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四半世紀ほど前をふりかえる [クロスオーバー]

民主党が圧倒的勝利をおさめ、左近治自身興奮冷めやらぬ状態であります。まあ、この思いを形容するならば、サッカーの日本代表が初めてW杯出場を決めた時の興奮に値するものだと思っております。政治的な面と社会を投影してみると、私が政治に興味を持ち始めたのは大平首相の頃(笑)。この頃は天体観測の趣味もあった左近治にとって、スカイラブやらパイオニア11号やらボイジャー1&2号というビッグなニュースもあって、「一体新聞何誌購読してんの?」というくらいスクラップ・ブック作りに躍起になっていたのもあって自然と政治関連にも興味を持ち始めた、というワケであります。

まあそうして音楽に完全に没頭するようになり、YMOが解散(散開)を決めた時の頃には、中曽根元首相には失礼ですが「中曽根泣かそーね!」とか友人の間で下らないギャグを言っていた学生時代を送っていたモノです(笑)。


そうして1984年を迎え、YMOというバンドが解散しその後の音楽(特にシンセ面)ではどういう風に変革が起きるのだろうか!?という期待感というものも抱いていたモンです。

ベースという楽器を弾くことにおいて、シンセ面のことなど殆ど無縁に等しいワケでありますが、キング・クリムゾンの来日でトニー・レヴィンがスティックとmoog sourceを弾き分けているプレイに感銘を受けた左近治(同時期にガゼボも好み、先のブログのような内容になる、というワケです)。

それと同時にトレヴァー・ホーンがフェアライトCMIを巧みに使い、シンセ界はモロに影響を受けて、音楽そのものがデジタルの波に飲まれていくような潮流を経験したモノでありました。


その後のDXサウンドのブームも並行していたものの、いつしか飽きられ数年で終わり、スネアの音はゲート・リバーヴの音が胡散臭く感じられるようになり(笑)、ガッド系のようなリング・ミュートを利かせたファットなスネア・サウンドも飽きられ、世のスネアの音は段々ハイピッチ&ゲートによるタイトな音になっていくようになりました。

ハイピッチのスネアで顕著だったのが、アナクロ・ブームが到来する前にニュー・ジャック・スイング系でもてはやされる音がありましたが、それと並行するかのように、スタジオのアンビエントな音の演出(つまり自然な残響)が定着していくようになって、この音がその後の60~70年代回帰系アナクロ・サウンドや、KORNに代表されるようなミクスチャー/インダストリアル系の音やらグランジ・サウンドが定着するようになり、今現在はそうした枠の派生的な状況にあると思うのであります。


デジリバと形容される、リバーブの海のような音というよりはリバーブ・タイムが短めだったり、アーリー・リフレションの音を演出して今で言うスラップ系の残響が次第に好まれるようになり、SSLからDAWによるオートメーションによるギミックが定着するようになり、デジタルのEQ系のフィルタリングが破綻せずに技術力が向上して、エイリアス・ノイズ対策やらノイズ・シェイピングの技術が向上してきて今がある、というワケですな。


ところで、それらのエイリアス・ノイズ対策やらノイズ・シェイピングの技術向上というのは、DAWの黎明期ではプリプロという言葉が定着する前くらいの時代、デジタル・サウンドを扱うという意味においてのワード・クロック同期やら、可聴周波数帯域に現れるノイズ・シェイピングのクセやらエイリアス・ノイズ対策ってそれほど声高に語られていなかったと思いますし、その当時のデジタル音声変換によるディザの「クセ」みたいなものも、無意識に受け入れていたようなフシがあったと思います。


昔のデジリバだって可聴帯域をフルレンジでデジタル処理するものはウン百万円するようなモノでも存在しなかったでありましょう。リバーブではないもののTC-2290のようなディレイ・サウンドの圧倒的な音のレンジの広さは圧巻でしたが、リバーブとなるとまだまだフルレンジでデジタル処理を施すのは難しかった時代だったと思います。


SPX90やらSPX90IIだって、デジタル部の周波数帯域など上限が12kHz出てなかったでありましょう。


でまあ、当時のデジタル音声処理というのはそういう風にフル・レンジで変換できるものは少なく、そういう機器を用いて録音した場合、可聴周波数帯全体で見てみると、それらの機器が持つ特有の周波数レンジのクセが持つ、独特の波形が現れるモノでありまして、過去にもガゼボ関連の話題を出した時に語ったコトがありますが、聴きそれぞれのAD/DAコンバーターのフィルタリングやらノイズ・シェイピングのクセというのが波形レベルで見ると顕著に現れるCDというのが結構あったモンです。


私のそんなDAW黎明期というのはDATをコンバーター代わりにしていた時代でして(笑)、つまるところDATを録音待機状態にして5分間くらい動かして録音する、みたいなそんな時代だったんですね(笑)。


DATのコンバーターのクセも現れる、デジリバやら他のデジタル機器のクセも波形に現れる、という、まあそういう独特のクセが顕著に録音されているのが80年代中期や90年代後半には多いモノでして、そういうのをあらためて語りたいというのが今回のブログの主題なんですな(笑)。


というワケで、次に3つの周波数帯を確認できる画像を用意しますが、それらの画像は84、85年辺りにリリースされていたCDをチョイスした周波数スペクトル画像であります。3種類の画像がありますが、いずれも違った特徴を確認できるので抜粋したワケですが、本当は他にも当時のCDは色々所有しているのでありますが、この辺が一番判り易いかな、と思ってチョイスしているものであります。それらのCDの内訳はというと!?


「幻想のガゼボ」/ガゼボ

Midnight_Cocktail_35DP135.jpg


「ディア・ハーツ」/伊東たけし

Flight_in_Mistral_32DH742.jpg


「esperanto」/坂本龍一

A_Wongga_Dance_Song_MDCZ-1217.jpg



という内訳でして、ガゼボと伊東たけしは当時のCBSソニー製で84年に遡ることができます。一方、坂本龍一の方は85年(ほぼ86年)のCDであります。


例えば、ガゼボの方だと当時のCDとしては理想的な上限周波数帯のLPFで丸め込みが施されていて、特徴的なノイズ・シェイピングによるノイズ・フロア底上げのような走査状のスペクトルもありません。

一方、伊東たけしのCDの方だと18kHz近辺に特徴的な線が走査状に走っております。この手の走査線が古いデジタル録音だと多く見られるワケでありますが、マスタリング過程におけるデジタル処理によるものか、レコーディング時の外部デジタル機器によるクセによって生じてノイズ・フロアに現れている底上げによるものかは判りませんが、このような特徴的な走査線というのは古いAD/DAコンバーターには多く見受けられるモノであります。


そして最後に坂本龍一の方だと、レコーディング素材でDATやフェアライトCMIなどの他のデジタル機器のそれの特徴的な走査線が12kHz~上限の範囲でいくつも走っていることが確認できると思います。


今現在のレコーディングシーンにおいてもアウトボード類で古いデジリバなどのデジタル機器を用いると、それらのような特徴的な走査ノイズを確認することができます。そのようなデジタル機器(エフェクト類)をイミュレートしたプラグインなど現在は多く存在しますが、このような走査線までエミュレートしているものは私の知る限りありません(笑)。ノイズ・シェイピングのアルゴリズムに関しては違うタイプでプログラミングされているからではないかと推測しますが。


というワケで、概ねノイズ・フロアの底上げやノイズ・フロア近辺のディザの「乗り方」の当時の特徴的なアルゴリズムが招く周波数スペクトラムということが著しく音質を損なっているというコトではありません(笑)。ただ、デジタル音声処理の黎明期~発展途上期のモノはこの手の特徴的なスペクトルを確認することができる、ということを述べているので誤解のなきようご理解いただければな、と。


まあ、そんなこんなで懐かしいCDを抜粋したワケでございますが、特に伊東たけしの「ディア・ハーツ」ってぇのは、当時のサントリーのウイスキー(ホワイト)で本人もリリコン用いて出演していたのが懐かしいですね。

ザ・スクエア(現T-SQUARE)の曲や、本アルバムに収録されている「Bruce for Lee」という曲が使われておりましたっけ。私がポール・ジャクソンJrを初めて聴いたのがこのアルバムでもあった当時でした。全体的にはナベサダ風のチューンが多いですが、私個人は「Say It Again」という曲が今でも非常に好きであります。


Fairlight_ARP2600.jpg


とまあ、本文が非常に長くなってしまったこともあり、骨休み程度に今回は音色ネタを提供させていただきますのでお楽しみいただければ、と思うワケでありますが、まあ当時を振り返っているのもあってフェアライトCMI系の音なんぞをARP2600Vで再現したのをアップしてみましょうか。


画像はARP2600Vのモノで、2つの画像を連結しているので途中、パッチング・ケーブルが寸断されているものの(笑)、実際には繋がっているので誤解のないようにご理解ください。


この手のCMIサウンドは、今ではLogicProのEXS24mkIIにおいても標準で付属しておりますが、サンプリングではなくシンセで再現したいな、と思ってわざわざARP2600を用いているのでありますが、複雑なパッチングを施さなくともあの手の音はすぐ得られます。

ティアーズ・フォー・フィアーズの「Shout」のあの音、みたいな(笑)。E-muのVintage Keysをお持ちの方ならすぐに連想できると思いますのでお楽しみください。

なお、上記の画像は、ARP2600V側で5ボイスのユニゾンでお試しくださいね♪