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忘却の彼方 [プログレ]

5月もそろそろ終わりに近付いてきて、どことなく梅雨っぽい雰囲気がチラ付いている今日この頃でありますが、5月を振り返ると、メーデーというのがありました。

そんな日、Kクリはリリース日だったのでありましたが、左近治はヤッちまったんですねー、今回。リリースされるはずの曲がラインナップにない。

この異変に気付いた私は、確かに制作を終えてもはやアップロードを待つばかりの曲を手元で確認しながら記憶を辿ると、納品していたつもりが納品すら全く済ませていなかったというコトに気付くことに(笑)。

そりゃいくら探して見当たらないワケですわ(笑)。


本来なら5月1日にリリースされるはずだった曲は、ソフト・マシーンのアルバム「Soft」収録の「Out of Season」。

チョット前にKORGのWavestationの音用いてスティック(チャップマン・スティック)のフレーズ使ったデモを作ったコトがありましたが、実はスティックを使った流れで、先の曲を作っていたのであります。


しかし、原曲のそれはピアノの幻想的なフレーズからエサリッジのリード・ギターが入ってくるという曲なので、スティックなど全く無縁の曲であるはずなのに何ゆえスティックを用いたのか!?というと、実は左近治がスティックを手にした時(20年ほど前)、自分自身の練習曲として選んでいた曲のひとつがこの「Out of Season」だったワケであります。


スティックを入手した当時、同梱されていたスティックのカタログ上でしか確認することはできませんでしたが、いわゆるRolandのGRシステムを用いたスティックを「Grid」という風に呼んでいた当時がありまして、私のスティックは「Grid」ではなく、ごく普通の10弦スティックなのですが、MIDI出力に関しては一定の欲望というのは備えておりますが、MIDI機器に拘ることなく、音をエフェクティヴに彩ろうとする試みを心のどこかに備えていたのが当時だったんですな。

今現在、MIDI出力可能なスティックを「Grid」と呼ぶかどうかは知りませんが、MIDIに対する欲求はさておき、鍵盤的なフレーズを弦楽器で反映させたプレイというものを身に付けたかったという思いが非常に強かった当時の左近治。そんなワケで、鍵盤フレーズを自分自身に叩き込ませる、という意味で、「Out of Season」という曲を自分自身の練習曲に用いていたというワケであります。

変拍子を感じさせない、ゆったりとした8分音符主体のピアノのフレーズ。それをスティックで反映させたいと気持ちを有していた当時を思い起こすコトもあって、だったら、スティックのBass側とMelody側の双方をエフェクト漬けにしちゃったような音にして作ってみっか!

という思いで作ったのが今回の「Out of Season」というコトなのであります。それが本来なら5月1日にリリースされるはずだったのでありますが、左近治の致命的な記憶力が災いし(笑)、来る5月29日にようやくリリースされる予定なのでありますな。

ゴールデンウイークをまたがっているため、納品スケジュール等イレギュラーなやり取りがあったコトもあって、延び延びとなってしまっていたのであります。


扨て、今回のリリース曲はスティック本来の音を活かしつつも、かなり大胆にエフェクトをかけております。特に空間系のエフェクトですね。

スティックというのは、Bass側とMelody側を別々に出力させることができるので(※専用シールドを甘く挿すと、1本にまとめて出てくるというウラ技もあります)、通常だとBass側に空間系ギッシギシのエフェクトをかけるのは稀なんですが、今回はどっちにもかなり掛けちゃってるぞ、と(笑)。

まあ、かなりギュインギュインとした音になっていると思います(笑)。まあ、着信音用として作っているワケですので、音を目立たせたいという意図から来ているアイデアなのでありますが、あたかも「Grid」でMIDI出力させているかのようにシンセをレイヤーさせた音となっているので、Pad音の海の中でクリーンでドギツイ加工されたスティックの音がうごめいて、駅のホームのBGMかのような幻想的な感じを演出してみた、というワケであります(笑)。


そもそもソフト・マシーンの曲というのはこれまで左近治はリリースしたコトはなく、今回が初めてとなりますが、カンタベリー系やジャズ・ロック系の曲というものは、テーマも難解で長く、数小節程度の繰り返しでなかなか原曲を表現しきれないというモノが多く、着メロ用として音がデフォルメされてしまうと途端に異質な世界観となりかねないので取り扱うのが難しかったのもあって、当初は他のプログレ系においては、和声感で勝負するような曲ではなく、旋律の複雑さなど、そういう点に的を絞ってリリースしていたんですな。

それが着うたにシフトしていき、自分自身でも後回しにしていたコトでMIDIデータ制作すらされていなかった曲を新たに作る、という作業が延び延びになってしまっていたという理由が大きく(笑)、そこでようやく2年前にハットフィールド&ザ・ノースの「Mumps」をリリースした辺りからこぎつけてきていて今がある、というワケであります。


まあ、どんな理由が背景にあろうとソフト・マシーンをリリースするなら少なくともハーヴェスト期ではなく、初期~中期辺りから選曲した方が判りやすいとは思うんですが、そこはやはり左近治の天邪鬼な性格が反映されていると言いますか(笑)。


ソフト・マシーンの「Softs」収録の「Ban-Ban Caliban」という曲というのは、それこそこの曲が76年のモノとは思えないほど、非常にソフィスティケイトされた音という所にまず驚きを隠せないモノでありますが、私がスティックを手にした当時お手本にしていたのは、ブルー・モントルー(=アリスタ・オールスターズでトニー・レヴィン参加)のライヴ・アルバム収録の「Rocks」とかクリムゾンの「エレファント・トーク」辺りだったワケですが、同時にSteps Aheadのアルバム「N・Y・C」とかもかなりお手本にしていたんですね。

当時ならばステップス・アヘッドのそのアルバムはほぼリアルタイムな時代なんですが、80年代終盤辺りの「Well、In That Case」などをソフト・マシーンの「Ban-Ban Caliban」と比較すると、ソフト・マシーンのそれはいかに洗練されていて先取りしていたか、というコトを思わせてくれるくらい、クロスオーバー、フュージョン、ジャズ・ロック等というジャンルを見渡しても、いくらソフト・マシーンがフュージョン寄りになってしまった!という批判があったとしても、そこには相当な洗練度があったんだなあとあらためて実感したのが、私がスティックを手に取った時に感じた思いだったんですな。

1976年から12年ほど経過して、自分自身はステップス・アヘッドをコピーしている、と。それでいてステップス・アヘッドの音はストレートに聴きやすい音でこれまた洗練しているにもかかわらず、似たような洗練度のある曲が一昔も前に存在したという所に尊敬の念を抱いている部分があり、今回取り上げるコトにしたワケです。


スティックを手にする前の左近治というのは、MOBO III時代の渡辺香津美のMIDIを駆使したプレイには相当影響されていたのもありまして(笑)、特に「Mobo Splash」というアルバムには「私ならハーヴェスト期のソフト・マシーンっぽい音にしてやってみたいなあ」という思いを抱きながら曲をコピっていたりしていたコトもあって、1980年代終盤において70年代中期を思わせるような世界観を演出したいという気持ちが非常に強く働いていた自分を思い出したというのもあって、今回リリースしているというワケです。


シンセの世界でいうと、D-50とM1が超人気だった頃ですからね(笑)。そんな時、左近治は世の「デジデジ」な音に飽きていた所があったんですが、周囲の機材を見渡しても、自分のバンドを振り返ってみても、とても70年代のクロスオーバーな音を持ち込むコトなど許されるモノでもなかったという圧迫感を抱きながら音楽やっていたコトもありまして、自分にムチ打つかのように新たな挑戦というカタチでスティックを手に入れたというのが当時の左近治。ベースをやっていて3度目くらいの節目でしたでしょうか(笑)。


自分のやりたい音と実際のバンドではギャップが生じていただけでなく、多くの音楽ジャンルなんていうのは70年代半ば以降からは色んな音楽の「枠組み」として体系化することで多くのヒットを飛ばした時代。「ブラコン」なんて死語ですが(笑)、ディスコ・ブームがあったように、洋楽ロックというのもロックな音でポップスをやるかのような形骸化された世界観が好まれてきた時代。

枠に収まらないタイプの音楽の受難の時代だったのかもしれませんが、左近治はそういう「枠組み」に収まっているのを次第に遠ざけるようになった時でもあるかもしれません(笑)。ま、そういう意味で「原点」をレコメンデッドしているかのようにソフト・マシーンの曲をリリースするワケであります。