SSブログ

Hexachord(=6音音階)から見えるもの [楽理]

ヘクサコードとは6音音階のことを意味します。代表的なのが「Augmented Scale」でありまして、ハービー・ハンコックが顕著に用いるものでありますが、今回はそのAugmented Scaleを例にどういう世界が見えるのかを語ることに。

オーギュメンテッド・スケールのテトラコルドというのは、短三度→半音→短三度→半音・・・という繰り返し。つまるところCから始めた場合は

C - Eb - E - G - Ab - B

という音列になります。

オーギュメンテッド・スケールの最大の特徴は、2全音(=長三度音程)を分割する際に「短三度+半音」という所が最大の特徴なワケでありまして、スケール的に見れば一般的な音階のそれとは違って短三度音程を含み、対称的な音並びのため幾何学的な印象を受けるかもしれませんが、実際には情緒的に扱い、アウトサイドなモードを想起する際にも非常に役立ちまして、他の調性感への跳躍する際の連結も実にスムーズなのであります。その辺は後述しますけれども。

オーギュメンテッド・スケールをモードとしてダイアトニック・コードを形成した場合2通りの考え方があります。

●長三度ずつ離れた音をルートとする長三和音を3つ生む(C△、E△、Ab△)

or

●主音をルートとする増三和音(=オーギュメンテッド・コード)と、主音の半音下をルートとする増三和音、それぞれ2つのコード(Caug、Baug ※実際にはそれぞれ長三度上下に等しく転回可能なのでEaug、Abaug、Ebaug、Gaugという解釈も可能)

加えて、増三和音として見た場合、主音の半音上に同様に増三和音を加えた場合(今回の例ではDbaug)、スケールとしてチェレプニンを生むのでこれまたお忘れのないように留意していただきたい部分であります。

チェレプニンについては過去にも述べたので、今回は短和音を中心とする所に主眼を置いているのでもっとシンプルに述べて行きたいのでチェレプニンの応用については触れません(笑)。過去のブログを呼んでいただければお判りになるとも思いますので。


この特徴的なオーギュメンテッド・スケールですが、短三度→半音という順番ではなく、半音→短三度という順序を基準にモードスケールを見立てた場合は、オーギュメンテッド・スケールの第2・4・6音から開始したモードと言えます。


そこで、短和音の世界における応用ですが、先の短和音上のアウトサイドなアプローチの実例として用意したサンプル曲にはマイナー9thコードを背景にしているのでありますが、そこで語っているハイブリッド・スケール「ミクソリディアン+エオリアン」のモードスケールの導入によってb9thと#11thをマイナー・コード上で「ぶつけて」いるという実例だったワケですが、そこには見方を変えれば「IIb - Vb」という進行でもあるということを述べました。

では、今回はそのようなハイブリッド・スケールの概念はとりあえず扨置き、「出来合い」の短和音を今一度じっくり解体してみようかと。

Cマイナーを基準としてみた場合、判りやすく「Cm9」というコードがあったとしましょうか。先のブログでも念押ししておりますが、ここでの背景として用いているマイナー・コードはトニック・マイナー及びドリアンを想起できるシーンが前提で、フリジアンを想起してしまう場面でのマイナー・コードではないのであらためて念押ししておきますね(笑)。

「Cm9」というコードの各構成音の音程関係を見ると、それぞれが長短いずれかの三度音程なのは明白でありますが、先にもヘクサコードの所で述べているように2全音、すなわち短和音の持つ「長三度音程」に今回は注目です。

すると、「C、Eb、G、Bb、D」という音程関係なので、それらの内、長三度音程というのは「Eb - G」と「Bb - D」を抜粋することができます。

それらの「出来合いの」長三度音程とやらをとりあえず「半音と短三度で」分割してみましょうや、と。そういう観点なのですな。


「Eb - G」を半音と短三度で分割すると「Eb - E - G」もしくは「Eb - F# - G」という2通りの組み合わせが生まれます。


短和音の持つ性格の「まどろみ」を利用してアウトサイド感を得ながら基の短和音の性格を失わないためには「Eb - E - G」の分割したグループだと「E音」において非常に芳しくない結果となります(笑)。これを明示的に使ってしまうと基の短和音の性格を失ってしまいますし、マイナー・コード上でたまたま経過音としてメジャー3rd音が現れることが無くはないですが、積極的に使うことは極めて稀だと思います(笑)。真冬に全裸で外歩くコトに等しいかもしれません(笑)。

とすると、「Eb - F# - G」の分割具合が宜しいかな、と。まず「Eb - F# - G」のグループをキープです。


さらに「Bb - D」という長三度音程を分割すると「Bb - B - D」もしくは「Bb - Db - D」という組み合わせが生じます。

いずれも先述のメジャー3rdのような出現がないため、これらの組み合わせも積極的に使用できます。

「背景のマイナー9thコードの9th音とb9thがぶつかってるのにかよ!?」

って思うかもしれませんが、「IIb - Vb」を想起している、或いはBbミクソリディアン+エオリアンの第2音のモードを想起しているならば、7th音とM7th音のぶつかりあいだろうがb9thとM9thのぶつかりあいだろうが、「短和音」の性格のまどろみの中ではメジャー3rd音のように拒絶するかのようなアボイドとして用いることなく使うことは可能です。フレージングとして唯のスケールの羅列だと情感は得にくいのでフレージングは重要ですが、アプローチの仕方に一定のルールを備えていればフレーズは奇麗に収まるものでして、フレージングの部分は各自研究していただきたい部分だと思います(笑)。


で、ここ数回ほどのブログで私が用意したサンプルのフレーズでは、出来合いの長三度音程を「分割」して、出来合いの短三度音程を長三度に「拡張」して、基となっているCm9(ドリアンorナチュラル・マイナー)との音列とハイブリッドさせているフレージングだったワケです。


Cm9というコードにおいて、出来合いの「短三度音程」を拡張する場合、「C - Eb」「G - Bb」の所が出来合いの短三度音程なワケですが、半音 - 短三度として拡張する場合、それらの音程の上か下に半音を拡張させなければなりません。

「C - Eb」においてE音に拡張してしまったら、さっきのアレと一緒ですね(笑)。ですのでココは「B - C - Eb」とするワケです。

同様に、「G - Bb」においては「F# - G - Bb」と「G - Bb - B」と拡張可能となるワケです。


こうすることで、マイナー9thコードにおいてb9thと#11thとM7thを使うことになりました。

ただ、私の場合は基のコードのCm9の情感を失わせたくないために、7th音とM7th音のぶつかり合いを強烈な不協和に聴こえさせたくないので、「B」ではなく「Cb」的なフレージングを用いています。そこから長三度平行に動かせば、オーギュメンテッドを当てはめて転回させつつ他の調性へ「ハシゴ」するかのように店先ののれんをまくって店内覗き込むような「うろつき」を行っているのであります(笑)。チック・コリアのそれも同様なのであります。


マイナー・コード上において容易く得られるアウトサイドの妙味で色んな角度から見たワケですが、ヘクサコードを用いたり、IIb - Vbの概念用いたり、ハイブリッド・スケール用いたりと、とりあえずは共通項となるものは判っていただけたかと思うんですな。

次回は、なにゆえ左近治はハイブリッド・スケール「ミクソリディアン+エオリアン」を用いたのか!?という所をガッツリ語ろうかと思います(笑)。