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マイナー・メジャー7thのおさらい [スティーリー・ダン]

「どうもマイナー・メジャー7thはクリシェの時くらいしか使えない」

そう思っている方が意外に多いのではないかと思うんですが、ここで表現しているクリシェとはいわゆるビートルズの「ミシェル」的な、トニック・マイナーから半音下降させる時に経過的に現れるマイナー・メジャー7thのことであります。

というワケで今回サンプルを用意したので聴いてみてくださいね、と。



とりあえずセンタートーナル(=調性の軸)はDというのはお判り頂けるとは思うんですが、とりあえず調号はシャープ2つのDメジャーを想起していただいて、いわゆる最初の4小節はイチロクニーゴー・パターンの拡張的な使い方。まあドミナント・モーションを多用した方法です。

そしてソリーナのモチーフは変わらずに、後半4小節はドミナント・モーションを回避して和声感を似せながら別のアプローチを施している、という方法です。

最初の4小節の1小節目はEm9で入って、A7aug行く直前に代理ドミナント行っているのはお判りかと思うんですが、この一連のドミナント・モーションも形骸化しているパターンなので、4小節目の最初のコードは増6度用いています。

コードだけ聴けば「F#9(#11)」に聴こえるかもしれませんが、ソリーナのモチーフは「F音」使ってます。

つまり、ルートのF#音、7th音のE音と、ソリーナのF音という風に半音がふたつ続いているし、しかも7thコード上で長七の音をメロディにしたような音になっています。一応、これもアリです。

ただ、半音が2つ続くからと言って、コレはハンガリアン・マイナー・モードを導入したのではなくて、リディアンの6thを半音上げたAugmented 6thのモードを導入しております。

ハンガリアン・マイナーの2ndと7th音を半音下げた音列とも言えますが、あまりに脳幹ブッ直撃なドミナント・モーションは回避したかったので、毒ッ気混ぜながら毒を中和するような彩をどうしても添えたかったというワケです(笑)。


とりあえず今回重要なのは5小節目以降の後半の4小節。

この後半部では

Em9→Em9(♭5)→D△9→F#m△9

という4つのコードでモチーフを支えております。


どちらも似た感じを演出しておりますし、マイナー・メジャー7thが出現する小節において強烈な違和感を抱くことはおそらくないのではないかと思います。

ドミナント・モーションを嫌った結果のコード・プログレッションとも言えるでしょうが、モチーフの叙情性を利用すれば、リハーモナイズというのはいくらでも出来るものでありますが、強烈な違和感を生じることなくマイナー・メジャー7thをさりげなく導入するには、上のメロディ(モチーフ)の叙情性をハッキリ残しながら遊ぶのが手かと思います。

楽理的に言えば、先の金曜ナイトドラマで放映していたおバカドラマ「未来講師めぐる」のテーマ曲だって、Cマイナーの叙情性をトコトン利用しながら、実はトニック・マイナーに移る直前ではD♭音を導入して「D♭△9 (+5)」を導入している所に、作者の気概を感じるワケですね。


以前にもメロディック・マイナー・モードやらハンガリアン・マイナー・モードの導入やらで散々語ってきたので、メジャー7thコードにおける♭13thと+5thの違いはお判りだと思うんですが、「未来講師~」の方のそれは「F7/D♭」的使い方なので、その辺りは注意が必要です。

アッパーのドミナント感を希薄にしたいのであれば「未来講師~」を例に挙げれば「IV/II♭」という風な用い方をすれば希薄になるワケですが、このコード、スティーリー・ダンを好きな方ならすぐに気付くと思います。

「Negative Girl」のボーカルが入ってくるコードE/Cの使い方になるワケです。

「Negative Girl」のそれと「未来講師~」は明らかに使い方が違うので、和声的に同一であっても「未来講師~」の方はCマイナーの叙情性を利用したブルージィーな使い方で、「Negative Girl」は完全に別次元のモードとしての使い方というのはお判りになっていただけるか、と。


非チャーチ・モードを導入すると、どこかでオルタード・テンションを用いた7thコードの構成音とダブることがありますが、ドミナント7thの性格を回避した使い方でこうした毒ッ気を導入する、という方法もあるのだぞ、という比較を今回は示したというワケです。

まあ、近々マイナー・メジャー7thをさりげなく、且つ欲張ってふんだんに採り入れた曲を用意しているので、その時にでもまた詳しく語ろうかな、と思っております。


それにしてもウォルター・ベッカーの新譜の発売待ち遠しいですね。

配信の視聴曲しか聴いていないのに、最近はやたらと「Selfish Gene」がこだましております。「Century‘s End」と「Medical Science」を足したような曲で、手にしていない曲をここまで頭にこびりつかせた曲というのは初めての経験です(笑)。