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今度はフレージングでの応用例を [楽理]

扨て、前回は異なる声部においてそれぞれ異なるモードを見立てることによって生じる、調性外の音というものをどのように和声的に発展させることができるのか!?という視点において語っていたワケですが、今度はシーンを変えて、その「ハイパーな音」を和声的な発展ではなくフレージングに応用した例を語っていこうと思います。とりあえず手っ取り早くデモの方を聴いていただくとして、今回用意しているデモはCメジャーの平行調であるAマイナーを想起しつつ、4小節循環のコードにしております。
無論、ハイパーな和声の発展形としてのコード進行にしておりますので、Aマイナーからはどんどん外れていきますがそれを元に戻す、みたいな感じで耳にしていただければよろしいかと思うのですが、重要な部分は2小節目なのでとりあえずは譜例を用意しながらご確認くださいね。
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上記譜例の1~2小節目のコードだけ取りあえず明示しておきますが、「Am7(9、11) → C△7(on D)」という流れにしております。つまり、2小節目は「C△7(onD)」というセカンド・ベースの型なのであります。

まあ、もっと言えば1小節目の3~4拍目にかけてのアプローチはどういうモードを想起してこのような音選びになったのか!?というコトについては、後述する2小節目の重要な点、というモノをご理解いただければ自ずとご理解できると思いますので語りません(笑)。


では、早速本題に移りますが、なにゆえ左近治はこの2小節目の「C△7(on D)」というコード上で、このような音を選択しているのか!?という根拠部分を述べていこうと思います。


2小節目の1拍目の6連は、どアタマから「A#」なんて使っちゃってます(笑)。コレ、CM7から見れば短七の異名同音なんですが、短七ではなく「#6th」というアプローチだとご理解ください。但し、この「A#」は別にどうでもよく(笑)、他に私が奏でるとすれば、「D or E or F# or G or Ab」音から入ってくる可能性があります。


「D or E音」辺りから入ると、次の音の音程の跳躍が大きくなるのでアレですが(笑)、まあ「F#音」を選択したとすればその場合は概ねCリディアンを想起して入ってきているシーンであるでしょうし、「Ab音」から入れば、スティーリー・ダンの「Green Earrings」やウォルター・ベッカーの「Three PictureDeal」のようにメジャー7thコード上で「b6th」使うという「あの」アプローチだと思っていただければイイでしょうし、この手のコトは過去にも散々語っておりますので今更詳しくは述べませんが、今回は「#6th」から入っているというのは私なりに一応意図はあるんですね(笑)。


クロマティックに連結させている「A#、B、C」という流れに見えるかもしれませんが、その後のDまで見ると、一応CM7の半音下であるBチェレプニンのカタチを示唆したような音並びなワケですな(笑)。

ココでBチェレプニンを弾ききっていないのは、その後の残り3拍で今回語りたい重要な部分を詰め込みたいワケでありますが、これまでもチェレプニンを当てはめるやり方は詳しく解説しているので、その辺りの整合性と私のクセという合わせ技というのも加味していただくと幸いですな(笑)。

まあ、普通に考えればCM7上でこういう音の選択というのは通常勇気が必要かと思います。特にこのシーンで「Cメジャー or Cリディアン」辺りのモードしか想起できないような人にとっては「何やらかしてんねん?」と思われるかもしれません(笑)。

では、ここで前回の内容をあらためてご確認していただきたいワケですが、2つの声部で異なるモードを想起し、それを並列に見立てて3度音程(前回は6度を前提にデモ作っておりましたが)で列挙すると以下のようになります。


fromAminor02.jpg
上記の譜例は、あくまでも3度音程をキープしたものですが、ココから生じる2つの異なるモードを「ハイブリッド」させた考え、というのが今回のフレージングにおけるアプローチであります。

一番最初の譜例の2小節目2拍目のアタマから4拍目までのアタマは、3度分散させて下降フレーズを奏でているワケですが、クロマティックに3度を下降させているのではないことはお判りですね(笑)。この3度をキープしつつも、2つの「混合されたモード」を当てはめながら降りていっている、という点に注目していただくと、自ずとこういう音選びになっているという事がお判りいただけるでありましょう。無作為に抽出した音ではないんですな(笑)。

で、4拍目アタマからその後の2つの音はオーギュメンテッドな音程関係のフレーズでシメておりますが、これは1拍目でチェレプニンを示唆するようなフレージングにおける「シメ」みたいなモノで(笑)、一応ココで釣り合い取らせてるみたいなモンです。


つまり、ココのCM7上で「外れた音」というのは、特にクロマティックや完全にアウトした別解釈を行ってアプローチしているのではなく、2声による異なるモードを想起した上でハイブリッドに構築された音を選択しているだけのコトでありまして、CM7上でそのようなハイブリッドなモード想起は、前の小節のAm7(9、11)でもこれら2つのコードにおいては本来のトーナリティーを維持した世界であるので、どちらのコードでも適用可能なコトということがお判りいただけるかと思います。


すると、1小節目の3~4拍目というのは「あたかも」Aメロディック・マイナーを当てはめたような音並びであっても、メロディック・マイナー視点で用いているワケではない、というコトがお判りいただけるかと思います。

過去に左近治がメロディック・マイナーのモード的導入における解説では、メロディック・マイナー視点でしか述べておりませんでしたが、いずれにしても視点が多少変わろうとも、同じ音を使うことは往々にしてあるものでして、見立て方などこの他にも色んなアプローチは存在します。

リディアン・クロマティック・コンセプトの落とし穴というのはそれだけに頼ってしまうと、一方向からの視点でしかなくなる危険性があるので、結果的に同じ音を選択するのであれば、色んな角度から見立てられる術を幾つも有していた方が有利だろう、というのが左近治の考えでありますので、こうして述べているワケであります。


しかしながら、コード・チェンジの激しい曲で「よりシンプルに」モードを見立てたいというのも別の側面で抱える問題ではあるでしょうが、単一的なモードの見立て方しか知らないが故に煩わしく思えてしまっているだけで、色んな角度から見立てる術を知っていれば、コード・チェンジが激しかろうと、その対処は容易になるものであります。

というコトで、今回はフレージングにおけるハイブリッド・モードの見方というモノで応用例を示してみました。