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Got the acquiring the taste!? ~ジェントル・ジャイアント~ [プログレ]

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 ジェントル・ジャイアント(以下GG)の2ndアルバムには「Acquiring The Taste」というタイトルがたまたま存在しているのですが、そのアルバムについて語るワケではありませんがタイトルにひっかけてはおります。そもそもacquiring the tasteというのは「至高の嗜み」とかそういった意味がありますが、イディオム(慣用句)化されているので、もはやそれは「いい趣味」とか「良い好み」という意味に使われます。ご存知とは思いますが老婆心乍ら冒頭から語ってしまいました。

 扨て、GGの先の再発2タイトル発売を記念して、GGの少々マニアックな楽しみ方というのを語ってみようかなと思いましてハナシを進めていこうかな、と。今でこそプログレ界の雄のひとつという風に認知されてはおりますが、まあそれこそ四半世紀位前のCD普及率が未成熟な頃というのはあまり知られておらず、それこそ知る人ぞ知る系のプログレ・バンドのひとつであったのでありました。


 CDが普及し始めGGの各タイトルもCD化されていくコトとなったワケですが、おそらくや購買層は限られるでしょうからそういう人達に常に食い付いて貰うための策でもあったのかそれともアーティスト・サイドと制作サイドとの意思疎通が希薄で結果的にCD化に関して憂き目に遭うのがGGの宿命だったかどうかは定かではありませんが、兎に角GGのアルバムがCD化される時というのはファン心理をくすぐる様なエラーだのテイク違いの音が入っていたり、マスターそのものが違ったりミキシングは違うだのと、そりゃあもう多岐に渡るモノでありまして(笑)、これがあるからGGのアルバム収集は面白い!!と数十年食い付いちゃっている「爺々」のひとりが私なのであります(笑)。


 今回の再発を機にあらためて語ることにしますが、例えばアルバム「フリー・ハンド」も、CD化に伴う諸問題は多岐に渡りまして(笑)、この手の話題はGGのオフィシャル・サイトに詳しいワケですが、もっと判り易く左近治が語るだけでも次の様なモノがあるんですな。
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「Free Hand」CDタイム0:58辺りのCEMA盤では次の様な符割のゲイリー・グリーンのプレーは聴こえて来ません(笑)。こういうテイク違いが「いけしゃあしゃあ」とリリースされていたというのもスゴイ事なんですが、私はおそらくそれらは「仕込み」だったと信じております(笑)。仮にそうでなかったとしても額面通りにその価値の高さを堪能すればイイのですから、GG好きにとってみれば何も文句はありません(笑)。


 他にもCEMA盤では、最後の曲「Mobile」の一番最後のエンディング以降にドラムのオカズ(フロアとキックの)が割愛されているんで結果的に短くなってるワケですよ(笑)。CEMA盤でも「EMI JAX盤」と「ESK1盤」が存在しまして「EMI JAX盤」は多く再版されているんですが、どちらもCD品番は「CDL-57338」なので注意が必要です。「EMI JAX盤」の良さは僅かにアルバムの前面が広い領域が印刷されている事です。本の僅かですけどね(笑)。CD背部分にONE WAYの黒いアイコンが印刷されているのは大概EMI JAX盤でしょう。但し、CDディスク盤の素材が後期タイプでポリカーボネート素材そのものが薄くなっていて耐久度においては「ESK1盤」が上回るでしょう。いずれにしてもCEMA盤(何れもONE WAY盤)の中古を入手する際は、ディスクのリム番から印刷領域やらCD背部分を全てチェックしないといけません。リム番の見方は次の写真の様に刻印されているので、CD盤面中心付近を凝視していただければお判りになりやすいかと思います。前オーナーが頓着することなく品質を見かけだけ良くするためにアレコレ入れ替えて売却していたりする可能性もあるので注意が必要です。MSI盤あるいはテラピン盤なら間違いありませんがUKジャケットなので、USジャケットが欲しい場合(ご存知とは思いますがUSジャケとUKジャケは手が違います)はCEMA盤を手に入れる必要がありますのでご注意を!
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 でまあ、アルバム「Free Hand」の各リリース版のCDタイムだけを見ても下記の様に全然違うんです(笑)。

EMI JAX
5:30
5:30
6:16
5:10
6:27
2:44
4:47


Terrapin
5:34
5:41
6:16
5:03
6:27
2:40
4:59


BGO 2in1
5:33
5:44
6:14
5:08
6:27
2:43
5:03 (ghost Drums after fill at the end of track)


2012 remaster
5:34
5:43
6:13
5:08
6:27
2:42
5:00


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 扨て、「Mobile」の最後のドラムのオカズはCEMA盤以外はきちんと収録されておりますし、「Free Hand」の先のゲイリー・グリーンのプレイも入っておりますが、BGO盤から「Free Hand」と「Interview」の2in1でリリースされていた「Free Hand」の方は、是亦マニア心をくすぐってくれるような「編集」が施されておりまして、結構垂涎モノなんです(笑)。
 

 BGO盤での「フリー・ハンド」の最後のトラック「Mobile」のケツ部分、懸案となるドラムのオカズはきちんと入っています。その後には聴いたことも無い脈絡の無い様なタムの音が数回聴こえて、なぜか「インタヴュー」のイントロSEが漏れて来るかのように入って、ようやく「Mobile」としてのトラックを終えて、次の2in1 CDとしてのインタヴューのアルバム側の最初の曲「Interview」がオリジナル通り録音されているという、「仕込みでしょ、コレ!?」と云わんばかりの編集がさりげなく鏤められておりましてですね(笑)、GGマニアとしてはこういう僅かな違いを見過ごすコトなく発見するために手に入れるんですなー(苦笑)。こーゆーのがあるから、マイルスやザッパやクリムゾン並にCDが増えてしまうワケですね(笑)。

 
 まあ、こういう方面でもGGのアルバム収集の楽しみ方というのもありますが、その手の話題ばかりでなくやっぱりアルバム内部について語りたいモノでして、特にクリサリス期のレイ・シャルマンのベースの音は私にとって理想的な音でして、PB(=プレシジョン・ベース)のピック弾きというスタイルでのこのようなサウンド・キャラクターは21世紀になった現在でも通用するほどの音だと信じてやみません。若干軽く歪んでいるのが心憎いんですね。凄く綺麗なサチュレーション。

 アルバム「フリー・ハンド」の収録曲の中で、ベースの音が特に際立って良いのが「His Last Voyage」と「Mobile」なんです。その中でも「Mobile」の偶数次倍音の出方とチョイ歪み感(言われなければそれが歪みとは認識できない位の)というのが絶妙でして、この年代でこれほどまでにクリアに録音されているベースの音は他の音楽を探してもそうそうお目にかかるコトはできません。おそらくレイ・シャルマン本人はベースの音作りを完全に確立したのでしょうが、ライヴ盤であるにも拘らずスタジオ・クオリティ、ノリを加味すればそれ以上とも評される名盤の一つと名高い「Playing The Fool」においてもレイのこのベースの音はしっかりクッキリと録音されているのだから恐れ入ります。時代を考えるとライヴ盤となれば音がけっこう小火けるのが多いのにも拘らず、このクオリティが残っているのはスゴイです。

 私が感じるライヴ盤の酷いアルバム作品の一例は、マイケル・シェンカー・グループの「Captain Nemo」が収録されているアレ。ああいうライヴ盤を聴いてしまうと「Playing The Fool」って神懸かり的存在であると思えるんですな。

 ハナシは逸れますがこの頃のPBを弾いていたベーシストで私が参考にしていたのはトニー・レヴィン、フレディ・ワシントン・ウィル・リー、アンソニー・ジャクソン、デヴィッド・ハンゲイトでありまして、特にピック弾きのアンソニー・ジャクソンの音やピッキングはレイ・シャルマンと共にお手本だったのであります。ケン・スミスの元から離れたヴィニー・フォデラが独立したのが確か81年頃だったと思いますので、おそらくはアンソニー・ジャクソンはそれまではPBを弾いていたと思われ、それよりも5年以上も前の時代にこれほどクリアな音とテクニックは恐れ入るばかりです。

 PBに限らずベースってぇのは、歪みが足される事で元の一番波形が緩やかであろう基音のシェイプがギラ付いてしまうコトが原因で、波形に「くびれ」がアチコチに出来ることとなり、それは基音のシェイプが変わってしまうコトを意味します。だから極端に倍音を稼いだ歪みにしちゃうと、アレほど図太いベースの音が「ヤセた」音に変質してしまうワケですが、偶数次倍音が巧い具合に歪んでくれる事で奇数次がそれほど影響を及ぼさず「シェイプ」を維持できるワケです。ベースの歪みってそれが大事なので場合によってはパラって(=並列)にしてHPF側の領域を歪ませたりするワケですな。

 このフィルターの発想を利用し乍ら音作りをするワケですが、性能の全く異なるコンデンサを利用して周波数帯を抽出した場合(EQとして)、蓄電に伴う電気信号の遅延がマイクロ秒レベルで変わることで帯域毎(異なる回路との間)で遅延が生じて位相が変わります。その位相のズレ方が丁度キモチいい具合に奇数次とズレていたりすると、逆に相殺される音と強調される音が巧い具合に混ざって出力されるコトとなります。つまり、音作りとはこうした位相差も含めて、そこにEQや歪み感、その先にベース本来のキャラクターや弦の音やピッキングのキャラクターが加味されるワケでして、これらのファクターは総じて絶妙だと言いたいワケです。


 特にクリサリス期のレイの音は、このフリー・ハンドの後の「インタヴュー」では更に歪みは増すのですが、基音はしっかり残っていて、これほどクリアで綺麗なサチュレーションを利かせた音はそうそう他では聴く事ができません。カンタベリー系やレコメン系人脈のベーシストはどれも良い音を出してくれる人ばかりなんですが、そういう音と比較しても尚、レイの音は絶妙です。私の教科書ですね。


 次回はレイ・シャルマンの音の話題をさらに続けて、プレイ面やらでも興味深い事を語って行こうと思います。