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キングパワー (2) [テレビ関連]

そんなCM知らない人の方が今では多いかもしれません。なにせ、私の古い記憶を遡ってみてもおおよそ35年前を想起してしまうワケですから、昭和50年代以降に生まれている人ならそんなCMまず見たコトないかもしれませんし、そんなCM曲聴いたコトないかもしれません。家庭用VTRだってまだ市場に出回っていないのではないでしょうか(笑)。


日曜日のサザエさんを見てるとよ=く流れていたような記憶がありますね。


でまあ、そんな東芝さんの話題を心のどこかにとどめておいていただきたいんですが、今回の本質的なテーマは「ペレアスの和声」とやらを語ってみたいワケですね。これまでの流れでチラッと語っていたので、それをよくご存知ではない方は気になっていたかとは思うんですが、漠然と色んな和声を引き合いに出しているワケではなくて、キッチリと一本の糸で繋がるように意味のあるモノですので、今回は東芝さんの先のCM曲とペレアスの和声を語るというワケでございます。


そもそもペレアスの和声というのは、ドビュッシーのオペラ曲「ペレアスとメリザンド」の曲中に導入している独特の和声のコトなんですな。六声の和音です。


構造的にはハ長調のトニックとロ長調のトニックと考えればよいでしょう。あるいは「ド ミ ソ + ド♭ ミ♭ ソ♭」と考えるコトができます。いずれにしてもこの和声が生まれた背景は、複数の調が折り重なるようにして生じているモノでして、いわゆる対位的な技法において生じた和声だと思ってもらえれば結構です。

対位法において半音違いの調を行き交うのは稀な用法でありまして、一般的および初歩的なレベルでは関係調を頼りに近親的な調を利用して対位法は構築されるものですが、こういう技法もあると思っていただいて構わないと思います。ココでは対位法うんぬんが重要ではないのでそれについては割愛しますが、ペレアスの和声というのはそういう背景で生じているワケであります。


ハ長調基準で見れば次のような例としても便宜的に構成音を表記するコトが可能です。

「C、E、G + B(H音)、D#、F#」


という表記ですね。つまり無理矢理なポピュラー形式のコード表記にすると「C△7 (+11)に#9thを加えた」ようなモノになるワケですな。


因みに東芝さんのキングパワーのCMソングはどういうフレーズだったのかと言いますと??


ソ  (キン)…四分音符
ソ  (グ)…八分音符
ソ♭ (パ)…八分音符
ミ♭ (ワー)…二分音符


という風に私の記憶ではこのように記憶しております。ペレアスの和声の下声部の「ド」をオミットすると、これはマイナー・メジャー9thの響きでもあるんですが、マイナー・メジャー9thを包含するとも思っていただくと、より和声観が拡大されるのではないかなーと思います。少なくともマイナー・メジャー9thというコードの魅力は鏡像音程として見ても非常に重要な和声でありますので、そういう意味でもこのような特異な音をも包含している独特の和声がペレアスの和声という風に思っていただいても構わないと思います。


もしかすると、CM自体が余りに古く私の記憶が変質してしまっている可能性も捨てきれません(笑)。独特な響きというモノだけが耳に朧げに残っていて、左近治がこれまで有して来た和声的な経験が勝手に変質させている可能性も捨てきれない部分は往々にしてありますが、おそらくはペレアスの和声だっただろうな、という風に語っておきます(笑)。

多分、東芝さんのCMは「Bb△ + A△」という二つのメジャー・トライアドによるモノだったと思います。つまり「ソ ソ ソ♭ ミ♭」はこの場合「F F E Cis」というフレーズになることを意味します。あまりにも記憶が曖昧で調すらも移調させてしまっているかもしれませんが(笑)。原曲をご存知無い方にあらためて注意していただきたいのはソの次のソ♭は長七度上がって、その後ミ♭へ下がるのでフレージングはご注意を。


まあ、東芝さんのキングパワーのCMがどうだったかは重要ではなくてですね(笑)、少なくともペレアスの和声がどういうものか!?というコトを知ってもらえるだけでもそれだけ現時点では十分なワケであります。

半音違いの長三和音をハイブリッドさせているこの特異なコードはドビュッシーが最初に使ったと言われるモノでありまして、どうでしょう!?かなりメランコリックに響いてくれるモノではないかと思うワケですが、単一のコード表記では先のようなヘンテコな表記になってしまうワケですが、こういう響きそのものが既に現存している事実を受け止めていただければイイのでして、「こんな音、好きじゃねえよ!」という人がおられても仕方はありません(笑)。一番重要なのは、半音違いの音を呼び込んでいるコトなのですから。