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ミラー・モード [楽理]

とりあえず今回は、軽~くミラー・モードについて語ってみることにします(笑)。まあ、早いハナシ、ミラー・モードってぇのは、音階の各音の音程差を高低「真逆」に鏡映ししたモンでして、完全にインバートしているワケですな。

判りやすく言えば、Cアイオニアン(=Cメジャー・スケール)というのは、各音が

全音 => 全音 => 半音 => 全音 => 全音 => 全音 => 半音

という風に上行するワケですが、この音程差をそのままに下行するワケですので、場合によっては関係調や近親調にも程遠い「旋法」を生むことになるワケです。

つまるところ鏡映しのように「投影」されて反転している音階だと思っていただければよろしいかと思います。


ジャズ界においては、こういうモードの視点は誰が採り入れたのかは明白でありますが(笑)、おそらくこのような「反転」の楽理的側面における根拠を得ているのは次の通りだと私は思っております。


● 短三和音を転回した時に生じる長六度の協和性と自然倍音列とのすり合わせ(結合音も加味する必要あり)
● フーガを書く時に得られるような、そこに異なる旋法を導入して、多声部に渡って複数の旋法を織り成すことで得られるハーモニー豊かな響き
● シェーンベルクの十二音技法


おそらく、これらの要素ヒントに最大限に採り入れているのだと思われます。


ジャズの世界だと、ピアニストが居るとそのパートは概ね和声を「欲張る」モノです(笑)。

欲張りつつも管楽器というのはひとりであるならば和声を扱う(倍音を意識的にコントロールしない限りは)ことはないので、経過音であろうが倚音だろうが積極的に採用しようとする試みに加えて、複雑化するコードの構成音にいちいち対応するよりも、モードという発想でコロコロとモードの移り変わりによってハーモニーの波間を漂うようなイメージで楽曲を捉えようとする狙いがあったのだと思います。

勿論、その相乗効果で曲の調性のうつろいが増し、多様化する、と。


少ないパートでそれぞれが単旋律を奏でていようとも、ひとつのモチーフを追っかけフレーズだの、マイナーとメジャー感を行き来するような動きを備えるだけでもフーガを試したことのある方ならイメージが掴みやすいかと思われます。無論、クラシック界におけるフーガのそれは色んな制約もあったりするものでありますが。


ジャズ界のそれは、まず「変格旋法」が最初にあります。DマイナーをDドリアンで代用したりなど。

その音列に類似する、モード的側面における音列の類似性、または類似する音からの離脱という欲求から、色々と研究を重ねてきたのだと思います。


mirrormodes.jpg


まあ、そんなワケで今回は調号の不要な五線譜においてチャーチ・モードを抜粋した場合(つまりハ長調orイ短調として通常扱われる譜面)、それらのモードの「ミラー・モード」はどういう風になるのか!?という例を譜例にしたものが次の通りとなるワケです。


全部で7種類ありますが、ちょうど真ん中が「Dドリアン」ですね。


ドリアンを中心に配置しているのは、色んな理由があるワケですが、最も端的に説明できることは、ドリアンという音列は上も下も「シンメトリックな音列」なのであります。コレが、以前にも語ったコトのある「山本山状態」(笑)。


一方、C音から開始されるモードは、ミラー・モードでなければ「Cアイオニアン」のはずですが、反転させると「Cフリジアン」となります。

同様にE音から開始されるモードは本来は「Eフリジアン」のはずですが、反転させれば「Eアイオニアン」となり、本来の姿がGミクソリディアンであるはずのそれは反転させると「Gエオリアン」となるワケです。



どんな時でも、本来のモードを反転させればイイんだね!

というのは愚の骨頂です(笑)。これにもある程度「選別」する必要があるのですが、その選別とやらまで語るのは単に好みを他人に押し付けているコトに等しいので、そこまではアレコレ語りません(笑)。

しかし、手っ取り早い理解というのはですね、それらの反転させた「ミラー・モード」の7種類を今一度ご確認していただくとしてですね、仮にDドリアンを中心に見た場合、主音である「D音」を反転させた後も変化させずに基の姿を保っているのは2種類しかありません。


その「2種類」というのは、つまるところ先の譜例では上端と下端の「AミクソリディアンとGエオリアン」となりますね。


それらの2種類の反転したモードを「ドリアン視点」で見ると、AミクソリディアンはEドリアン、GエオリアンはCドリアンを包含しておりますね。


仮に、Dマイナーの曲をDドリアンで代用していたとするなら、DドリアンってAマイナーの曲でしょうか?違いますね(笑)。AマイナーとEドリアンとCドリアンってどういう音程関係にあるでしょう?




では、反転させた7種類のモードの両端から見た「五度」セパレートされた音から開始される(EとC)のドリアンはどこにあるでしょうか?


すると、F#ドリアンとBbドリアンになりますね。


ココまで来ると「縁遠い」関係にあるモードを呼び起こしているのが判りますが、勘の鋭い方ならジョン・コルトレーンを想起するかもしれません(笑)。


となると、もうお判りですね。ミラー・モードの導入やら、左近治がこれまで言及してきたハイブリッド・モード(ミクソリディアン+エオリアン)やら、チェレプニン・スケールの情緒を得るための扱い等(笑)。


無論、これらの反転したモードを導入すると、「ハミ出す」音があります。

本来の姿として聴かせている姿からどうしてもハミ出てしまう音、ってぇこってすな。


この扱いを手なりで弾いているだけでは、「さっきからコイツは、メジャーもマイナーもわからねえんじゃねーか?」なんて思われかねない音弾いてしまったら本末転倒ですね(笑)。楽理も知らぬオーディエンスからここまで揶揄されるようなら導入しない方が良かった、ってなりかねません(笑)。


そこで必要なのがモーダルな情緒を得る感覚とやらを養う必要性が出てくるワケでありますが、チャーチ・モードの世界観(反転前の)だけにもたれかかっているだけだと、到底こういう感覚を身に付けるコトはできないでしょう(笑)。


しかしながら、この感覚というのは各自で研究する必要がありまして、教えたトコロでどうにかなるってぇコトじゃないんですね。

好きな異性へのキスの仕方も判らない、だからと言ってお母さんに訊いたり試したりするのはお門違いなワケでありまして、お母さんに訊いたところで恋愛術を会得できるワケでもないのは明白ですね(笑)。


ケツ拭いてやるからクソしてみろ!と仰ってくれる方に教わるというのなら別ですけどね(笑)。


親に「シーッ」と言われなければションベンもひることのできないワケではないでしょうし、今回このようにミラー・モードを列挙しても扱うことのできない人の方が大多数だと思います。使い方すら会得できないのであれば使わない方がマシなのでありますので、副作用の方が心配なので、こうして留めている左近治であります(笑)。




こちらのデモは、モードの捉え方をネコの目のように変えてみた曲のサンプルを、手前味噌ではありますが聴いていただくとして、今回はシメることに(笑)。