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バイ・トーナルの世界へようこそ (2) [楽理]

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秋もだんだん深まって参りましたが暑がり左近治にはまだまだ汗ばむ陽気が続いているようなモノではありますが、そんな左近治もインフルエンザの予防接種は既に受けており、冬に向けて準備万端というコトであります。10月はとても日差しが少ない日が続いたのでアレだったんですが、こうして「陰影」を地面に焼き付けるかのように私の影を撮ったモンですが、回折というのは奥が深く、その波のエネルギーを高めれば、遮る物も無かったかのように回り込むワケですわ。

そんなカッコつけたコト抜かしてますがホントは夜景を撮影するにあたってロケーションを色々探っていた矢先にココん所の日中のホワイトバランス具合見てたりした所で撮ったモノでして(笑)、どんな夜景を撮ろうとしているのかは後日当ブログで語るコトができればな、と。夜のズッコンバッコン♪撮りに行くようなそんな悪趣味は持ち合わせておりませんので(笑)。まあそんな陰影をあらためて認識しつつ楽理的な部分を探って参りますか!


今一度おさらいしますが、それは下記の通りですね。


ドミナント・モーション時における「併存状態」を確認することとなりますが、通常の世界においてトライトーンが「CとE」に解決。そして「併存状態」である対極側の世界での「F#とA#」に解決する動き。これらを同時に見て行くことでハイブリッドな状態をさらに色彩を強めて見ていってみましょうか、とそういうコトですね。


何件か前の私のブログ記事においてはG7からトニックへ解決する際に、私は対極側を「Ges dur」で語っていたのに、今はなぜ「F#とA#で語っているのか!?」という素朴なギモンを抱く方もいらっしゃるとは思うんですが、ほんの少し前の事など知らんぷりで語っているのではなく、わざとそうしているので追々私の意図はお判りになると思いますので暫くガマンしていて下さいね(笑)。楽理的な根幹部分は決して間違えたりはしませんので、文章や語彙の側面でのツッコミはご容赦を(笑)。


扨て、前回のブログ記事の終盤には「明暗」やらという「メリハリ」を強調していたワケですが、器楽的な意味において複数の調性が同時に成立している世界を呼び起こそうとする場合、ハ長調と対極側(FisまたはGes dur)が同時に呼び起こされているよりも、どちらかが平行短調である方が「メリとハリ」という状態で均衡するモノでありまして、アンサンブル的にもそちらの方がグッと深みを増すものでありまして、クラシック音楽やジャズであろうとも、対極側の世界を同時に呼び込もうとする場合、楽音としての均衡を少しでもキレイに響かせようとする指向性は共通しているものでして、それは、どちらか一方の世界は平行短調にすることで、「長短」というメリハリが付くワケです。


つまり、C durとFisもしくはGes durを同時に想起するのではなく、A mollとFisまたはGes durでもイイですし、C durとEs mollとか、そういう互い違いになるようなメリとハリ(この場合は「長短」というメリハリ)を用いて、他調的な世界をより近しいモノにする技法だと思っていただければ結構です。まあ通常の世界観にしか耳が慣れていない方であっても、一聴すれば自ずと「長短」のメリハリを付けて同時に発生させた方がよりキレイな和声的な世界観だというコトはすぐにお判りになると思います(逆に長短を使い分けない方が、フツーは耳には汚く響くと思います)。


判りやすい例として、ふたつの調性の並立している状況を仮にC durとEs moll(またはDis moll)が発生しているとしましょうか。

元々の対極側の世界を、バルトークの中心軸システムで書かれているFis側ではなくGesで語るのは、私のその後の拡張的な世界観によるモノでありまして、平行短調として発生した短三和音をDis mollとして見るよりもEs mollとして見た場合の方が、C durと併存させた時にそれらの音が都合がよくなるからです。

その理由というのは、C durとEs mollの間にはHを基準とした鏡像関係が見えて来ます。基準としているHにも音を与えるとしますと次のような構成音を伴っているコトが判ります。


「C、E、G、H、Es、Ges、B」


この音を無理矢理ポピュラー界隈のコードとして当てはめた場合、コードネームは「B△7/C△」という風に呼ぶことが可能となります。Hを加えたコトで結果的にこういう和声になっているものの、鏡像関係が作用するコトによってよりHの出現を強固になっているのだと考えていただきたいワケですな。こういうハイブリッドな和声は過去にも左近治は「Hyper Melancholic」なる自前のデモ曲にて披露していたりしたモノでもありますが、今一度ご確認いただければ幸いですな。


で、この併存状態はC dur側から発生した長三和音(ここではC△)を取り除いた場合、「H、Es、Ges、B」が残りますが、これはEs mollから見たらVIb△7でありまして、Ges側のサブドミナントともなるワケですね。併存状態だったので本来ならC dur側とGes dur(または平行短調Es moll含)も同様にトニックの並立であってもイイのですが、H音を加えることでトニックとサブドミナントが並立状態となっているハイブリッド構造だと思っていただければと思います。

また、こうしてトニックとサブドミナントが並立状態であることを都合良く解釈することで、Es moll側のVIb△7の三度下方つまりIVmを見立ててみることにしましょうか。


すると、一方はC durにおけるC△トライアドを見立て、もう一方はEs durにおけるIV、つまりAs moll(=Abm)を見立てるという意味になります。


このハイブリッドな和声は、バルトークで言う所の「dur-moll」(ドゥア=モル)、という「ドゥアモル」の和声ですね。このドゥアモルの和声についてはバルトークの作曲技法という本に詳しいのでそちらを参考にしていただきたいのでありますが、このコードの最大の特徴は、オーギュメンテッド・スケールを導く所にあるワケですね。つまるところ、C△トライアドとAbマイナー・トライアドの構成音を羅列すれば自ずとオーギュメンテッド・スケールを導くコトとなります。

構成音そのものは「C、Es、E、G、As、Ces」ですのでお間違いのないように。


こういう所からも判るように、ハイブリッドな和声観を持つ世界にすぐさま寄り添うコトのできるシーンというのは色々あるワケでして、通常の世界のみで済む世界観を構築するだけ良いのであれば、そちら側の世界において色彩の色濃く映えている部分を選別していればイイのでありますが、本当は色彩として目立たないと言いますか、陰日なたの部分を見るコトが少ないとでも言いますか(笑)、そういう部分も一緒に考慮すると実はハイブリッドな和声観というのはいつでも呼び込めるような所に存在するのだというコトをご理解いただきたいワケですな。


こういうハイブリッドな和声として現れる世界というのは、実は垂直的な和声でパッと音を与えても動機付けとしてはあまり色濃くないモノでして、フツーに白玉の和声で鳴らしてしまうと不協和音の度を強めているだけのようにしか認知されないコトの方が多いと思います(笑)。

ですからそういう嫌悪感を示されないためにも動機付けというのは重要なモノでして、例えば、異なる二声の旋律が対位的に(お互いの調性が異なるような旋律)組合わさると、そこで多旋法な世界が生じて、単一の調性では語ることのできない深みのある世界が登場するワケですが、こういう世界を呼び起こすにはただ単に和声でガツン!と白玉で与えると、アプローチとしては弱かったり、得てして認知する側はソコまで本来の姿を受け止めずに拒絶や嫌悪していたり、なかなか受け止められなかったりすることが殆どなんです(笑)。で、聴衆側もこの辺りまで耳が習熟してくれている人はかなり少なくなってくるのも実情です。


動機として希薄なモノにしないためにも、フレージングとしては色濃く記憶に残ってくれるように動機付けを行わないといけません。一番イイのは、ある単純な音形(モチーフ)を一箇所だけ音程を変えてみたりするような「フラつき」なんか良いと思うんですな。最たるモノはメジャーとマイナーを行ったり来たりするような感じのフレージング。

例えばハ長調においてFメジャー・トライアドが鳴っているシーンにおいて、メロディが「ファ ソ ラ」 「ファ ソ ラ♭」という風に変化させたりするようなモンです。ラ♭は非和声音でもありますし、調性外の音でもありますが、そういう音を呼び込むためにある音形の一部分を変化させることが一番判りやすい例ではないかと思うんですな。和声的にはメジャーとマイナーが行ったり来たりするモノではなくとも、旋律的には「対比」としての役割で使えたりするワケですね。

こういうコトを鋭敏に感じながらフレージングに集中すると、インプロヴァイズにおいても惰性でスケールライクに弾くようなコトが極力回避できるようになるワケです(笑)。


プログレ好きの左近治からすれば、こういう好例として取り上げたいのがジェントル・ジャイアントでして、GGのアルバム「Free Hand」収録の「On Reflection」の「all around all around♪」とか唄っている所とか非常に参考になるのではないかと思います。耳がハモネプ辺りで収まるコトがないように(笑)、こういうハモりやらも耳で覚えるコトも必要かと思いますし、同様にGGのアルバム「Interview」収録の「Design」などは対位的なアプローチを体得するには絶好の材料となるのではないでしょうか。


dur-mollの和声については、あらゆる音楽においてその響きが代用出来るようなモノは少ないですし、用法は非常にシーンを選ぶモノでもあります(笑)。ただ、もしアナタがブレッカー・ブラザーズやアート・ベアーズ、BS&T、プロコル・ハルム、ウェイン・ショーター、YMO、スティーリー・ダン、カンタベリー系などに興味を示す耳をお持ちでしたら是非ともそれらの人の曲を追究していただきたいと思うんですな。


この手の和声とは会得しなければならないものなのか!?と疑問を抱く方もいらっしゃるとは思うんですが、結論から言えばどんな和声的な響きであろうと会得しなければならないと思います。少なくとも「和声」というモノをトコトン追究したいのであれば漠然とあらゆる和声を理解しようとするよりも更に理解の強度を強めなければならないと思います。

その手の、通常の和声感覚を超越したような響きを理解出来ないというのは或る意味、酒を口にしないにも関わらず酒の味語ってるようなモンですわ(笑)。場合によっては異性の数知っても意味ないコトなのに(笑)、数知ればイイとか、一方ではたった一人知っただけで怖いモン無し!みたいにやたらと自信満々になってしまう方もおられるワケですが(笑)、客観的に見ればそういう人達というのは可哀想な人なんですが、本人は幸せ感覚タップリ♪だと思うんですよ(笑)。

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和声面を社会で例えて言うとですね、手を替え品を替え色んな「響き」という商品を揃えているようで、実際には異端な響きの商品など揃えてるようなショップじゃねーのが殆どなんですわ(笑)。100円ショップ系のお店なんてドンキも含めて色々あるかと思いますが、それらのお店の類を色々巡ってみても実際にはそれほど変わらない商品を目にするコトが殆どじゃないかと思うんですな。でも、大半はそちらで十分だったりするのが各自の生活だったりもするんですな。

音に対して何らかのアレルギーや免疫力が低下する疾患があるのかどうか判りませんが、そういう例は別として、音に対して高次な興味を抱くモノであるなら、あらゆる可能性を習得するのは当然だとも思えるので、食わず嫌いがあってはいけないと思うんですな。通常の音世界であればどのショップで買っても同じようなモノを得られるかもしれませんが。感覚を研ぎ澄ましながら自身に備わっていない感覚を備えて行くというコトも重要ですし、未経験な響きというモノは時には「無学な音」にも聴こえてしまうワケですが、無学な音なのか実は理にかなった音なのか!?という判断の難しい音というのも実際には存在しますし、過去には私自身、自分自身の能力の拙さは棚上げして、ある理解を超えた音に対して嘲笑したコトすらあったモンです(笑)。今ではそういう行為こそが侮蔑されて然るべきなのでありますが(笑)。

次回はそういう例も含めて語って行きましょうかね、と(笑)。