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ペレアスの和声 (2) [楽理]

では、ペレアスの和声を基に鏡像音程のカタチを今一度少々追究してみようかと思います。


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今ココで生じているペレアスの和声は「A△/Bb△」というカタチでありまして、鏡像形を得る為の基準となるのは「A音」となります。


で、今回はA音を基準に鏡像形となるタイプの譜例を用意しておりますので次の譜例をあらためてご確認していただきたいのでありますが、上から1つ目の方はA音から数えたBbという音程の鏡像形を上方に配置したコトで「Gis(=G#)」音を得ております。

このカタチ、見ようによっては下声部に『Bbメジャー・トライアド + 上声部にA△7』というカタチになるのも興味深い事実ですね。ココで下声部の3rd音(D音)の和声的な響きが少々重苦しく感じるから省いて使うと、坂本龍一作曲の「Elastic Dummy」のカタチになるワケです。これでパラレル・モーションやっていただければ「Elastic Dummy」のキーボード・ソロからイントロのコード進行に戻る一連のブリッジ部があらためてお判りになるのではないかと思います。移調が必要ですけどね、今回の例だと(笑)。


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以前に私はハーモニック・マイナー・スケールやらジプシー音階関連を引き合いに出して「Elastic Dummy」を説明しておりますが、どちらのカタチから求められる回答でありましていずれも間違いではありません。短音階やらジプシー音階を引き合いに出したのは、そちら側の世界からの呼び込みの方としても身近であろうという配慮からです(笑)。縁遠い所から唐突にハナシを進めてもイイことありませんしね。そういう意味で、当時の記事のタイミングでペレアスの和声の側から語ると余りに突飛すぎますし、その後のブログのネタとしてのハナシの進め方でネタが枯渇するのを避ける意味合いもあって、このように牛歩のようにジワジワと順を追って説明しているワケでございます。とっとと語りたいのは山々なんですけど、書き手の方も忸怩たる思いを抱きながら書いている左近治ってどんだけドMやねん!?なんて思われるかもしれませんが、就中音楽を追究しようとするならばドMなんて当たり前ですわ(笑)。てめえの脳細胞フルにイジメてナンボでっせ(笑)。


でまあ、ペレアスの和声を語るついでに坂本龍一作曲の「エラスティック・ダミー」を語るコトも出来ちゃいました。まあ、ある意味で何故あーゆー特異な響きがフランスを演出しているのだろうかというギモン(※高橋幸宏のソロ・アルバムに収録されているのですがこのアルバムはフランスがテーマとなっている)においてひとつの回答を得るコトができるのではないかと信じてやみませんが、


扨て、譜例の2段目の方では下方にG音を求めておりますが、コレを求めた基となる音はありません。Aメジャー側に想起し得る仮想的なナチュラル9th音から導くコトも可能かもしれませんが、純粋に1段目の鏡像音程から根音バスの概念でG音を求めるという風に進んでいるとご理解いただければな、と思います。

そうして得た一連の譜例2段目の音たちは、これは黛敏郎作曲で有名な古い日テレのニュースのテーマ曲のイントロ部(クロマチック・フレーズになるまでの)の音世界はこのような音列に拡散しようとしているワケでありまして、これらの音を全て垂直レベルに同時に和声で鳴っているワケではありませんので誤解のなきようご理解いただくとしてですね、黛敏郎のこの曲の方は、最終的にD durに解決していきますが、ハ長調の属音をかき集めたかのように「G、E、Db」からさらに属音グループから音を収斂させていきながらどこかに解放を求めていくような響きが演出されているワケですね。いずれにしても3度の累乗によるモノのカタチとしても興味深いですし、ペレアスの和声を含んだ複数の調性を織り交ぜた所から垂直レベルに求められた和声を演出しているようにも感じ取るコトができます。いずれにしても非常に多様な世界であるのは言うまでもありませんが、とりあえずは左近治はこっちの方まで語るのにブログで数年費やしているという事実もあらためて述べておかなければなりません(笑)。答を出し惜しみしているように思われる時もあるかもしれませんが、物事を順序立てて語るのは難しいモンです(笑)。ただ、一本の糸のように首尾一貫スジを通しているという所もご理解いただければな、と。


で、左近治は先のペレアスの和声を用いて、さらに下方側に根音バスの概念をもってして3度を求めて追究していきます。すると次には下方にEs音(=Eb音)を求めるコトができまして、コレは下声部にEb△ + 上声部にDm△7というカタチを求めるコトができます。

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この型は、左近治が以前に「GreenSleeves」において用いた特殊なコードで、エリザベス・シェパードも用いましたね。サブドミナント上で用いたモノですが、こうした和声を忌避するコトなく使う背景には色んな思惑があるんですが、見慣れないコードだからと言って耳や感性がポピュラーな方角に均されてしまうのだけは避けたい所であります(笑)。なにせポピュラーな和声でそれこそある一定のルールに則っていたらペレアスの和声ですら異端な扱い受けかねない勢いなのが現状ですよ(笑)。強いて上げればデイヴ・スチュワート著の理論書モドキっぽい本がその手の興味をかき立てるかのように少し触れているだけです。そこから本当に求められるのは、感性を追究したいという本人の自発的な欲求ですよね。いくら指南しても体得できなければ意味がないし、ましてや耳がある程度習熟していなければその時点で音楽を嫌いになってしまう人だっているかもしれない、というコトを考えると、いきなりコチラのステージから提示するコトってかなり難しいモノなんですよ。

故に私自身ただ単にブログ・ネタが枯渇しないように~ みたいに言っているのは或る意味照れ隠しでありまして、ホントは、難しいコトをいきなり語ってもアレでしょうから、という配慮があってのコトでこういう風に順序立てて説明していたら月日がかなり経過しちゃった!みたいに感じ取ってくれると有難いワケですな(笑)。

とりあえず重要な部分というのは、半音違いの世界を併存させているという自虐的とも言えるような自分自身の半音下の姿を有している興味深い属二十三の和音というものは、半音違いの調性を呼び込んでいる短縮形とも呼べる姿でありまして、私はこういう風に発生させられるのは別に長調基準のみならず平行短調にも有り得るコトだと思います。

そういう例も含めて取り上げたいのがナショナル・ヘルスのとある一曲なんですね。