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春宵一刻 [プログレ]

 扨て、GGの2タイトル「フリー・ハンド」「インタヴュー」がCD+DVDとしてリリースされたワケですが、私の場合特にGG関連アイテムとなると間違いなくアイテムを揃えるので(笑)、内容の変更部分とか頓着することなく買い漁っていたりするので、目ン玉ひんむくような大きな驚きはなかろうとタカをくくりながらいつものように再発モノを入手していたワケですが、まあしかし、クアドラフォニックという資産、つまり4チャンネル・ステレオとして一部では知られるそれにはあらためて驚かされることしきりでして、今回の再発作品には感慨無量でございました。故にブログ記事タイトルはそうした私の気持ちを四字熟語とクアドラフォニックと引っ掛けているワケです(笑)。


 4チャンネル・ステレオって、まあ私は存在こそは知ってはいてもそれを実際に聴いたことはありませんでした。それこそLカセットの存在に等しい、みたいな(笑)。
 嘗ては、私が物心付いた辺りのカーステは8トラだったモンですが、4チャンネル・ステレオには縁がなかった私です。友人にはビッチェズ・ブリューのクアドラフォニック盤を所有していたのが居たと思える程度で、私自身4チャンネル・ステレオにはそれほど興味は無かったので結構な具合でスルーしていたスタンスが現在まで続いておりました(笑)。だって、「耳2つしか無ぇのに多チャンネルって意味あんのか!?」という私の感覚。正直言ってコレはDVD時代においても私のサラウンドの世界とかもこんな意識です。

 しかし乍ら、自分が聴き慣れた音源を別のミックスで聴くことができるのは是亦別の興味があるモノでして、多チャンネルとはいえ録音時代が古かった頃など4トラックですら多いと言われ8トラックなんぞ話題をかっさらっていたような時期の録音物が、レコードやCDとは違った形式として耳に届くのはファンにとっては垂涎モノだと思うんですな。おそらくはGGのみならずピンク・フロイドやクリムゾン・キングの宮殿やら、その手の多チャンネル・ミックスに食指を動かされた方は多いのではないかと思います。

 今回のGGの再発に付加されるDVDは、私は当初DVD Audioフォーマットだとばかり思っていたんですが、オフィシャル・コメントとか読んでもDTSの色んなフォーマットを載せてるし、多くのマルチ・チャンネルからのソース起因として2チャンネルにバウンスしたモノなんだろーなーと勝手に創造を張り巡らせておりましたが手に入れてからようやく気付きました。「映像無し」のDVDフォーマットなのだ、と(笑)。それをツイッターで呟いてはおりましたけど、呟いた後はほぼこの「DVD」に時間を取られてしまいまして、私は完全に没頭して陶酔しきっているワケであります(笑)。


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 特に私が今回食い付いちゃってるのがAC3での音像です。長らくGGを聴いてきた私にはAC3のミックスはとても新鮮でありまして、Quad Mix DTS 96/24の方も2チャンネルmixをさらに磨きをかけたような是亦レコード&CDを聴き慣れた耳には自然にさらに上のシーンを引っ提げてきたかのような極上でシルキーな音には声を失いました(笑)。

 いやぁしかし、AC3のTalybontやDesignには鳥肌立ちまくりで、今こうして文章起こしている時に思い出してもまーだトリハダ起ちますわ(笑)。


 こうしてQuad Mixを掘り起こすとなるとヴァーティゴ時代のは存在しなかったのか!?とか興味が沸くのでありますが、おそらくヴァーティゴ時代だとまたマスターの扱いが厄介になりそうな気がするのでどうなるかは判りませんが、今回のようなミックスを期待できるなら当時クアドラフォニック用のミックスが無くともDVDで出してみても良いのではないかと思いました。特にKnotsを聴きたいと思いましたからねー(笑)。

 ヴァーティゴ時代でイイ仕事をしているのは「Acquiring The Taste」の曲冒頭のマスター起因によるピッチのエラーをリサンプル編集にて修正しているのがVertigoの2CDおよびiTunes Storeでも聴けると思いますが、この修正版をアルバムの方と置き換えはされていないのが実情です。

 「大将、エエ趣味してますやん♪」を英訳すると「Hey, you've got the acquiring the taste」とかになるんでしょうが、こうしたエエ趣味を、も少しDVD行き渡った時代にも配慮した発売ってあってもイイのではないかと思っているんですよ。

 まあライナーノーツにも書かれているように、新規のGGファンは少ないかもしれません。でも、これから発掘して聴く若い世代には確かにネットいうメディアがあるにせよ、今回の写真では誰が誰かも判らないし、ケリーがたまたまスネア持って座っているからといってドラマーだと誤解してほしくない写真があったりするんで、写真に配慮して誰彼を印字していないのは判りますが、そうした細かなやさしさ日本語版のライナーノーツに新参者に向けて載せてあげて欲しかったな、と思います。まあ、プログレ界隈なんぞ自分で情報漁ってナンボの所があるんで、手取り足取りやってたらロクなプログレ中毒者にならねえんだよ!!とお叱りを受けてしまうかもしれないのでこの辺でとどめておこうとは思いますが(笑)、因みにドラムのジョン・ウェザースは、奥さんとブードゥー教ドップリ時代(Magick時代)のグラハム・ボンドに在籍していたのでありまして、これはヴァーティゴ繋がりからの人脈でありましょう。

 私個人はジョン・ウェザースのビートの利いたパンチのあるノリはかなり好きな方ですが、前任のマルコム・マルティモアも結構好きだったりします。マルコムの方は例えるなら山木秀夫とかトニー・ウィリアムスとかジャック・ディジョネットが好きなタイプに受けそうな空間系のドラマーなんで、ビートを要求される方面からは受けが悪かったりするするんですが、私は両者とも結構好きです。


 でまあ、今回の作品はこうしてQuadミックスの資産を活用しているワケですが大正解だと思います。特にGGの場合は高次に旋律を「絡めて」おりますから、色んな分離をしてくれることでどのように各パートが「紡がれて」いるかが本当によく判ると思うんですよ。そういう意味でもカウンターポイント(=対位法)を用いている曲には特に注力して聴いていただきたいと思います。このDVDを手に入れるだけでも十分価値があります。値段のそれはCD単体と比較すれば決して安くはありませんけど、その価値は十二分にあります。楽曲構造を知りたかったらDVDの方で吟味された方が理解が早いかもしれません。


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 対位法の話題を出したのでついでに語っておくと、私のブログではYMO周辺の話題もたまに出るコトからそれ系の情報を頼りに来られている方も結構いらっしゃるようなので今回坂本龍一についても語りますが、坂本龍一のソロ・アルバムに「戦メリ」とそれのピアノ版の「Coda」ってぇのがリリースされておりまして、その両者に入っている楽曲で「Germination (発芽)」という曲があります。

 この曲のBパターンは1拍3連の符割りを意識しないといけないので、ある意味ではGGの「His Last Voyage」のビート・チェンジや「Design」の9/8拍子であり乍ら「6」を意識しなくてはならない妙味などに投影させることができるでしょう。
 さらに付け加えるならGGの対位法のそれは異なる調域を多数積み上げるポリトーナリティーを演出しておりますが、坂本龍一の対位法のそれは同一の調域乍らも先行句と追行句という彩りだけでも対位的な演出とはこれほどまでに彩りを増すのだということをあらためて知っておいてほしいんですな。

 それに加え、戦メリのアルバム全体は薄くハム・ノイズが乗っているのでこういうところからも古いデジタル録音とGGの再発関連の新しいデジタル・サウンドの違いというものがあらためてよく理解できることかと思います。

また、坂本龍一の符割りの使い分けは別にGGに準えているだのと勝手に思っていただきたくはなく、拍子や玉の構造やら対位法というのは「2」と「3」の使い分けのメリハリが重要だということをあらためて知っておくとイイことがあるかもしれません(笑)。