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ホールトーン・スケールからの応用 [楽理]

今回は、ホールトーン・スケールについて語るワケでありますが、あまりにベタなホールトーンを提示しても面白くないと思ったので、ホールトーン・スケールを少々穿った見方したらどうなんねや!?という所から始めてイコか思てます。

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のっけからCホールトーン・スケールをデカデカと載せておりますね(笑)。コレを等しく半音上げれば、世に使われているホールトーン・スケールの音全てを満たす(笑)、とまあ局面においては非常に便利なスケールなのでありますな。ホールトーン・スケールの第6音は「増六度」なのでありますが、シーンによってはこれを短七との異名同音として「拡大解釈」することで、概ねドミナント7thコード上において手っ取り早くオルタード用いるような利便性の高い使い方もあるワケですな。

今回、ホールトーン・スケールを用いた応用というのは、左近治がよ~く使う、自分に都合良く解釈したホールトーン・スケール使い方でありまして、先に結論から言ってしまうとですね、まあ、6音で構成されている全音音階のどこかに1音追加するワケですわ。

そうして7音構成の「特殊な」スケール作って特殊なモード使うのもアリなんですが、7音構成のままだと半音音程が連続する音列を生むコトになるんで、この情感をコントロールするのは最初からコレだと敷居高すぎるかもしれないとも思えますし、追加した音のそれを、半音上下に存在しる基の音からの「変化音」として使うと、もっとシンプルに、且つ大胆に「別の世界」を見出すコトが可能であるとも言えるので、今回はこういう用法にて進めていこうかな、と。

追加した音を元の音との変化音として使うということは、音列そのものは6音のままってぇこってす。注意が必要なのは、基本音の上下半音に追加した時(譜例の場合はC音の周り)、基本音を変化させてしまうと、基本音が無くなってしまって、アンサンブル中の他のパートの「忠実な」C音によって情感変なモノになりかねませんので、配慮ある音の追加&変化をさせなくてはなりません(笑)。


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んじゃ早速、譜例の「fig.1」から解説してみましょうか。

「D#」に音を追加していて、それを「D音の半音上げ」と解釈した音列です。例えばこれはCをルートとするコード上ならば、おそらくはシャープ9th系(=ドミナント7thシャープ9th系)のコード、もしくはそういうアプローチにつながる、というワケですな。

ただ、この音列で興味深いのはEをルートとするコードではEaugという増三和音において長七と増五度を使えるアプローチとして有用なモノでもあります。

ココんところセカンド・ベースについて語っていたので、チョットしたネタばらしをするとですね、

E△7(+11) or E△7(+5)/F#

という、リディアンorオーギュメンテッドなメジャー7thの2ndベース上で用いるコトも勿論可能となるワケです。使用頻度は結構高いですね、コレは。同様にセカンドベース系で見立てるなら

F#7(+11、13)/G#とか

Ab7/Bbとか、非常に使用頻度の高いと思われるコードで用いるコトも可能なワケですな。



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扨て、次にfig.2の音列を見ると「Cリディアン・オーギュメンテッド・スケール」が何となく見えて来るような気がしますね(笑)Aメロディック・マイナーのモード、というワケですな。


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更に、fig.3の場合はfig.1と比較すればもうお判りかと思います。なんとなく「Cスーパー・ロクリアン・スケール」が見えてきますね。つまり、Dbメロディック・マイナーのモードというコトです。ハイ、これが今回のチョット重要な部分です。


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fig.4の場合は、Cを基本音としながらどことなくハンガリアン・マイナーの7th音がフラットした音が見えて来るような音列になっております。


ちなみに、短三度音程を持つスケールは代表的な所ではハーモニック・マイナー・スケールというのがありまして、それから生じるモード・スケールにはハーモニック・マイナー完全五度下とかそういう名称が一般的ではありますが、場合によってはそれをフリジアン・ドミナントという呼び方があったり、本当の意味でそれらの名称が統一されているワケではありません。

同様に、左近治がこれまで提示している短三度音程を持つスケールで「ハンガリアン・マイナー」という音列の名称も実際にはそれほど市民権を得ているワケではないでしょう。別名のジプシー・スケールという呼び名も同様に。

さらにはオーギュメンテッド・スケール(6音音階)だって、地域やシーンが変われば別の呼び名が与えられているコトだってあります。


それらを踏まえた上で誤解されぬよう、あらためて明記しておきますが、左近治がCハンガリアン・マイナーと呼ぶ時は

C、D、Eb、F#、G、Ab、B


という並びのコトで、先述のハンガリアン・マイナーの7th音がフラットした、という音は上記のB音が「Bb」というコトを示しています。厳密にはこの音階にも名称は与えられているシーンはあるとは思いますが、この他にも短三度音程を含む音階というのはありまして、それらが市民権を得るほどポピュラーになっているとは思えないため、名称を与えずに語っている所にはご注意くださいね。

故に、過去にウォルター・ベッカーの楽曲分析においても、ハンガリアン・マイナーの第7音がフラットした音、とか名称を与えずまわりくどい表現になっているのは、混同を避けるための配慮からであります。多くの別名を丸暗記してもそれは知識として役立つことはあるかもしれませんが、これで何らかのライセンス取得やら試験の合否を左右するというシーンならさておき、重要なコトは音そのものの方なので、私は音そのものとその音の実例の方を重視しているのでこのような解説になってしまうというワケでありますので、ソコんところはご了承願いたいな、と。


で、ハナシを戻しましてですね、先ほどのfig.1とfig.3の比較でもあったように、ホールトーン・スケールの音列のそれとメロディック・マイナーの音列の近親性をムリヤリ一緒にしたような解釈なワケですな、ある意味では(笑)。


全音音階(=ホールトーン)なワケですが、7音構成の音階において全音音階に匹敵するほど全音音程が連続する音階はメロディック・マイナー・スケール(またはそのモード)なワケですな。


あるシーンにおいてホールトーンを用いようとする意図、というのはそのシーンにおけるコード上での音の近親性を狙った上でのコトでしょうから、ホールトーンを使おうと狙いがあるはずでして、一般的にジャズ的な耳を有していない人でメロディック・マイナー・モードをつらつらと操ることのできる感覚を備えている人にはそうお目にかかったコトはありません。

ただ、ホールトーンが合うor合わないを見抜くことのできる人というのは意外と多いワケですから、ホールトーン・スケールを用いるかのようにメロディック・マイナーに触れていただきたいな、と。そういう配慮からの、今回の穿った見方だったワケであります。



つまり、Cホールトーン・スケールの「D音を半音上げ」ました。

基からあったD音は変化しているワケですが、先の半音上げを「追加」とみなして、基のD音をさらに半音下げました、と。


ココに追加(または変化)するだけで、Cスーパー・ロクリアンつまり、Dbのメロディック・マイナーから生じるモードを操ることができるワケでして、何も音をD音の部分だけに着目してはいても、これは同様に他に音を継ぎ足せる(変化させる)コトができるワケですね。

そうすると、メロディック・マイナー的視点で見ればアチコチ与えることができるワケですね。


リディアン・クロマティックという理論は、例えば私が以前にも批判したように、与える音が単音の場合、その音に対する共鳴度は必ずしも完全五度上だけでなく、下にも共鳴を探ろうとするワケです。つまり、C音が調的なコトなど全く無視して単音として鳴っている時、そのC音に対して完全五度上のGが共鳴度があるという考えで5度を積み上げる前に、完全五度離れた「下」のF音にも共鳴度としては同様に扱う必要があるだろ、と。

つまり、6回完全五度重ねてF#音の登場を待ち構える以前に、C音が単音であった時の上下等しく完全五度ずつ離れた所に「共鳴度」たる等価な音を与えたら、F#音の登場以前に結局Cメジャーを確定してしまう、という矛盾があると過去に述べたことですな(笑)。

同様に下にも完全五度ずつ下がって追加していけばミラー・モードを生じるますしね(笑)。

ただ、過去にも述べたように、リディアン・クロマティック・コンセプトを「肯定的に」利用しても、同じ道は結局辿ります。アウトサイドと言いますか、調性を拡大するための世界としての道は結局同じ所には行きます。


同じコトを述べるにしても、お母さんとお父さんの言い方に違いがあるようなモンだと思ってください(笑)。ホールトーン・スケールからメロディック・マイナーを必ずしも見出せるのか、というとそれは違います。

但し、今回の例のように、絶対ではないものの「メロディック・マイナーを内在」しているシーンがあるのに、その世界を強調することなく通り過ぎるというのが一般的な音楽なワケです。


そもそもホールトーン・スケールが合うようなコードというのが大半がドミナント7th上では、ドミナント7thのドミナント・モーションに情感持って行かれる方が私は嫌いなワケでして(笑)、どうにかして他の情感引っ張ってきて拡大解釈した方がまだマシ!と思っているのが日常なので、ある意味では非常に回りくどいのかもしれませんけどね(笑)。

今回のこれと同様に、オーギュメンテッド・コードにおいても穿った見方していただけると面白い世界が開けていると思います。


扨て、今回の話題を突き詰めて行くとしまして、譜例を見ながらもう一度おさらいすることにしましょうか。


fig.1・・・Db音を追加するとCスーパー・ロクリアン
この音の決め方は、ホールトーン・スケールの各全音音程のいずれかに半音音程となる1音を追加している例。この場合Ebを追加しているワケですが、追加した音の半音下の基の音を半音下げる、というやり方です。

※実際の譜例は6音構成ですので、さらに追加すべき音はきちんと文章をお読みの上イメージしてくださいね


fig.2・・・Cホールトーンの第6音を半音上げたもの
fig.3・・・Cホールトーンの第2音を半音下げたもの
fig.4・・・Cホールトーンの第3音を半音下げたもの


fig.2~4については今回詳しく語りません(笑)。fig.1のやり方を今回は掘り下げることにします。


仮に今回、ホールトーンを用いようとしたシーンがドミナント7thコードだとした場合、fig.1と同様のやり方で音を追加して、本来のコードとマッチする音が得られるのは他にもあります。

fig.1の例だとEbに追加している一例でありますが、これと同様にF、A、Bの部分が追加していくことが可能な所です。

無論追加した音の半音下の基の音をさらに半音下げる必要が出てきます。

そうすると、fig.1にDb音を追加した音は、追加した音こそDbですが異名同音のC#メロディック・マイナーとなりまして、追加した音の全音下にメロディック・マイナーを形成していると思っていただければよろしいでしょう。同様にCドミナント7thを基本とするならば、それらにマッチするのはEbメロディック・マイナー、Gメロディック・マイナー、Aメロディック・マイナー(fig.2)という4つのメロディック・マイナーをCホールトーン・スケールから「拡大解釈」することができます。

元々Cドミナント7thで遊ぼうとしていたのなら、こういう見立てを可能とするだけでも世界観が広がるのではないかと思います。まあ、こうして私が提示している時点でこの一定のルールは「形骸化」となるワケですけどね(笑)。ただ、ジャズ理論を少々齧った方でもこういう見方はあまりしないのではないかと思うんですな。拡大解釈とはいえひとつの世界から4種類の違った角度を向くコトが可能となるワケなので。


これらの例から判るように、ホールトーン・スケールのいずれかの1音を半音上げた際は、その全音下に音を追加する、という見方として可能なことが判りますが、基のホールトーン・スケールのある1音を「半音下げて」且つ、その音の全音下に音を追加すると、とても特殊な音列が生じることが判ります(笑)。全音上でも同様に変わったモードを形成することになります。


基のホールトーン・スケールの音を「半音下げる」見方をする時に私がよく用いるのは、メロディック・マイナーとしての拡大解釈ではなく、今回のとは別にハンガリアン・マイナーを見立てる時などに用いる場合だったりしますが、ホールトーン・スケールからいかにポジティヴに拡大解釈して世界観広げるか、という所が今回取り上げたコトなので、今回と同様にハンガリアン・マイナーまで応用させることが可能となるワケであります。


ただ、ハンガリアン・マイナー・モードを扱う際、スケールとしての情緒は非常に色濃いものでありますが、モードを保って和声を形成する場合少々扱いづらい音並びだと思いますので、今回はメロディック・マイナー視点に的を絞ってはいるものの、見方はそれだけではないという事も強調したかったワケであります。

更に言えば、今回はひとつの音の追加や半音上下の変化に的を絞っているのでありますが、これを更に拡大解釈して、ハーモニック・メジャーの第4音を半音上げた特殊なモードにまで発展させることが可能ですが、この特殊なモードは長七度音程が重畳するようなハイブリッド・コードや、一見するとメジャーとマイナーが混在するような増九度音程の拡大解釈を用いた和声の導入を視野に入れているコトなので、今回の用法とは全く別の視点ですのでソコまでは言及しません(笑)。


いずれにしてもホールトーン・スケールというのは今回提示した譜例のCホールトーン・スケールとDbホールトーン・スケールという2種類を用意すれば12音全てを網羅する、たった2種類の世界観で全てになってしまうという音列を基に語ったワケでありますが、そんなたった2種類で全てを網羅するホールトーン・スケールという観点から見れば、今回の4種類のメロディック・マイナーは計8種類見立てることが可能とも言えます。

この8つのメロディック・マイナーの世界観というのは言い換えるなら、通常長調と短調に分類される調的な世界は24種類あるワケですが、今回のメロディック・マイナーの視点はそれらの世界観を8つに凝縮した世界観と思っていただければイメージしやすいか、と思います。

8種類のメロディック・マイナーで全てを語っている、というワケではありませんよ(笑)。メロディック・マイナーは実際にはCからBまでの12種類ありますし、そういう意味ではなく、通常の24色の色鉛筆を違った色の8つに分類したようなイメージと思っていただければよいかと思います。返って判りづらい比喩かもしれませんけど(笑)。




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でまあ、さらに今回はよくありがちなコード進行において先の例のようなアプローチを試しているデモを用意したので、その辺りを聴いていただければな、と思います。



デモに用いたコード進行というのは、1小節に1コードというコード進行で「Gm7 --> C7」という、Key=GmにおけるよくあるGドリアンのコード進行ですね。

先の例に則れば、C7というコードの所で「C#、Eb、G、Aの各種のメロディック・マイナー」を当てはめるコトが出来るワケでありまして、C7においてホールトーン・スケールを弾く、という本来の目的を満たすには「Ebメロディック・マイナー」を弾けば元々のホールトーン・スケールを用いようとする意図の特性音を満たすことができるワケですが、今回は敢えて「Ebメロディック・マイナー」は避けております(笑)。

また、譜例ではC7部分においてGメロディック・マイナーを当てはめているのが2回出現しておりますが、Gメロディック・マイナーと書いているものの、コレは「Cリディアン♭7th」のアプローチでありまして、C7におけるこのようなアプローチはポピュラーな使い方だと言えます。


各コードにおける「C7」の部分は実際には8分食ってます。つまり8分のシンコペってこってすな。左近治のデモではGm7のコード出現時においても遊んでおりますんで「何でこんな音使うねんな?」と思われる方もいらっしゃると思うので、その辺も併せて解説しておこうかなと思います(笑)。


その前に、各メロディック・マイナーの方で注意すべき点を語っておこうと思いますが、「Aメロディック・マイナー」の部分は特に注意が必要なので敢えて声高に語ります。Aメロディック・マイナーの第2音=B音は、C7の7th音であるBbとぶつかりますので、本来はアヴォイドです。ですので、Aメロディック・マイナーの2ndをオミットした音選びが無難なんですが、私はドミナント7thコード上(この場合C7)のナチュラル11thよりも長七の音(つまりC7におけるB音)はアヴォイドという意識は抱いておりません(笑)。つまり、使っちゃってます(笑)。

ただ、使い方によっては非常に強固な不協和な音になると思うので、これを導入するには前後のフレージングに工夫を施さないとダメだと思います。各メロディック・マイナーにおいてこのAメロディック・マイナーを使う時は少々注意が必要ってぇこってすな。


譜例の3小節目部分は、Gm7上でGメロディック・マイナーとGドリアンを使い分けつつ次のCリディアン♭7th(=Gメロディック・マイナー)に行っているアプローチであります。

また、5小節目部分は、チック・コリアのアレですね。「IIb - Vb - I」のコンバージョン。私の場合はミクソリディアン+エオリアンというハイブリッド・モードを見立てる、というこれまで何度か解説しているアノやり方ですね。私がそんなハイブリッド・モードを見立てているのは、ミラー・モードを想起しうる基準となる基のコードとの音程関係やら、エオリアンとミクソリディアンをその後それぞれミラー・モードを想起した時に扱いやすさ故に便宜的にそのように呼んでいるだけですので、そこの所はご注意ください。この用法については過去にやってきているので今は語りませんが(笑)、ドリアンの音並びってぇのは上からも下からも音程関係は対称的になってしまうんで、それをいくらミラー・モードにしてもムリがある(笑)。ミラー・モードで用いる際の利便性の高いふたつのモードをハイブリッドさせた見方だ、という事を今回あらためて補足しておきたい部分ですな。故に、こうしてGm7でアウトできるワケです。

7小節目はb5th音を使いながらブルージィさを演出しながらキワい音使っている(途中でC#ドリアンを弾く)様子を垣間みるコトができます(笑)。


今回の左近治のデモよりもイイ音選んでフレージングできるぜ!っていう方もいらっしゃるとは思いますので、左近治のフレージングの質そのものに難癖付けていただいても困ってしまうワケですが(笑)、他の世界を見立てることと、ホールトーン・スケール用いるかのように大胆に扱う別世界の視点というのをあらためて導入すると、そんなコトが判らないほど実はマッチするものだと思っていただけるだけで私としてはコレ幸いなんですな(笑)。