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半音の分かち合い (6) [楽理]

先の、完全四度累積による四声のカタチ「D - G - C - F」ですが、D音から見ればF音に対して短三度を得ています。なんとなくこの情緒が短和音的な、それこそ短和音の下方に求める牽引力を既にジンワリと感じるのかもしれませんが、先述の通り、この完全四度累積を二組の二度音程すなわち「CとD」に対して四度/五度に位置するもう一組の「FとG」という風に視点を変えて見てみましょう。


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仮にココで「更にもう一つの」二度音程のペアを配置するとしたらどういう構造がよろしいでしょうかね? 「EとF#」を加えた方がイイでしょうか?それとも「BbとEb」?
いやいや「AとB」?まあ、色々考えることができますよ(笑)。全音互いに生じた音から五度離れれば良いのでしょうか!?(笑)。

でも、ココでガメる必要は無く四声でとどめておいてイイんですよ別に。少なくとも完全四度累積を進めて4声得た時点で生ずる、その和声内に生ずる短三度音程は、完全四度音程から長二度の音程幅を「削る」コトによって得られた情緒でありましてですね、ココで生じた短三度音程というのはどういう風に完全四度を求めるコトができるのか!?

ハイ、左近治が過去にも語っておりますね。短三度と完全四度応答のカタチとやらを。


半音階の世界を導くにあたってあらゆる方角の応答を取り込む。属和音の3rd音から四度累積を伴うハイブリッド・コードのカタチとか。短三度と完全四度累積の応答とか。私が何の脈絡もなくコードネームの流儀にも外れたトンデモないコードを使っているのかと後ろ指さして嘲笑していただいても構いませんが、これらのような理由から使っていたのでありまして、賢明な方でしたら疾っくに意味をご理解されているとは思うんですが、こういう意図があってのことだというコトを端折って説明するワケにはいかないのでココまで語っているワケですな(笑)。

つまり、全音互い(9度の方角)という世界を生じて、完全四度音程から長二度を「削る」。そうして残った短三度音程について語っているワケですね。

そういえば長短3度音程をトコトン積み重ねてできた「属二十三の和音」ですが、長短の3度を使い分けながら半音階の総和音にしたのが属二十三の和音でありまして、ただ単純に半音階の総和音を生じさせたいのであれば他にも完全四度累積を11回進めればできるコトでもありますし、これは過去にも語ったコトがありますね。

長短三度の累積が属二十三の和音という究極の姿であるとしたら、これが半音階という世界を映し出す世界の入り口だという風にも言えるかもしれません。少なくともその和声は属和音を包含しているにも関わらず半音階の世界に寄り添うのは音律が平均律になったからです。

扨て、左近治は属和音を下声部に用いながらも属和音の長三度音から完全四度累積を生じさせることで便宜的なハイブリッド・コードを用いるコトがあります。例えばG7という属和音があったら下声部にG7、上声部にBsus4とかB7sus4を生じる、というコトですね。

そもそも本来のG7の3rd音と7th音はトライトーンを生じております(5th音を包含しつつ)。

私は5th音を飛び越えながら完全四度累積を始めます。そうすることで半音階の呼び込みと短三度と完全四度応答を保ちながら、属和音という本来の体を保たせながら属二十三の和音としての姿を強化させつつ、属二十三の和音のカタチだと余りにも音が多いので少し省きながら使っているような世界観なのだというコトをご理解していただきたいのであります。いずれにしても私なりの理由があってのことでハイパーな和声を使っているのでありますが、その根拠は到底ヒトコトで述べられるモノではないのでココまで時間を費やして語るコトになってしまったのだというコトをあらためてご理解いただければよいかな、と(笑)。まあ、冗長ココに究まれりと(笑)。


でまあ、こういう世界観を追究するとですね、七度の方角と3度や増九度の方角にとても興味深い音を生じて来るワケです。古くは旋法的な変化でメジャー感とマイナー感を行き来するかのような語法が垂直的に現れてきたりとか、長七と短七が同居するような音とか、解決先の音を見越してしまうような先取りの音とか。コレって何百年も前から使われている音なんですが、そこを忌憚なく、情緒は従来とは違う情緒で、みたいに用いるのがハイパーな世界だと思っていただけるとイメージしやすいのではないかな、と思います。

で、そういう特徴的な音を速いパッセージで用いるのはまだまだラクな方なんですよ。それでもフツーの世界と比較するとかなり異端な音使いに聴こえる筈なんですけどね(笑)。だからフツーの世界に慣れきってしまっている人が判断すると、途端に脈絡の無い音だとか決めつけてしまうんですね(笑)。ホールズワースや渡辺香津美やフィル・ミラーやジョンスコとか、まあその辺のフツーの人達からすればせいぜいジョンスコやメセニー辺りが許容範囲であって、他の人達は別次元で情緒などほぼ無理解のまま聴かれてしまうコトが多いのではないかと思うんですな(笑)。

あるモチーフに対してどういう「反行形」やら「ハモり」によって音を外すのか!?

こういう語法において音価をしっかり長く取るのはマイルス・デイヴィスやウェイン・ショーターが筆頭に挙げられると思うんですな。私はそういう所が好きなんですわ。


つまるところ、全音違いの世界はどういうハイパーな世界観を呼び込む牽引材料と成り得るのか!?というコトと、実は牽引力を発掘する前に目立たぬ所に存在していた半音違いの世界、というものをいつしか密接に感じることができるようになった時というのが耳が数段肥えて来た時なのではないかと私は信じてやみません。


あらゆるアンサンブルを単一のモードに収めようとしてもそこに無理が生じる楽音に遭遇した時、その構造がどうなっているのか!?というコトを探ってこそ音楽を深く探求する意味があるのですが、その構造を見た時、実はそれほど複雑ではないモードの組み合わせで生じていたものだったりするコトが殆どです。それらが複合的になっているからこそ複雑に聴こえるだけで。


例えば、ある「楽節」が単一のメジャー・トライアドを背景に生じているフレーズだったとしましょう。C調におけるC△というコードをバックに「ド・レ・ミ・ソ」(C音、D音、E音、G音)という楽節だったとしましょうか。

今度はそこから楽節が「レ・ファ#・ラ・ファ#」という風に変化したとします。この時点で一時的にはハ調の調域は逸れております。その楽節から今度は「レ・ファ#・ラ#・ファ#」という風に拡大していくとしましょう。

これらを上声部としてコードを次のように与えてみるとします。


「ド・レ・ミ・ソ」の楽節に対して「C△」を1小節
「ド・レ・ミ・ソ」の楽節に対して「Bb△」を1小節
「レ・ファ#・ラ・ファ#」の楽節に対して「Eb△」を1小節
「レ・ファ#・ラ#・ファ#」の楽節に対して「Em」を1小節


扨て、これら4小節を語って行きますが、最初の1小節目は何の変哲も無いC△の世界ですね。2小節目からいわゆるハイブリッド・コードの世界の様式になってきます。下声部が上声部の「7度」であることもあって下声部のメジャー・コードを省略して単音化することで7thベースのカタチになることも多いかと思います。しかしこの六声の型は色んな使い方があって、短調のトニック・マイナーが来たらその後エンディングなどで「VIIb/VIb△」というカタチで終わると、「含み」を持たせたエンディングとなるので、曲のエンディングにマンネリ化してしまった人は試してみてはいかがでしょう!?トニック・マイナーがAmだとしたら上声部にGメジャー、下声部にFメジャーのカタチですからね(笑)。

扨て本題に戻って3小節目は、コレはもうココん所散々やってきたんでお判りでしょう。ペレアスの和声ですね。Ebペレアスとなります。上声部が強くD△の分散フレーズになっているのに対してEb△を乗っけているワケですね。

扨て、次の4小節目も注目です。下声部に「Em」。下声部にマイナー・コードを配置するのは比較的珍しいですね。何故でしょう?(笑)。それに加え、下声部のマイナー・トライアドに対して上声部のこの分散フレーズは何!?(笑)。


その辺、次回にじっくりと語ってみるコトとしましょうかね、と。