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免疫 [サウンド解析]

今回、渡辺香津美の「Synapse」の制作において少々注意を払った部分は、まずローズはサチュレーションを掛けた音にするコトをまず第一に心がけた部分でありましょうか。

で、サチュレーションを得るのにヒントにした曲というのがありまして、Incognitoのアルバム「Who Needs Love」に収録の「People At the Top」という曲のローズの音。コレを参考にさせていただきました。インコグニートの原曲をご存知の方なら「全然違うやん!」と思われるでしょうが(笑)、音作りにおいてその通りの音ではなくとも方向性を探る意味で触発されたりする曲というのは人それぞれそういうイメージを持っていると思うんですな。

メロディに使っている音は、こりゃもうARPの音なんですが、当初はSynthi AKSの音のイメージでやってみようと思ったのでありますが、ARPサウンドにスプリング・リバーブの方が郷愁を誘うだろーなー、と思ってこうして作ってみたワケです。

サチュレーションをふんだんに活かしたローズの音ってぇのは、ある意味私にとっては

「安らぎを与えてくれるディープなお爺ちゃんの声」

みたいなイメージを持っているトコロがありましてですね、例えば歳をいくつ重ねようとも声だけで女性をメロメロにさせてしまうような声の持ち主の方いらっしゃいますね。概ね低い声なワケですが、声帯のザラつきやら、おいしく疲弊したしゃがれ具合、胸腔と鼻腔にほのかにレゾナンスを感じる「あの」感覚(笑)。

声だけで老若男女問わずして心酔させることのできる声というのは実に魅力的なモノでありますが、ローズの音ひとつ取っても似たようなモノを求めているようなモノでしょうか。

ま、何といってもこの曲の良さは先にも語ったように、シンプルなメロディラインなのに非常に巧みなコードワーク。しかも、巧みなハーモナイズではありましょうが、仮に単旋律だけで弾いても、その巧みなコード感覚を有していない人にもそういう感覚を呼び起こしてしまうような、自然で、どこか郷愁を覚えるというモノと形容したのでありますが、コード進行自体は

C△7 à A△7が2回続いて、その後Dm7(9、13) à F#7(#9、b13)~

という風に続いていくワケですが、こういう和声を与えなくとも、あのメロディを爪弾くだけで、イメージは抱いていなかった心の深遠に眠っていた高次な和声を呼び起こさせてくれるような、非常に自然なものだと思うんですな。

楽理的側面どころか音楽を聴くという耳は習熟には程遠いような周囲の人間に聴かせてみても「すごく良い曲」と感想が返ってきます。

つまるところ、シンプルなメロディに誰もが思いつくような、終始調性が統一されてしまっているかのような音楽とは程遠い和声であっても、こういう和声の移ろいを許容できる感覚は本来誰もが有しているのではないかと思うワケでありまして、こういう曲が、感覚をさらに研ぎ澄ますための入り口として触れ合うことができればよいのではないだろうか、という左近治の配慮でもあります(笑)。

覚えやすい曲とありきたりなコード進行というのは全く別物であると私は感じているのでありますが、過去にリリースされた名作の数々が築き上げてきた世界観というものが時には音楽ジャンルだったりアーティストとしてのキャラクターであったりするワケですが、そんな整備された世界を「マネ」して自分の曲にパクってるだけのような曲というのがチャート・シーンに登場しているのが殆どでありましょう(笑)。

そんなモン、ずーっと聴いていれば和声感覚も停滞してしまうかもしれません。少なくとも音楽をより深く楽しめるようになってくれば、和声的な感覚も研ぎ澄まされていくと思うので、そういう感覚を錆付かせるコトなく音楽を聴きたいな、と。

曲のトーナリティーが最初から最後までブレることなく、誰もが想起し得るようなストーリーの4コマ漫画みたいな曲を聴いていてもつまらないでしょうし、時間の無駄ですよ(笑)。

ジャズなんてぇのはトーナリティーはコロコロ変わるのが殆ど。多くの人というのはトーナリティーつかみきれずに「外した音だらけ」程度にしか聴こえず、それが高度なインプロヴァイズにて用いられている音であっても「偶然を待つだけのような説得力のない音」とまで言い出す輩が居たりするのだからタチが悪い(笑)。

ジャズに限らずクラシック音楽にしても、途端に調性が希薄な作品になると全く声を上げるコトもできずに差し障りなく「無調」だのメロディアスではないだの、もはや感覚的だけでしかない論評など全くアテにならないモンですよ(笑)。特に夜中のテレビショッピングなどで取り上げるようなCD○○枚組クラシックorジャズ!とか買っちゃうヒト(笑)。

6月10日でしたっけ。ブルーノートの廉価版が1枚1100円税込みで50タイトルリリースされますが、50枚全部買ってもたったの5万5000円。1500番台から4000番台辺りをセレクトしたものであるので「これで1500番台の内の50枚集まったぜ!」とか思うようでもマズイのでありますが(笑)、報道ステーションのBGMでよく流れているようなジャズは、この辺押さえておけば取り敢えずは間違いはないとも思えますのでこれを機会に触れてみてはいかがでしょうかね、と。ちなみにRVGが廉価版になっているワケではありませんのでご注意を(笑)。RVG全てがイイとも言いませんが(笑)。

仮に私がブルーノートから50タイトル選べ!と言われたら、今回リリースされているのに含まれるのは8タイトルだけなんですけどね(笑)。左近治の場合チョット聴き所が違うかもしれないのでアテにならないと思います、ハイ。

ジャズ・シーン辺りで耳にしないようなハーモニーなど、本来はその手の和声感覚は誰もが有しているはずで、ソコに鋭敏になった人が好む音楽というのは概ね似てくるモンです。

さらにソコから毒を見出すのが左近治だと思っていただければ幸いです(笑)。

お婆ちゃんの手垢と手のひらの出汁が一杯詰まったおむすびやうどん。潔癖症な人はダメかもしれませんが、それは愛情ですぜ(笑)。かけがえのない「旨味」、時には運悪く本当に毒となってしまうかもしれませんが、毒を許容できる免疫鍛えなきゃね、と。