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変格旋法を思い出す [スティーリー・ダン]

楽典や音楽通論でも初歩的な段階から教わる教会旋法の「変格旋法」。いまさら私がこのブログ上で詳しく述べることなく、この手の話題が好きな方なら誰もがご存知のことだろうと思うので、そんな無粋なマネはいたしませんが、一応「変格旋法」とやらを念頭に置いていただければ、今回のブログは非常に理解が進むのではないかと思います。

扨て、早速「ミクソリディアン+エオリアン」というハイブリッド・スケールについて語ることにします。

これまで「短和音うんぬん」のアウトサイド感演出について用いているハイブリッド・スケールの背景は下記のような例だったということをあらためて述べておきます。


●トニック・マイナーおよびドリアンを想起できるマイナー・コード上の全音下からの「ミクソリディアン+エオリアン」


つまるところ、Cマイナー・キーでCm9というコードがあった場合、Bbミクソリディアン+エオリアンという、2つのモードを混合させたモードの第2音から開始していた、というコトですな。


BTW、我々はモード奏法というものを学ぶ際チャーチ・モードから覚えていきまして、トニック・マイナーがドリアンで代用できたり、フリジアンとドリアンを明確に使い分けなければならない調性感覚を掴んでいきながら習得していくと思います。

余談ですが、トニック・マイナーがナチュラル・マイナーを示唆するb6thで弾かれる場面は、主旋律そのものがb6thを経過音に用いていたり、或いはスタジオ系やジャズ系の音となる場合はb6thと9thを明示的に使用することで「オシャレ」で短音階本来の重みを活かしつつ少々毒のある使い方をすることを学びます。まあ、Cマイナー・キーでCmがあったとしたらb6thと9thを明示的に使う時のコードの実際はFm69/Cになるわけでありますな。コード表記上マイナー・コードにb6thと表記されていたりナチュラル5thを割愛した上での#5th表記とかあったりしますが、マイナー・コード上でb6thを使う場合、殆どのシーンでは実際には本来のコードの性格ではありませんけどね(笑)。Cm(b6)だったら実際にはAb△7の3度ベースという用法だったり。ただ、ウォルター・ベッカーを初め、チョット一般的ではないモードを導入しているとb6thの扱いはまた違いますが、殆どのb6th表記を用いているのはチャーチ・モードに収まった性格は別のコードとなる簡略型の表記です。


少しハナシは逸れましたが、何故ナチュラル・マイナーをドリアンで代用するのか!?


まずはドリアンというモード・スケールの持つテトラコルドが上行&下行ともに対称的であり、短音階特有の「重み」を中和してくれるというのも理由のひとつでしょう。

さらに大きな理由は、Cマイナーというマイナー・トライアドに大して上に三度音程を積み上げて行くとします。7度、9度、11度と。そうすると、本来調的な支配下にあるb6thの響きは別として、マイナー・コード単体としての響きの落ち着きを保つには13度となる方が和声単体としての響きが落ち着く、と。ここでb6thを導入すれば実際には先述のように別のコードの性格になってしまいますしね。

コード側を重視した流れだと、そのシーンでは13度の音はナチュラル6thなので結果的に「ドリアン」になりまして、ドリアンを代用できてしまうのはコードを上声部に重畳した時のマージン、または短音階そのものが「ドリアン」としての響きが広く許容されていると言えるので、そういう理由からドリアンの方が都合良く対処されやすいのだろうという理由です。

但し主旋律がb6thを示唆しているのに、ここでドリアンを代用するようでは愚の骨頂ですね(笑)。まあ、こういう人ならばドリアンやフリジアンの使い分けも全く理解していないでしょうし、先が思いやられます(笑)。


ま、つまるところ、トニック・マイナーをドリアンで代用した場合を考えるとして、仮にCマイナー・キーだったとすると、ドリアンでそれを代用した場合は基軸がCマイナーではなくGマイナーである(5度違う)ことになります。

なんかコレ、似たようなのがありますね。

リディアン・クロマチック・コンセプトというのは、倍音列において非常に強固な響きである完全五度を例えばCから等しく積み上げていくとF#が出現する。その時点で積み上げた5度音を羅列するとGメジャー・スケールが構築されるので、Cメジャーの重心はCではなくGにあるという所から(Gメジャー・キーにおけるCはCリディアン)、他調の世界観を拝借して、リディアンから様々に変容したスケールを用いることで、結果的に11トーン・スケールも導くことができて、あらゆる場所でジョージ・ラッセルの提示する「変容した」音階を用いれば怖いモンなし!みたいな理論ですが(笑)、つまるところ、マイナーを主眼に置いても似たような所に行き着くワケですな。

私の場合は、変格旋法と短和音の持つ性格を利用した世界観から眺めたものだったのでありますが。

12音使うという点では等しいワケですから共通項はいくらあっても何ら不思議なことではありません。同じ山を登るのに登山ルートが違った、或いは同じ山を見る方角が違った、と色んな解釈もできるワケですが、変格旋法と短音階の持つ性格を突き詰めて行くことで共通の音を得られるようになるワケですな。


マイナー・トライアドという短和音が持つ独特の「まどろみ」。7th、9th、11thとアッパーに積み上げても短音階としての性格を維持しているそれは、誰もが求める「光」だと思っていただければいいでしょう。

短和音上で13thという光を見た時、その光にを追い求めた時というのが他調の拝借と複調感を得る時。トライアドに13th音だけ追加してもそれはそれで基盤は弱いわけで、暗闇から見た「光の差す方から」の姿はまだまだ見えていないので、コレを都合よく「別のもの」に見えている解釈をすることも可能だということを言いたいワケです。

今ここでは、判りやすい13th音を例に挙げた例えです。私がサンプル曲として用いたのは別の所から見ているワケですよ(笑)。ここまで読まれている人でもはや混同される人はいないと思いますが(笑)。

まどろみをポジティヴに捉え、チョットでもテトラコルドの共通する音列があったら非チャーチ・モード当てはめちまえ!的解釈でもイイですけどね(笑)。ただそれを闇雲にやると、本来の短和音の性格を失った音使いを絶対する人が出てくると思うんで、この辺りは声高に語っていたワケですな(笑)。


まあ、今回読んでいただいて次なる疑問が生じてくれれば幸いですが、おそらくやb6thのウォルター・ベッカーの扱い云々とやらに引っ掛かってくれた方は私の意図を理解していただけている方だと思います。

短和音ではb6thを導入すると「別のコード」になると言いました。

もっと言うと、全く別の調性がホントは覆い被さっている時でもあるんですな(笑)。


今度は、そっち方面の短和音の世界とやらを語ってみまひょ、と(笑)。因にスティーリー・ダンの「Deacon Blues」のイントロが重要なヒントとなりますので、あらかじめ準備していただければ幸いです。

これだけのヒントでピンと来る方は実に気が利いていらっしゃると思います。故マイケル・ブレッカーですらベッカーの「それ」を読み取っていなかったと思いますんで(笑)。