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TBS系列ドラマ『流星ワゴン』BGMに用いられる微分音 [楽理]

 2015年1月から放送が開始されたTBS系列ドラマ『流星ワゴン』のBGMサントラに興味深い音があると私の知人が教えて呉れたので、取り敢えずは録画していた物をあらためて確認する事となった訳ですが、そこにはやはり微分音が使われていた、という訳です。


 私は着信音ビジネスで嘗ての着メロを制作していた時から、アナログ放送時代からもHDDレコーダーであらゆるテレビ番組を録画してきたという経験が今でも役に立っているのか(嗤笑)、今でも着信音などは無関係に大体の番組は録画されております。とはいえHDD容量との兼ね合いもあるので録らない物もあるんですが、録った後に観る or 観ないに関わらず大体のコンテンツは録画される様に配慮はしているのであります。

 そんな下地が功を奏するのが、今回、私の知人からの指摘で、『流星ワゴン』の中に微分音が使われているようだ、というモノ。番組をリアルタイム視聴をしていなかったものの、その指摘を受けてあらためて確認してみると、その微分音とやらは一発で判りました。確かに「空ろ」な卒倒感を伴う形而上学的&霊的な場面で使われているので、微分音とやらに無頓着な方でもなんとなく推察するに容易いかもしれません。

【2019年8月21日訂正済】
 譜面にすると次の様に表せるのですが、私は当初この譜例をTwitter上にて音程を間違えて投稿してしまったのですが(今は修正済)、今回の譜例の様に中立7度音程ではなく、夫々の音をオクターヴひっくり返して表記してしまい中立9度音程としてしまったため大恥をかくことになった訳ですが、今回の譜例の様に、正しくは四分音律に依る1083.3セントの音程というのが正しいものとなります(以前の投稿では低声部を四分音でのAセミフラットとしており、音程差を1050セントとしておりました事をお詫びします)

RyuseiWGN_SE.jpg


 因みに、『流星ワゴン』の音楽担当は千住明氏。深く首肯し乍ら納得するばかりです。


 扨て、こうした微分音を私のブログで取り上げるにあたって記憶に新しい所では酒井健治、ピエール・ブーレーズの「Doubles」や、Massacreの「Killing Time」でのフレッド・フリスが50セントずらしたピッチ・トランスポーザーを用いた物や、きゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」の一番最後のSEの微分音によるトーン・クラスターとかアロイス・ハーバ関連の話題、坂本龍一の「夜のガスパール」内で使われる四分音・六分音・八分音を用いた和音の登場する箇所、マイケル・ブレッカーに依るテナー・サキソフォンの四分音運指など、ブログ内検索をかけていただければお判りになるかと思いますが、一風変わった所では昨年(2014年)夏のラゾーナバーゲンのCMのパーカスがやはり大膽な微分音にてチューニングしていた事など記憶に新しいかと思います。


 恥かきついでに、このような小ネタでも語っておかないといけないと思ったのでついついこの様に語ったのでありますが、均斉的な微分音(勿論民族的なそれは除く)が取り扱われるようになってから120年以上でありますが、大完全音列が当初は四分音をも包含していた訳ですから24世紀以上も時を隔ててあらためてこうした音脈に魅力を感じているというのは疑いの余地はないのでありまして、こうした「新たな」音脈に対して無智であってはいけないと思う事頻りです。

 一般的にはまだまだ馴染みが薄かろう「微分音」の使用例を、テレビで実感できる良い機会だと思うので、興味のある方はお聴きになられる事を慫慂します。

【追記】

 この追記部分はTVドラマ第3話終了後に気が付いた事なので幾つか語っておこうと思います。

 先の流星ワゴンの微分音が使われるBGMのコンサート・ピッチは当初私は440Hzだと呟いておりましたが、あらためて能く聴くと、浅くコーラスというエフェクトがかかっておりそれが邪魔をしてしまったのですが実際には442Hzの様です(※A=441.4Hzが正確なピッチです)。

 例えばLogicProをお持ちの方は次の様に模倣されてみると判り易いかもしれません。
 
 チューニングは442Hz441.4Hzにアサインします。

 音源EFM1を2トラック分用意して、1つをg音を出す為に用い、もう一つをasより1単位四分音高い音を出す為として用います。EFM1ではデフォルトで入っているCalmingという音色名をどちらのトラックも使用し、この音色パラメータの「Carrier detune」だけ「0=ゼロ」にします。

 そして微分音用のトラックのみピッチベンド・データで四分音分高くする値を入力しておきます。おそらくEFM1のベンドレンジは±2の筈なので「2048」を入力します。

 2つのトラックに1つのステレオBusトラックをアサインします。ここにChorusを挿入し、パラメータのIntensityを33に、Balanceを100にして、先の2つのトラックのSend量を適宜弄って混ぜてみて下さい。フェードインのオートメーションを書けば完成です。多分大体は似た感じになると思いますのでお試しあれ。


【加筆分】
 文中は先述の通り、2019年8月21日に訂正しておきました。私が取り違えてしまった理由は、Logicを立ち上げてEXS24のデフォルトのサイン波発振を利用してピッチを探ったからに他ありません。その際、微小音程を四分音だと断定してしまいLogicの基準ピッチを早々にA=427.5Hzという風にA=440Hzよりも50セント低い設定をそのまま440Hzと気付かずに居たからであります。倍音の無いサイン波で鳴らしていた為、余計にピッチの変化を感じ取る事ができぬまま作業をしていたからでありましょう。

 盆休みに訪れた知人宅のレコーダーに流星ワゴンがあった為、それをDVDに焼いてもらってあらためて確認してみたら、当時の私のそれの精度が悪い事に気付き、今回あらためて訂正したという訳です。番組内SEのコンサート・ピッチはA=441.4Hzで制作されているようで、私が採譜したSEはト短調となる打楽器無しの静謐な音楽として、冒頭の微分音が接続する様に展開されておりました。

 奇しくも2019年9月下旬にはCS放送でのTBSチャンネルで流星ワゴンの放送が予定されているようなので、昨今は特にジェイコブ・コリアーの影響もあって微分音の話題が増えて来たようなので、私の過去のブログ記事本文に謬りを訂正しないままに放置していてはまずいだろうと思い、慌てて訂正したという訳です。4年半以上も恥を晒し続けた事に忸怩たる思いを抱いておりますが、今回訂正したそれはまず問題なかろうと思うので、機会がございましたらご確認のほどを。

 尚、微分音SE部分をIRCAMのThe Snailでスキャンした所、やはり低声部の微小音程が十二分音の5単位十二分音であるという事が円環の近傍からお判りになるかと思います。尚、The Snailのピッチの基準値は1ヘルツ単位でしか見る事ができないので、より細かなピッチの場合は円環のグリッドから近傍を探って判断する事になりますのでご注意ください。
RyuseiWGN_SnailScan.jpg