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ジョー・サンプル逝去 [クロスオーバー]

 そろそろジョー・サンプルのエレピのプレイやらでも取り上げようかと思っていた矢先に飛び込んできた訃報が、ジョー・サンプル逝去というニュース。ご冥福をお祈り申し上げます。80年代後半以後、ジョー・サンプルのプレイは屢々マルチ・オクターヴを示唆するアプローチが随所に見られ、マーカス・ミラーとの共演はもとより、ライヴ・アンダー・ザ・スカイなどでは際立ったマルチ・オクターヴ観のアプローチを見せていたモノでした。


 まあ、もっとも私が一番驚いているのは、自身のTwitterアカウントが2014年9月13日付で凍結になってしまっており、解除依頼を出してはいるものの未だ解除されていない状況を報告する意味もあってこのようにブログで語っているというワケなのでありますが、まあ小恥ずかしいコトしきりです(笑)。悪意はなくともブロックしていたり、中にはやっかみの報告を受けたり、辛辣なコメントに制裁を加えたい人も居たりするのかもしれませんし、不正アクセスを受けたのか、凍結の真意は今の所判りかねますが、幾多のアカウントを使いこなすほど器用な私ではありませんので、暫くはツイートが出来ない状況であるという事をとりあえずはお知らせしておこうかな、と思います。

 まあ、辛辣と悪辣の区別も付かなければ単に私が嘲弄しているだけの人間だと勘繰られてしまうかもしれませんが、他人の言(=ツイート)を借りて自分が直接関与していないように嘯きつつ嘲弄している様な愚か者など沢山居る所でこうして割を食うのは解せない所でもありますが、Twitterは私の理念で運営されている訳ではないので、今後はそうした規約に重々配慮しつつツイートせねばと思ってはおります。


 扨て、話を戻してジョー・サンプルの件。実は、つい先日のツイートでも「Supratonic Scale」というマルチ・オクターヴ・スケールの一例を出したばかりだったので、パーシケッティの話題を絡めつつ、ジョー・サンプル等のプレイを例に出すと判りやすくなるかな!?と企図していた所でこの訃報ですから驚いてしまったワケですね。私がブログに叙述する前の事なのでデスノートでも何でも無いのですが、私の胸中としてはそんな因果を苦々しく感じている次第でございます。


 とはいえ、過去に私がジョー・サンプルを話題にしていた事はそんなに多くなく、最も目立った所では、ジョー・サンプルのソロ・アルバム「Spellbound」収録のTake 6が唄う「U Turn」のバイトーナル・アプローチを語った位の事ですか。後はジョー・サンプルの「いびつな」タッチのアコースティック・ピアノのそれは、多くの人にとってはその聞き慣れないゴツゴツした不揃いなタッチのそれに厭気が差すという人も少なくない位(聴き馴れると逆に良くなったりする)なのですが、そうしたコメントを皮相的に捉えられてしまうと先の様に、辛辣を悪辣に捉えられてしまう様にもなってしまうかもしれません。

 悪意が無ければ何をやってもいいのか!?という事ではありません。そんな事が罷り通ってしまうのであれば、悪意を感じる事なく悪で在れば良い事になってしまいかねません(笑)。通り一遍の事も歪曲したくはない訳ですね。殊音楽に関しては特に。

 まあそういう訳で、ブログではバイトーナル、マルチオクターヴやらの話題を鏤めて行きたいと企図している所なので、一応ご報告まで。

<追記>

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 ジョー・サンプルのアルバムの中でもとりわけ私が好きな1枚というのは比較的後年の物で『Did You Feel That?』という、名義はジョー・サンプル&ザ・ソウル・コミッティーというユニットで出されている94年発売のアルバムであります。勿論、過去のブログでも取り上げている『Spellbound』やらも気に入っているアルバムなのですが、80年代以降のアルバムにマーカス・ミラーが関与していないアルバムである、というのがオススメのポイントとなる一つなのでもあります。

 無論、マーカス・ミラーが関与したアルバムが嫌いな訳ではありません。後年のクルセイダーズの『Healing The Wounds』(ヒーリング・ザ・ウーンズ)などはプージー・ベルをドラムに据え、F-Bassサウンドをふんだんに活かしたLate 80s-90sのマーカスの特徴的な抑えの利いたギラついたスラップ・サウンドを堪能できるものでもありますが、先の「Did You Feel That?」の発売は1994年。つまり、この頃はその後「UKソウル」などとインコグニートの人気を筆頭にアナクロニカリズムが台頭して、エレクトリック楽器黎明期のエレクトリック・ピアノや素朴なポリ数の少ないアナログ・シンセ・サウンドが仄かに鏤められた70年代風サウンドが流行した絶頂期であり、ジョー・サンプル自身もローズはおろかウーリッツァーやら多様なエレピ・サウンドを凝集させているのが先のアルバムなので、イナタい感じで創られているのであります。

 今年の夏頃にもワーナーさんから国内で先のアルバムや『Ashes To Ashes』など廉価にてリマスターされたばかりですから記憶に新しい方もおられるかもしれません。通常90s作品があのような往年のフュージョン/クロスオーバー系のリマスターに選出されるのはレア・ケースなのかもしれませんが、音自体がアナクロニカルであるためと作品のアグレッシヴな音ではないどこか懐かしさを感じる均衡の取れた物だからであるのでしょう。しかも先の廉価で発売されたタイトルというのは、CD自体がまだ汎く人口に膾炙していない時期にCDタイトル化されずに憂き目に遭ったアルバム(実際にはCD化されていても売り上げ的にも人々の認識度の低さの前に過小評価されるタイプ)の様な物が多く選出されており、非常に目利き(耳の肥えた)選出となっていたという所はもっと評価されるべきであろうと思います。

 そうでなければ、アーリー70sのザ・セクションの1stアルバムが再発される事もなかったでありましょうし、アナクロニカリズムが流行する前のジョン・パティトゥッチの1stアルバムというのも、その後の飾らないアナクロニカリズムを予感させる様な80年代のシンセ・サウンドに飲み込まれてしまいかねない時期の、抑えの効いた(=やたらとシンセ・サウンドで心を掴むかの様な陳腐な手法は削ぎ落としているという意)それというのも非常に良く理解された上でのリリース選出だったと思います。


 それらのアルバム選出の中にあった『Did You Feel That?』は、

スティーヴ・ガッド:Ds
フレディ・ワシントン:Bs
アーサー・アダムス:Gt
マイケル・ランドゥ:Gt
レニー・カストロ:Perc
オスカー・ブラッシュイヤー:Tp
ジョエル・ペスキン:Ts

という錚々たる面子。2曲目の往年の”ジャズ・ロック”の名曲「サイドワインダー」のカヴァーは原曲に見劣りしない程の出来であります。

 ※茲での「ジャズ・ロック」という名称は、プログレやジャズのクロスオーバー的な方面でブライアン・オーガーやRTF以後に用いられる類いのジャズ・ロックという呼称とは別の、1961年以後顕著になる、スウィングとは別のロックやラテンのビートという折衷が顕著になる時代に登場したビートを称する「ジャズ・ロック」という言葉なので注意。


 そんな中で私が本アルバムで最も慫慂したい曲が「The Last Buzz」のジョー・サンプルのローズ・ソロ部分。この裏コードのアプローチやメロディック・マイナー・モードをさりげなく忍ばせるアプローチはとても素晴らしいプレイであり、この1曲だけでもこのアルバムを買う価値があると言える程であります。



 94年というと、バーシアの『The Sweetest Illusion』、スウィング・アウト・シスターの『The Living Return』、ワークシャイの『Under the Influence』、マット・ビアンコの『Gran Via』やら、90年代を象徴する名アルバム輩出の年でもあります(個人的には94年というのは音楽的当たり年です)。

 そういう時代に於いて単なるアナクロニカリズムとは異なる真のノスタルジーに浸れる音をやってのけた、というのがジャズ/フュージョン界隈から仕掛けた一つの回答だったと思えるのが「Did You Feel That?」だったのだと信じてやみません。

 また、フレディ・ワシントンのベースなどは往年のパトリース・ラッシェンや近年のドナルド・フェイゲンでもご存知の方は多いかと思いますが、やはりパトリース・ラッシェンを私はオススメしたい所です。ワーナーさんがパトリース・ラッシェンのリマスターを出していたのも、こうした所の「目利き」から来る所でありましょう。