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Pimp左近治、今宵も亦慫慂す。 [楽理]

扨て、今回も亦、あらためてチェレプニン音階について語って行こうと思うワケですが、以前に詳しく語ったコトもありまして、チェレプニン音階はどういう背景から構築されているのか!?というコトも含めてムービーまで作っていたんですが、いかんせんペンタトニックの調域が判りづらいコトに加え左近治の回りくどい解説に理解が到底及ばないという指摘も散々頂いていたのもあってあらためて語るコトにしたんですわ(笑)。その時の解説では判りづらかった部分も今回はさらに咀嚼して語って行くつもりですけどね(笑)。


チェレプニン音階を語る上で避けて通れないのはペンタトニック・スケールですわ。つまり五音音階。


バルトークは世俗的な音の方向、つまり民族的な響きを追求したワケですがそれはチェレプニンとて同様です。無論、それ以前に半音階の追求という上で世俗的な音と共通する音を指向する音楽家は他にも存在していたワケですね。最右翼がリストとなるのではないかと思います。ショパンも同様です。

バルトークはペンタトニック・スケールについては如何なる調性にも属さないという風に定義しているのも興味深い所でありまして、調性を持たない曖昧なモノとして扱っているワケであります。五音音階というのはそれだけで「調性」を感じ取る位に情緒は豊かであるように聴こえますが、実際には調性としては不完全であり、その不完全な姿こそが「多様な」世界を見せてくれる「発展可能」な姿であるとも言えるワケであります。

誰もが其処に調的重心を求めるであろう、よくある姿としての五音音階というのも、実はほんの少し「角度を変えた」使い方をすることで色んな方向に調的にぶら下がろうとするモノです。ヘプタトニック(=七音音階)、特にチャーチ・モードの世界を例に挙げれば、ペンタトニックの「角度を変えた」姿とは変格旋法のそれと同様でして、終始音の扱いを変えるだけでもペンタトニックの調的な重心というものは全く異なる性格を見せるモノであります。


琉球音階という出自の異なるペンタトニック・スケールを除けば、ペンタトニックというものは、五度音程として共鳴を求めていった姿で構築されたモノであり、結果的に五度音程の累乗から得られた姿がペンタトニックの姿なのでありますな。次の動画を見ていただければ、各ペンタトニックの音の構成は、4つの完全五度の累乗で得られる「五声体」から成立しており、調域が完全五度ずつずれていきながら結果的に5組のペンタトニック・スケールが得られ、この5組のペンタトニックを全て網羅した音階から近似的なチェレプニン音階の姿が見えてきて、元々内包する増三和音の「触手」に音が上下に寄り添うように集まり、チェレプニン音階音階が形成されるプロセスだというコトは過去にも語った通りです。


ペンタトニックが完全五度の共鳴を求めて得られているというコトは興味深くもあり亦疑いの余地もない至極全うな見解だと思うワケであります。


5pentatonic_scales.jpg先の5組のペンタトニック・スケールでそれぞれ共通する音は「E音」となります。一応C音を主音とする音階として話を進めてはいるのですが、共通する音はE音となります。また、E音を必ず含む完全五度累積を伴う型として成立するペンタトニック・スケールは次の様になり、この辺りは濱瀬元彦著の「ブルーノートと調性」にも詳しいのでそちらを確認していただくとして、チェレプニン音階というのは5組のペンタトニックから組成されている音から端を発している物であっても、ただ単にその時点ではチェレプニン音階を形成しているモノではなく、そこから派生した(これについてはかなり後に語る予定)この音階なりの情緒は備えているモノだというコトはお忘れなく。

つい先日もチェレプニン音階をモードとする複調の発想は語ったばかりですので、決して縁遠いモノではないというコトをあらためて認識していただいた上での再確認となるワケですが、バルトーク曰く、ペンタトニックという「不完全」な音階はそれ自身に調的な重心はなく曖昧なモノである、という風に述べております。これに関しても疑いもありませんが、調的な彩りの「確定」とはいかないまでも、ペンタトニックというのはそれなりの深みのある「情緒」というのは充分に発揮する音階でもあります。


調的な曖昧さと近親的な調を行き交うように曲を作ることで、曲をマクロ的に見れば広く拡大された音を使っているようにも捉えるコトは可能です。以前にも例に挙げたサティの「Je Te Veux」の4つの調を転調する様などまさに典型的な例ではありますが、転調として用いるのではなく、拡大された音をチェレプニン音階のように用いている曲想ではないのは明らかであります。


チェレプニン音階の組成プロセスは確かに5組のペンタトニックから端を発しているモノですが、最小のヘプタトニックとしての構成として見立てれば、チェレプニン音階形成前のペンタトニックの合成(五種類のペンタトニックの合成)としての先の例を見た場合、ト長調とイ長調が併存しているバイトーナル(=複調)という風に見るコトも可能であります。


ト長調とイ長調の音程関係が九度/二度であるコトと、Cチェレプニンの近似的な作用点ともいえる起点の「調域」がハ長調ではなくト長調であるコトに注目です。ハ長調を起点とした場合自ずとF音を包含させることとなり、今回の例だと「調域」がさらに拡大してしまうコトになります。ト長調の調域に留めながらC音に起点を求めているのは「完全音程の出自」というコトを厳格に扱っているからであります。この「完全音程の扱い」についてはあらためて詳しく語る予定です(笑)。


それら2つの調性が上下どちらに主従関係があるのか?というコトは扨て置き(どちらかに隷属支配させる方法もあれば主従関係も無い方法いずれも構築可能)、近しい共鳴的な音程関係によって併存しているというコトはあらためて確認できるかと思いますが、Cから完全五度累積を求めていった場合、チェレプニン音階に変化する前の五種類のペンタトニックの合成の「最果て」であるGis音を得た時、ここで増三和音としての体を初めて得るコトとなり、ハ長調の平行短調であるA moll(イ短調)の三度であるIIIb augつまり、Caugの体を「ようやく」得るコトとなるワケです。


この増三和音の体を得るまでの過程で、ハ長調の調域外の音は他にCis、Fisをも得ており、対蹠点であるF#と異名同音で短九度となるDes(=Cis)音を得ることも同時に注目していただきたい所です。


扨て、チェレプニン音階をモードとする旋法はメシアンの移調の限られた旋法第3番としても有名でありますが、つい最近左近治がそれを引き合いに出した例がありましたが、アレはどのようにしてチェレプニンを導いたのか今一度思い起こしていただきたいと思います。


余談ですが、リディアン・クロマティック・コンセプトという理論は完全五度を一方向(上行)に累乗させていく理論から端を発しております。まあそれがリディアンの調域をも超えてヘプタトニックの領域も超えていくと、やがては半音階に近づいていくようになります。そうして得られる共鳴的な音並びに11 toneスケールやリディアン・クロマティックという独特の音階を得るコトになりますが、左近治が時々云うところの音階11ノート・スケールというのはひとつの全音と10コの半音からなら「ポリモーダル」な視点で生ずる11音のことですのでこの辺りで混同されてしまうようでは先が思いやられてしまいかねないので注意が必要です(笑)。