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ハミ出し [プログレ]

ug.jpgまあ、前回はチラッとジェントル・ジャイアントについて語ったワケですが、先のGGの出自のアヤシイものを引っ張り出して確認してみたら、Studentkaren, Stockholmとなっておりました。

あ、画像はですね、いわゆる出自のアヤシイってぇ言ってるアルバムです。「アンダーグラウンド」ってタイトルがこれまたヒネリの無い(笑)。

ケリー・ミネアーの技法についても少し語ってみようかと思うんですが、とりあえずこの方の対位的なアレンジは学ばされることが多いものでありまして、それがポリ・モードであり、結果的に対位法・フーガというような技法において構築されたモノなんですな。

例えばCメジャー・キーにおいて単旋律で「ド・レ・ミ・レ・ミ・ソ」みたいに、符割はどうでもいいんですが、こういうフレーズがあったとします。

この単旋律に今度は3度でハモらせてみましょうか。

モード・スケールを維持するなら「ミ・ファ・ソ・ファ・ソ・シ」という風に与えるコトになるワケですが、ポリ・モーダルな世界の場合、つまりは対位的なアレンジを導入した場合、関係調や近親調を視野に入れて「他の調性感」という情緒でフラつき(=彩り)を与えるようなシーンもあるため、モード・スケールを維持した先の3度のハモり部分は「ミ」から見ればEフリジアンを想起しているワケでありますが、ポリ・モードの側面で考えればEフリジアンを例えばEエオリアンに「移調」してみたりというコトもあります。

すると「ミ・ファ#・ソ・ファ#・ソ・シ」というコトになり、全体から見ればハ長調の調性とはハミ出てくるワケですね。これはあくまでも二声でのほんの一例ですが。

ハモり側をさらに「輪唱」のようにしたりすればさらに彩りは増すでしょうし、総体的にさらにモード・チェンジを余儀なくされる場合だってあるでしょうが、二声でふたつのポリ・モードでもコレだけ複雑化するのに、三声・四声における3つ&4つのポリ・モーダルな世界というのは、まさに「ミウラ折り」を広げて見ているような世界観と形容できると思います。

無論、フーガなんてぇのは最たるモノなんですが、この手のプレイをサラリとこなせるのが凄いと思うんですな。私なんぞ譜面とにらめっこしながら机上で熟考に熟考を重ねて相当時間費やさないとムリでありましょう(笑)。

こういう対位的な扱いというのは、カンタベリー系でも各パートであったりして、その高度な「計算」がジャズの自由度とは違った世界のものでありまして、仮にインプロヴァイズであろうと、その対位的なフレージングをこなせる技量を伴っている人が多いのがカンタベリー系と言っても差し支えないと思います。

ジャズの場合は各プレイヤーの発想と技法に委ねている部分が多いので、それとは違って来るワケなんですな。和声的には双方の世界で同じ音だったとしても、です。

希代のジャズ・プレイヤーが築いてきた音というのはイイものなんですが、それが形骸化しているんですよ、今では疾っくに(笑)。この形骸化されてしまっている世界のぬるま湯に浸っている連中が、私のよく言う「ジャズ屋」でありまして(笑)、ホントのジャズではないと断言しちゃいます(笑)。


「ジャズに恨みでもあんのか!?」


なんて思われてしまうかもしれませんが、私とてジャズ好きのひとりではありまして(笑)、その辺誤解してもらいたくはないんですな(笑)。


楽器を手にして覚えたての頃など、自分の好きなミュージシャンと同じポジションで(=フレット)で同じ音出しているだけでも喜んでいたりした時代があったモンですわ。で、実際に出て来る音はエフェクトの違いなど差し引いても「なにゆえ、こうも違うのか?」なんていう刻苦を回想できることが、鍛錬の証だとも思うんですな。


これまで、左近治は時間を費やして楽理的側面を強調しながら音楽を語っているワケでありますが、例えばヒンデミットのオーボエソナタとの出会い。

第一楽章からは、倍音の構造と差音による諸問題を回避したヴォイシングを学べることができ(音程根音による調性の軸と、それとは別の調性に寄り添わせるコツ、とでも言えばイイでしょうか)、さらには第二楽章で、コルトレーンやビル・エヴァンスすらも霞んでしまうくらい、全てを包括したようなアプローチ(コレはチック・コリアのIIb - Vb - Iのアプローチや私がこれまで語ってきたのハイブリッド・モードやらの世界観を全て、しかもたった1小節で表現しています)を見出せることができるんですな。

ブルーノートの希代の名盤を何枚集めても得られぬほど、ヒンデミットのオーボエソナタというたった2つの楽章だけで、得られるモノはとてつもなく大きかったんですな。それを理解するのに、ウェイン・ショーター、チック・コリア、ハービー・ハンコック、アラン・パスクァ、クレイグ・ダージ、坂本龍一、ウォルター・ベッカーという人達のクッションが必要だったワケでありますが(笑)。

因みに、ヒンデミットにご興味のある方は「Sonata for Oboe and Piano (Klavier)の第一楽章と第二楽章をそれぞれ楽譜と一緒に聴くのをオススメします。ショット出版で入手可能ですので。

ヒンデミットのそれを「読み取れた方」というのは、ジャズ界やらの前述の人達の特徴的な音の根拠など、すぐに見出せるはずでありましょう。

たった1曲の、しかもたった1小節に、これまでの音楽人生すら吹き飛んでも足りない位、学ばされることが多いです。ホントに、ヒンデミットからは。