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『THE BEATO BOOK 3.0』へ更新す [書評]

 昨年の11月でしたか、リック・ビアト氏の頒布する音楽理論書『THE BEATO BOOK 2.0』について語ったブログ記事を掲載したのは。それから1年と経たぬ2019年9月5日に、ビアト氏からのお知らせメールで『THE BEATO BOOK 3.0』更新の報せがあり、早速ダウンロードする事に。


 とはいえ完全に無料でダウンロードができるという訳でもなく、最低1米ドル以上のドネーションにてダウンロードが可能になるという物。折角の機会なので僭越乍ら私も1恒河沙USドルを惜しげも無く寄付する事に(嗤)。

The-Beato-Book-3.jpg


 ビアトさんのアナウンスに依れば変更点は次の通り。

●First new edition in 2 years!
●Updated with new examples
●Including Rick's specific figerings
●Guitar Tablature
●Corrections
●NOW 468 Pages!

との事。非常に大きく変わっているのは矢張り、TAB譜の追加と、それに伴うフィンガー・ポジション明記という所が大きな点であり、ギタリストからすればかなり親切な内容になったのではないかと確かに私自身感じます。

 加えて、図版の一部も視覚化が更に明示化されて分かりやすく矢印、大括弧、陰影などが施されていたりしています。旧2.0が変更となっている物を挙げると次の通り(ページ番号は2.0の物)。

【CHAPTER1】
p.10
p.48
p.66


【CHAPTER4】
p.326-343(+4pages)
p345-346(+4pages)
p.359-360
p.368
p.374
p.376
p.378-415(+3pages)
p.417-418
p.421-422
p.426
p.428-434

【CHAPTER5】
p.436-439
p.442-444
p.448-456
p.464


 この様に、2.0と比較してもページ数が増えているのは当然ですが、何よりチャプター4以降の譜例でTAB譜が充実した事もあり、従前と比しても更に緻密な内容になっております。

また、旧2.0での誤記であったp.352に於ける譜例Ex.182aでの3つ目のコードの構成音は下から [c・e・d・g・h] というヴォイシングに於けるアッパー部にGメジャー・トライアドがある様に示されていた所に付与されるコード表記が上声部のGメジャー・トライアドに釣られて「Gmaj9」という風に表されていた部分が、3.0ではきちんと「Cmaj9」に訂正されております。


 ビアト・ブックの内容の素晴らしさについては以前の私のブログ記事をお読みになっていただければあらためてお判りいただけるかと思いますが、今回こうした機会にあらためて語っておくとするならば、例えばクォータル・コード(四度和音)のコード・サフィックスの嵌当にしても不等四度の場合の表し方まで載っておりますし(例:ド・ファ・シという不等四度でのコード表記など)、add4コードを「sus4/3」という風に充てていたり工夫が見られる物です。

 加えて、オルタード・テンションで同度由来となる♭9thと♯9thの併存するコードや「maj7sus4」という例も載せているので非常に多岐に亘る良著である事に疑いの余地はありません。今回重ねて付言しておきますが、マイナー・オーギュメンテッド・コード、即ちマイナー・トライアドの5th音の増五度への変位という所もビアトさんは是認する立場を採っているので非常に好感が持てる所でもあります。こうした所に興味を抱き、従前の知られざるジャズ/ポピュラー音楽理論で忸怩たる思いを抱いていた方には、あらためてお勧めできる良著であります。

 あと、ビアトさん。折角3.0の表表紙はsaxe blueカラーに変更したのに裏表紙が赤いままなのは好いんでしょうかね!?(笑)副題も表表紙と裏表紙だと、裏表紙には「Jazz」が付与されているんですが……(笑)。まあ、瑣末事と受け止めておく事にしましょうかね、と。