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マイナー・メジャー7th分散フレーズによるスーパーインポーズの意図 [楽理]

 扨て、前回は早足でデモを披露してみたワケでありますが、耳コピをされた方の中には、音採れば採るほど「よくある」ポピュラー・ミュージックのコードとは異質の一風変わった音が混ざっているコトにお気付きになられたのではないかと思うワケでありますが(笑)、この辺の「悪戯」も左近治は計算の上で行っておりますのでご容赦願いますように、と。


 では、前回のデモのコード進行をザックリと語るコトにしますが、まず弱起部分はこうですね。


Bb/C → C7(b9)/Db


 要は「ドミナント暈かし」で(笑)、V7/VIbのカタチですね。過去にも渡辺香津美の「Inner Wind」やSD(=スティーリー・ダン)の「Almost Gothic」でもこの手の用法について語ったことがありますので、それは今一度確認していただくとしてですね、このアッパー部であるシンセ・リードはC7altを意識してフレージングすることでb9thと#9thが入ってくるようになるワケですね。まあ、ココはさほど重要ではありません(笑)。


 まあ、その後トニック・マイナーが2小節続いて8分食った(=シンコペーション)ブリッジが1小節入るワケですね。コードは明示的に3つ鳴っておりますが、下記の様に進行させております。


A#△/C#△/B → F△/Bb/Eb → E△7(+5)


 という3つのコードでのブリッジとなっております。


 まずはこのブリッジ部の1つ目である「A#△/C#△/B」についてですが、「一体、なんて音使いしてんねん!?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません(笑)。


 ちなみに、「/」というスラッシュを2つ用いて、『アッパー/ロウワー/ペダル・ベース』というコトなので、アッパー部の「△」はメジャー・トライアド、同じくロウワー部もメジャー・トライアド、そして一番下は「単音」なのでありますので注意が必要です。

 一番下の音「B」をルートに見立てて「便宜的」にハイパーなコード表記をすればBディミニッシュ・トライアドにメジャー7thとナチュラル13thが加わっているような表記。しかもこんな表記したんじゃ「dim7」にM7thが加わっているような、

「七度」の扱いは如何に!?

 なんて混同間違い無し!だと思うんですな(笑)。


 わざわざこの手のハイブリッドなコードで六声稼いだ和声でなくとも、便宜的にディミニッシュ・トライアドを基とするテンションを付加させて表記することはありますが、さすがにこういう時は左近治はディミニッシュ・トライアドを基とするコード表記は行いません(笑)。但し、このコードで想起しているモード・スケールは「Bディミニッシュト」という8音音階であることは間違いありませんのでご注意を。

 で、このコードで重要なのは、2つのメジャートライアドの上と下で「短九度」を作ってヴォイシングする所でありまして、よくよく聴けば内声でC#、トップでDが鳴っていることにお気付きになるでしょう。互いのメジャー・トライアドの構成音で重複する音があるためにソコソコの吊り合いが取れているのでもありますが(笑)、Bのペース・ペダルを省けば、この手のコードはプログレどころならばUKの「Danger Money」のド頭のコードとか、ブレッカー・ブラザーズなどではよ~く耳にするかもしれません(笑)。


 一般的に語れば「不協和音」そのものかもしれません(笑)。でも、不協和な響きではなくフツーに聴こえさせたい、というのが左近治の意図でもあります。トニック・マイナーでマイナー・メジャー7thの分散フレーズをアレだけあからさまに弾いておきながら、次のコードでは多少なりとも落ち着けばイイものを(笑)、左近治はまだ飽き足らずにこーゆーコトしちゃうんですね(笑)。

 別に耳コピなんてしていない人にも「フツーに」耳に入って来てくれる方は大歓迎でもありますが、おそらくはたまたま耳に馴染んだだけかもしれませんし、この手の和声は「一般的な」ポピュラー・ミュージックで用いるのは結構冒険が必要ではないかと思うのであまりオススメはしません(笑)。一応、この辺の作法を知ったからといって色んな所でヤッてしまうと、時と場合によっては嫌悪されるコトがあるかもしれません(笑)。「オレぁオマエのコト嫌いだけど、オマエはオレを好きになれ!」というスタンスを堅持する方なら止めはしませんが(笑)。



 で、ブリッジ部2つ目のコード「F△/Bb/Eb」ですが、わざわざこんな表記するコトもなかろうに、と思う方もいらっしゃるとは思うんですが(笑)、「わざわざ」この手の表記をせざるを得ない意図がありますので、まずはその辺の注釈を。


 今度は一番上のメジャー・トライアドに、内声単音、ベース単音という表記なワケですが、ある意味では


「EbM7(9、13) omit3」とも言えますし

「F△/Eb」のカタチだろ!?


 としちゃってイイだろ!?なんて思う方もいらっしゃるんでしょうが、ソコはどうしても譲れないんですなぁ。


 例えば前者の形だと、結果的にomit3でメジャー7thコードを基とする表記にした場合、場合によっては「EbmM7系」の場合もあるので(笑)、ソロ・パートが旋法的にG音ではなくGb音を選択しようとする場合、バッキングでハナからEbM7鳴らされてたらマイナー・メジャー7thの響きが得られません。自由度の高さゆえのヴォイシングである可能性も否定できませんが、今回のデモでは左近治は「G音もGb音も」避けております(笑)。その理由は!?

 ある意味、左近治はこのコードはよくある7thベースのカタチである「F/Eb」的な使い方をしております。まあおそらく先のEbM7系として聴こえるよりかは、コチラとして聴いている方が殆どだと思います。


 雑誌などでもこの手の7thベース表記ではよくあるコトですが、「F/Eb」でも「F△/Eb」でも「F (on Eb)」でも構成音は一緒ですが(笑)、この表記のままだと「Bb」が入ってこないのであります。

 たまーに実際にはアッパー側から見た11th音(この場合はBb)が鍵盤パートでいう左手で、一番下のベースと5度を形成させて補強させて楽譜で明示的にしていても表記上はこうなっているケースというのも勿論あります。


 しかしながら左近治は敢えて「F△/Bb/Eb」という表記をしております。今回のデモというのはこのコード上ではアッパーは「F7」を想起するようなフレージングでありますが、ココにもっと音を詰め込めれば、F7上でのナチュラル11th(通常はドミナント7th上でのナチュラル11thは禁忌)というsus4的な解釈とドミナント7thの母体であるメジャー3rdを同居させたようなフレージングも可能なワケであります。
 ウェイン・ショーターがよくやるバックはドミナント7thなのに自分はナチュラル11thを堂々とぶつけてくるようなフレージング(笑)。こういう感覚で分数コードに挑んでもらいたい、という思いからこの表記を断腸の思いで選択しているのでありますな(笑)。まあ実際にはこういう簡略的なコード表記だけにせずこういう時はきちんと音符書くモンですけどね。今回のデモはあくまでもソロ・パートしか譜例を用意していなかったので。


 で、ブリッジ部3つ目のコードE△7(+5)については多く語る必要はないでしょう(笑)。ただ一点注意すべきなのは、和声的には便宜的にこういう標記であってもフレージングの上では「E音」も使っておりますのでオーギュメンテッドな響きは結果的に「b13th」として解釈していることになります。

 こういうプレイヤー・サイド(ソロ取ってる人)と、バッキングの人達との間で「ホントにaugな音をb13thとして解釈してイイのかどうか!?」という約束事はバンドの実際では矛盾のないように理解しておいた方がよろしいかと思います。モード・スケール的に見て「ココは何がなんでも第5音はオーギュメンテッド!!」とか「実際にはb13thの簡略形」という点をきちんと整理しておく必要があるというコトです。今回の左近治の場合は「後者」となりますね。



 先にもオーギュメンテッド・メジャー7thについて語ったばかりですし。


 前回のブログでは、ソロ・パートの「旋法的」な視点においてマイナー・メジャー7thの分散フレーズをトニック・マイナー上で用いることと、多様なモード・チェンジという部分を語っていたワケですが、今回は「和声的な」角度から見ているのであります。


 で、今回のこのデモはジェントル・ジャイアントの「Free Hand」の手法を和声的に解釈してインスパイアされて作ったモノでありまして(笑)、多少の拡大解釈はあるものの、「特異的な」音の志向する部分と背景にある和声的解釈はかなり参考にしております。
 だからと言ってパクリではありませんのでその辺はきちんとご理解願いたいのでありますが(笑)、特異な響きを自分なりに解釈して構築してみるという事と、そこから生み出されているフレージングにどれだけマイナー・メジャー7thをインポーズさせることができるのか!?という、左近治の従来から語っていることとの共通点をどうしても同列に語って置きたかったキモチの表れからこーゆーデモになった、というワケであります。