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ペレアスの和声 [楽理]

こうしてあらためて「属二十三の和音」を見ると、上方に存在する音の群れというのは、いわゆる一般的なドミナント7thコードにおけるオルタード・テンション群というモノを確認することができますね。


過去に私のブログにおいて何度か、「ドミナント7thコードのオルタード・テンションの組み合わせによる#9thとナチュラル13thの組み合わせは分数コードのような響きを感じる」と述べたコトがありましたが、こうしてあらためて確認してみるとお判りになるかと思いますが、先の組み合わせだと上方に生じる半音下の属和音としての構成音群だというコトだというコトがわかります。

03G_Dominant23rd2.jpg こういう異端な世界でなくともドミナント7thコードにおけるオルタード・テンションというのは使い慣れればこそ「ドミナントってなんでココまでテンションの自由度が高いのだろうか!?」とばかりに、それこそ短調のバリエーションが増えたかのようにドミナント7th上でもオルタード・テンションを用いるコトで情緒にバリエーションが増えるかのように、まるで水を得た魚のように遊び回る人達もいらっしゃいますね。コレはごくごくフツーのコトですね(笑)。 「ドミナント15th」という扱いをするには、もうその時点でドミナント・モーションをさせないかのような、それこそ和声の在り方として全く別モノみたいに考えていただくと扱いやすくなるかもしれません。少なくともドミナント15th的振る舞いをさせるには、上方に構築される、自身の半音下の音を呼び込む前に「ナチュラル11th」が門番のようにデン!と腰を据えて座っているワケですな(笑)。 私、この振る舞いとやらを扱うコトこそがアウトな世界の呼び込みの鍵だと思っているのですね。ゆえに、ウェイン・ショーター御大が時として「先取り」するかのようにドミナント7thコード上でナチュラル11th音を使ったり、それこそ「セカンド・ベース系」のような音を得る時のミクソリディアン系の音を得る場合の拡張的な音として扱うコトもできるワケです。 下声部がメジャー・トライアドでアッパーで「b9th」を生じさせ、add9thじゃなくて「add b9th」になっちゃっているような音を演出する時というのは、もはや最果ての世界を呼び込もうとしているコトなのかもしれませんね(笑)。 で、属二十三の和音において最も着目すべき点というのは、自身の半音下を上方で構築してしまうコトなんですが、この辺をじっくりと見つめてみるコトにしましょうか。 元々属二十三の和音を構築する目的というのは、「半音階」を得るためのものです。半音階という世界を呼び込もうとしなくても和音というのは三度で累乗していけばどこかでえ属和音を生じてしまう。結果的に属和音を形成するのであらば属和音基準で三度を累積していったらどうなるのか!?という所が重要なんですね。 半音階というのはそれこそ音階のキャラクターとしてはどこからも等しく均一な性格で、情緒は等しく一定なのかもしれませんが、実はこうして自身の半音下の性格を包含しちゃっているモノだという見方をすることができます。半音階であろうとも結果的にこういう情緒を齎してしまうのは倍音列の音との釣り合い/不釣り合いを生じるからでもあるんですが、半音階といえどもこうした情緒という趣きがあるのは何とも興味深い事実です。 結果的に半音下の調性を「併存」させたようなモノと解釈すると、ペレアスの和声というのは属二十三の和音の一部の構成音を上手いこと省きつつ、その性格を利用して半音違いのメジャー・トライアドを混合させているように聴こえる和音だというコトがお判りになるでしょう。無論、ペレアスとメリザンドの方では垂直レベルでハナからこうした音を聴かせようとするモノではなく、複数の異なる調を対位的に用いることで呼び込んでいるのでありますが、結果的に垂直レベルで聴こえる和声感としてはこのように形容できるワケですね。 奇しくもドビュッシーのペレアスとメリザンドはNTV系列の番組、読響symphonic live 深夜の音楽会の3月9日放送予定となっておりますので、夜遅いですがレコーダーなどで録画してご確認されるのもよろしいのではないかと思います。放送予定のペレアスとメリザンドは「交響曲」のようですのでご注意を。 指揮:シルヴァン・カンブルラン ヴァイオリン:ヴィヴィアン・ハーグナー ドビュッシー作曲(コンスタン編曲)  「ペレアスとメリザンド」交響曲 先日そういえば、私は東芝さんの古~いCMの話題を出したコトがありましたね。乾電池の「キングパワー♪♪」っちゅーヤツですわ(笑)。私の記憶が変質している可能性大アリなのにペレアスの和声と完全に決めつけてまんねんけんど(笑)、今もやっぱり決め付けてマス(笑)。アレをペレアスの和声だと決め付けないと、どうにも上手いコト話を進められないのもありましてですね、今回はBbペレアスとしてハナシを進めて参りたいと思っております。 例えばBbペレアスとして和声を見てみると、ソコには下声部にBbメジャー・トライアドに加えて上声部にAメジャー・トライアドという2つの長七度(半音)離れたメジャー・トライアドの混合された和音だというコトがあらためてお判りになるかと思います。
Bb_Pelleas002.jpg
一般的に、ペレアスの和声が用いられているシーンに遭遇することは少ないかと思われまして、ペレアスの和声に包含する「DmM9」のカタチというマイナー・メジャー9thの響きのシーンを得るコトの方が比較的多いかと思います。が、しかし、現存する全てのマイナー・メジャー9thを用いている曲が、マイナー・メジャー9thのさらに3度下方を根音バスとして追究するコトなくお座なりにしてしまったカタチというワケではございません。そんなコト言ったらジェフ・ベックのアルバム「ブロウ・バイ・ブロウ」で有名な「Diamond Dust」の世界観を否定するコトにもなりかねません。しかし、和声の追究、という風に推し進めていけば、そこにはマイナー・メジャー9thからさらに3度下方に追い求めるコトができ、すぐそこにはペレアスの和声が待っているよ、というコトを言いたいんですな(笑)。 同時に、DmM9というのは「F△7(+5)」というカタチの和声を包含しておりますが、この「型」というのがポピュラーの世界では比較的多く遭遇するシーンだと思います。この手のコードの中では一番遭遇しやすい型だと思うんですな。すると、そういう所から和声的にどのように発展する余地があるのか!?という所に魅力が一杯詰まっているのが今回述べているコトでありまして、三度下方に求めて行くと多様な世界をさらに導いてくれる、というコトを言いたいワケであります。 「DmM9」を求めた時点で、9thを使うと少々重いから「Dm△7」というカタチで済ませるのもイイや!という方も中にはいらっしゃるかもしれません。マイナー・メジャー7thというカタチは非常に扱いづらい(情緒を求めにくい)タイプの和音だと思われます。このカタチで最も手短に使われるのが半音クリシェで生じる「経過的な」用いられ方。残念ですよねー(笑)。単独のカタチで使われるのは分数コード的な用い方。 例えばそれはD音をペダル・ベース的にしてFaugサウンドを上に演出したりとか。ピンク・フロイドの「Us And Them」はマイナー・メジャー9thタイプというよりもこのタイプに分類した方がご理解しやすいかな、とは思いますが、いずれにしてもその後を追究する上で格好の材料となるお手本であるのは言うまでもない超名曲の1つであります。音楽を追究するならば絶対に知っていて欲しい1曲に間違いありません。 すると、左近治がなにゆえ「A△/Bb△」のカタチでもって語ろうとしているのがお判りになるかと思いますが、私の耳の習熟度やら遭遇した順序としても置き換えていただいてもらっても差し支えありません(笑)。 でまあ、ペレアスの和声というのはマイナー・メジャー9thを包含している、と。数ヶ月前にマイナー・メジャー9thは鏡像音程を持つモノとしてその辺の興味深さを語ったコトもありましたね。それを包含しているというコトはペレアスの和声においても鏡像形は維持されているワケですね。