)。前にもメジャー7th上でb13th使うシーンなど例に挙げましたが、その世界観にも近い世界がココにもあるワケです。


さらに付け加えると、短三度の音程を持つスケールにてダイアトニック・コードを形成すると、九度の扱いにおいて「増九度」もしくは「短九度」となる音程が生じます。この増&短は、増九度の場合だと長三度を持つコードにおいて増九度とするとメジャーとマイナーが混同している扱いともなるワケですが、この増九度音程を本来の長三度を省いて「マイナー」として扱う拡大解釈も可能ですが、こうするとダイアトニック・コード本来の基準が変わってきてしまうので注意が必要であります。

もはやメジャーとマイナーが混同したような音を和声的に用いた場合、ハイブリッド・コードとしてコード表記した方が扱いやすくなるんですな。

先のダイアトニック・コードの例だとハイブリッド表記を用いてはいないので、モードを拡大解釈する場合など特にハイブリッドもしくはポリ・コード表記の方が扱いやすくなると思います。


まあ、この手の特殊なスケールを当てはめてそれを体系的に幾つも暗記するよりも、非チャーチ・モードで生じるスケールの変化系的解釈でボキャブラリーを増やした方が私個人としては賢明な方法だと思います(笑)。

例えば、スパニッシュ・スケールというのは広く知られているスパニッシュは8音構成のスケールですが、元々はフリジアンから派生しているモノです。

そのスパニッシュも8音音階という1種類だけではなく、7音音階としての別の「便宜的なもの」や、さらにそこからスパニッシュ系として派生させたモノなど、何種類か存在します。

それらのスケールそれぞれをひとつずつ覚えるよりも、スパニッシュ本来、或いはフリジアンの派生としてボキャブラリー(フレージングとしての)を身に付けた方がよろしいと思うワケですな。今回の特殊なモードは、そのスパニッシュ系としてのモノにも当てはまらなかったりするワケですが、この手の世界は一概に語れない部分が結構あったりするんで(笑)、その辺りを説明することは非常に難しくなってくるのであるのがもどかしかったりします。




まあ、そういう特殊な音並びとやらを左近治は、先の例に挙げた別のアプローチでも試してみたので、今回あらためてデモを用意することに。

コード進行は2小節ずつCm9→Ebm9で、ギターはどういうフレーズを弾いているか、また左近治はどんな風に乗せているのか探っていただきたいと思います。

「根拠」まで提示してしまうと面白みがなくなりますので(笑)。Ebm9の所ではb5thを混ぜているだけで、ヒントはCm9のコードの所でどうやって弾いているかがカギとなります。

しかし、この手のソロ・フレーズとなると左近治のクセというモノがついつい出てしまって偏っているなぁと反省しております(笑)。