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半音の分かち合い (7) [楽理]

扨て、前回の記事の最後で例として挙げてみた楽節とやらを今一度確認してみることとしましょう。


例として挙げたモチーフはそれほど好例としてのモチーフにもならないかもしれません(笑)。リズムが単純であれば音形そのものはもっと単純なカタチとなるワケですからモチーフとしてはあまり良いモノではないかもしれません(笑)。しかし、同じ音を用いてもリズムや音高が違うだけで名曲が生まれるのかもしれません(笑)。

まあ、モチーフという動機をもっと大切に扱わなくてはならないのが音楽の真髄なワケですが、今回は手っ取り早くハイブリッドな響きを提示したいワケでして、それほど重要には扱っていないコトを先に語っておきます(笑)。


扨て、前回の楽節に与えたもうひとつの世界が、背景の和声となる単純な構成の和音ですね。前回の例でとりあえず感じていただけるコトは、背景に与える和声に対しての旋律が少々縁遠い所の分散和音を想起し得るモチーフにて例を挙げていたというコトはすぐにお判りいただけたコトでありましょう。最後の小節だけなぜか短三和音を与えておりましたね。まずはハイブリッド・コードにおいて私が下声部において「よほどの事が無い限り」配置しない理由を更に語ることとしましょうか。


幾つかの理由がありますが今回最も重要な点は、これまでも語っている通り短和音はそれそのものの構造が下方に牽引力を伴うモノなので、下声部に短和音を置いたとしても更に遠方の下方に音が拡大する可能性を秘めてしまっているモノと考えられます。無論、作者が短和音のルートそのものがバスの最下音だと想起していたとしても、です。つまる所短和音の下方への牽引力がさらに音を拡張させてしまう所へ根音バスを求めてしまおうとしかねない。そういう所を配慮せねばならないであろう、というコトです。

私の場合は、「そこに短和音の下声部を生じている」際、前後の楽節からソコに対して「反行」するような形、コレは過去にも語ったと思いますが、例えばソコの前の小節において、「長・短」や「増・減」などの形が反行し合うような形、もしくは根音バスをそれ以上求めないように上声部が下声部に対して全音/半音違いの音を持つなどしてクサビを打つかのようにして確定させてしまう方法等があるかと思います。無論、その「クサビを打つ」というのも、その局面の前の楽節そのものが重要であって、その暗喩こそがクサビとなるコトが重要だと私は感じております。つまりアンティシペーションですね。


というワケで、とりあえず今回はハイブリッドな和声の下声部においての短和音が生ずるという例を挙げたワケですが、場合によってはココでドゥアモルの和声やら導いたりしても面白いかもしれません。つまり、下声部が「Em」であるならば上声部でAb△の楽節を導入したりするのもアリだと思います。


でまあ、前回の形を「基本」とするカタチだとしましょう。今回のサンプルは前回の楽節に対して更に「他の」背景と成る和声を発展的に導入したモノでして、そうすることでより一層「ハイブリッド」な世界をお判りいただけるのではないかと思うのであります。


で、早速譜例とサンプルを用意したので確認してもらうコトとしましょう。各コードには番号が振ってありますので、その番号を参考にしながら語ることとします。



SampleMay2011.jpg
1番の形は、C6/Dと標記したセカンド・ベースの形です。私がこのコードのセカンド・ベースとしての形に拘るのは色んな理由があるんですが、場合によっては、まあ英語で言えば「also known as~」の形として「Am7/D」という表記を与えるコトがあるかもしれません。

一般的にはコチラの表記がもしかすると多いかもしれませんが、短和音はそれ自体が下方の牽引力を持って根音バスを求めようとしているのに、上声部では遠い完全四度関係の音であったとしてもD音とA音の間に音を作りかねない、結果的にマイナー11thの形を求めようとするのか(F音)、9thベースの形としての九度違いの「C△/D△」の音を求めようとするのか(F#音)、というコトを招きかねず、結果的にそのいずれでも無い音をニュートラルな形として求めるのであれば、「Am7/D」という形は極力使いたくは無い、むしろ上声部がメジャー6thでのセカンド・ベースの体が自然なのだ!と常に頑なまでに堅持しているからこそこーゆー形になるんですな。故に私は「Am7/D」という風に見られる上声部のマイナー・コードでの11th音をベースに持って来る使い方は他者の作品を便宜的に例として扱った事以外に用いたコトはありません(笑)。というワケで今回もポリシー貫くとします。


2番の形は上声部に「C△」のモチーフを追いやって(笑)、下声部に「Bb△」を配置するワケです。9thベース7thベース的な形ですね。
※まーたやらかしてしまったようですね、私は(笑)。2ndベースのハナシをしている直後なのに9thベースとか言っちゃって(笑)。そもそもそれだと同じやん(笑)。ココでは正しくは7thベースです。つまり、上声部の7th音をベースとする使い方という事ですので混同せぬようご理解をいただきたいと思います。


3番の形は、ほとんど2番の上と下が入れ替わっているなモンですが、この対比的な動きこそが音楽としては大切なメリハリのひとつだと思います。反行形というのも結果的に「メリハリ」なワケですから、ハイブリッドな形式においても上と下とのメリとハリというのをより鮮明にしている意図があります。

しかしコレは上声部がメジャー7thのセカンド・ベースの形にとどめておりまして、下声部はあくまでも「単音」のベースですね。

bs26t.jpg
私ほどの世代ではブラッド・スウェット&ティアーズ(BS&T)の2ndアルバム収録の「God Bless The Child」のAテーマのコードに、このメジャー7thのセカンド・ベースの形を知ったという代表曲のひとつとして取り上げられるコトの多いモノなんですが、今ではどうでしょう。どういう人達が例に挙がるのか!?もしかするとドリカムとか、ドリカムですら古く感じてしまう人達が今音楽やってるワケですからね。その辺興味深いトコロではあります、ハイ(笑)。


4番の形は、もうココんトコ散々やって来てるんでお判りですね。Ebペレアスの体ですわ。2番でも六声のハイブリッドだったんですが、そのカタチからこのペレアスまでハイブリッド形式だとチョットばっかし「どギツイ」感じがしたんで(笑)こういう風にしてみたんですが、正直な話、脈絡も薄い単純な楽節に対して皮相的にペレアスの和声を使っているだけの例でもあるんで、この場面はキレイにペレアスが反映されておりません(笑)。その辺はチョット自分でも反省してますんで、後にペレアスを巧く響かせようかなと少々肉付けやっつけで繰り広げていくコトにします(笑)。


扨て、5番のカタチ。ある意味ではコレこそがハイブリッドな和声としての真骨頂とでも言うべき姿なのかもしれません(笑)。下声部がEmで上声部がDaugという増三和音ですからね(笑)。便宜的な表記としては他に「Em9(+11)」という風に表すコトもあるかと思います。それが適切だったとしても、今回はハイブリッド形式のカタチとして表記します。まあマイナー9thコードにシャープ11thのカタチはかなり少ないシーンではあるかと思いますけど、あるにはあります。


C_Enigma.jpg
扨て、6番のカタチ。実はコレ、Cエニグマ・スケールからH音を除く音で作られた六声の和声を上と下に分けて、上声部はEaug、下声部はF#△という風にしております。先の譜例とは別にもうひとつの譜例を用意しましたので和声構造を今一度ご確認いただけると有難いですな。

kamakiriad.jpg
カンの鋭い方ならもうお気付きかもしれません。コレ、ドナルド・フェイゲンの2ndアルバム「Kamakiriad」収録の「Tomorrow's Girls」の冒頭のコードがコレを呼び込んでいる世界なんですよ。奇しくも移調も必要の無い音にしちまって左近治はなんとイヤラシイ奴なんでしょう!?(笑)。「Tomorrow's Girls」の冒頭がヴェルディの謎の音階を示唆する世界だというコトもあまり広くは知られていないかと思いますので今回ついでに語ってしまいますけどね、別に私はベッカー御大ばかり礼賛しているワケではないんですよ(笑)。でも「Tomorrow's Girls」の方は六声もガメた響きではなく六声を巧いコト篩い分けした和声のモチーフにしているワケですので、その辺の違いなど言わなくても判るとは思いますが念の為に語っておきました(笑)。「Tomorrow's Girls」の凄い所は、このモードから生じるダイアトニック・コードを用いるキーの想起ですね。その当てはめ方が絶妙です。


扨て、7番目はもういっちょペレアスを用いているワケですね。先ほどのペレアスよりもコチラの方が今回のサンプルにおいては情緒をより深く堪能できるのではないかと思います。

そして8番目は、実は6番目で生じているCエニグマの全音階的総和音です。つまり、全部の音を使った和声ってぇこってす。それを今回コード表記するとこんな風になっちゃうワケですが、属二十三の和音の省略形が暗喩となっているなんとも実に想起しにくい便宜的なコード表記なワケであります(笑)。ですが、これまで左近治がハイパーな世界を語っている通りにご理解いただければ、もうこの手の表記に戸惑う方はいないのではないでしょうか!?(笑)。


m_C_Microtonal.jpg
いわゆる一般的な音楽の世界観とは少々違う角度からのアプローチではあるものの、これらは一般的な世界においてもさりげなく使えるモノでもあります。でまあ、さりげなく使ってしまった微分音を生じさせた変な和音も今回紹介しちゃいますので、そのサンプルと譜例もお試しくださればな、と。この辺についても追々語る事になるかと思います。