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「ハーモニック」な要素の使い分け [楽理]

扨て、先日は短三度音程を持つスケールについてザッと語っていたのでありますが、例えばフリジアンから派生したスパニッシュ・モードを始め、短音階ではハーモニック・マイナーがあり、ハンガリアン・マイナーやらスパニッシュ・モードから更に派生したモード等がある、というコトを前提に語ったモノでありました。この他にも、幾何学的なスケールで代表的なのはコンディミやディミニッシュトが挙げられるワケですが、これら2つの8音の音階を全てスケール・ライクに弾くことなく、「ディミニッシュ」としての根幹たる情緒を判断した上で、適度にオミットして用いることで「短三度音程」が得られるコトがあります。

ディミニッシュの情緒を得ると同時に、「ディミニッシュの解釈」としてもジャズ系の音楽においては特にアプローチとして重要な手段があるワケですが、今回はそういう双方のセンスを兼ね揃えているフレージングを題材に語ってみようかな、と思います。


というワケで、今回は渡辺香津美のソロ・アプローチを題材にしてみようかと思います。

曲は、坂本龍一&カクトウギ・セッションの「Sweet Illusion」です。

曲終盤のギター・ソロは、小節数としては変則的な9小節ずつのコード進行という部分ですね(実際には8小節+2拍+2拍のブリッジ)。

で、このギター・ソロ(曲前半のギター・ソロは大村憲司)の5647小節目の3拍~4拍にかけて、6連でB音からの下降フレーズがありますね。CDタイムで5:02~5:04辺りです。

9小節の部分のコード進行は、

F69 → Db7(+9、-13)→ C△9 → F△9 → Bm7(9、11、13) → Bb△9 → Eb△7(9、13)→ Ab△7(9、13)→ A7(13)→ D7(+9)


となりますので、先の部分は「Db7(+9、-13)」のコードの所、という風になりますな。


B音からの下降フレーズは「B、A、G#、F#、Eb、D、C」という音並びなワケで、コレが実に心地よいフレーズなワケですな。これら7音を抜粋すればこそ特殊な音並びとなって、リディアン・オーギュメンテッドの第3音をフラットさせた音にもなるワケですが、実際にはB Diminishedスケールとも言えるワケですな。

別の視点では半音下からのコンディミとも言えるかもしれませんが(笑)。

まあ、それらの音列がどういうスケールなのかどうかは扨て置き、基のコードから見れば「C音」というのは本来の短七とぶつかりますね。

左近治もよく使う「増六と長七」。そういう例だと思っていただいて差し支えないと思います。まあ、7th音から見立てた世界観が実は最も重要な根拠となるワケですけどね。ただ、見方としてはこれだけにはとどまらず、色んな解釈もできるでありましょうが、いずれにしても重要なことは、このような情緒ある音選びをしつつフレージングさせているという、奇をてらっただけのアプローチでもなく、実に情緒を豊かに与えたモノだと言えるでしょう。

多様な音の世界に興味を抱いている方は是非参考にしてもらいたい曲と、ギターソロですな。こーゆーのを聴き逃してはいけません。