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後藤次利を語ってみることに [プログレ]

80年代中期の後藤次利と言えば一般的にはフジテレビ系列ベッタリ!みたいなイメージを持つ人もいるかもしれません。とんねるずやおニャン子関連プロデュースとの知名度が高いとは思うんですが、私はベーシストとしての後藤次利は結構好きだったりします。

いわゆる、当時は「チョッパー」と呼ばれたスラップ・ベース。サディスティック・ミカ・バンドのライヴ・アルバムに収録の「何かが海をやってくる」のスラップ・ベースなど、当時の日本じゃあバイブル的存在の曲でしたよ。

マーカス・ミラーだって一部のフュージョン・ファンの間でも知られていないような時代で、あの教材レベルとも呼べるスラップをサラリとこなす人など後藤次利のスラップ・フレーズの先駆性と感性は語らずにはいられませんな。その後渡辺直樹のスペクトラム、カシオペアの櫻井哲夫がもてはやされるようになって、マーカス・ミラーもポピュラーになった、というような時代です。

ファンにしてみればスペクトラム聴いていた頃にとっくにマーカス・ミラーには気付いていたとは思うんですが、一般的なリスナー視点での知名度という側面で敢えて語っているのでご容赦を(笑)。

1984年の冬だったか85年初冬だったか、ヤマハ(当時の日本楽器)が池袋にて、当時は楽器フェアの展示場としても使われていたんですが、ヤマハ独自で「デジタル・フェア」ってぇのを開催したコトがあったんです。まあ、DXシリーズを筆頭に、エレドラやモーションベースというミディアム・スケールのベースの発表が主だったフェアだったんですが、整理券が必要なものの、そのフェア来場者は無料で色んな人のライヴを観ることができたワケです。

カシオペアやら渡辺香津美やら後藤次利、という人達を。デイヴ・ウェックルも来ていたかもしれませんが、もしかしたら他の楽器フェアだったかもしれず記憶が曖昧ではありますが、国内の人達の記憶は確かだと思います(笑)。

私はカシオペアを除く先の渡辺香津美と後藤次利を観たワケですが、後藤次利の面々はというと山木秀夫と青山純のツイン・ドラムなワケですな。高中正義もゲスト参加と。

この頃の「マジ系」後藤次利をなぜ観たかったのかというと、CBSソニーからFITZBEATという自身のレーベルを立ち上げて「Inner Suggestions」というミニ・アルバムをリリースした後のライヴということで非常に観たかったんですね。このアルバムのベースの音はもちろん、浦田恵司のPPGやフェアライトの音をまぶした、現在でもエレクトロなProgサウンドとして通用するようなアルバムを作っていたワケですな。ちなみに松武秀樹も参加しております。

FITZBEATというレーベルはその後レベッカで有名になるとは思うんですけどね(笑)。左近治もその後「Love Is Cash」買っちまいましたっけ(笑)。今この歳でCDショップでPerfume買うのすらもチョット抵抗を感じる左近治でありますが、当時もレベッカ買う時はチト当時は勇気要りました。普段はマジ系音楽を買っている左近治のプライドが許さないのかどうかは判りませんが、女性店員のいるコンビニでエロ本買う方が全然恥ずかしくないと言いますか(笑)、こと音楽においてはこーゆー方が恥ずかしかったりする左近治であります。エロ心理がどうこうではないのであります。

Perfumeをエロ心で聴いているワケではないので、その辺りも誤解のなきようご理解ください。余談ですが、左近治はかしゆかが好みです、ハイ。

まあそんな話は扨置き、先の「Inner Suggestions」というアルバムは、他にも色んな情報を知っている限り列挙するとですね、イコシン(←知ってるヒトいるかな〜!?後のアーバン・ダンス、IXIX)が参加していたりするんですけどね、まあニューロマンティック系やら当時のテクノを少々引きずっているヒト達を参加させてのセルフ・プロデュースだったワケなんですが、曲調は「テクノ」ではないんですな。ホントに、エレクトロでプログレッシヴ(プログレじゃないですよ)な音と形容するに相応しい音のアルバムだったんですね。

「Time Out」という曲が当時はタカラ缶チューハイのCMに使われたいたので、ある程度の歳の方なら聴き覚えがあるかもしれませんけれども、いかんせんこのアルバムはCD化されていなかったんですな。

ところが先日某CDショップに行くと、「FITZBEAT 1983-1985」というタイトルが目に飛び込んできて「もしや!?」と思って確認してみると、先月CD化されている、という。まあ「Inner Suggestions」だけではなくその後何枚か確かにリリースしているんですがそれらは持っていないので失念。確か日本人女性シンガー(←これまた失念)をプロデュースしてたっけなあと思い、それらの作品がセットになった商品が販売されていることを知ることに。

他の作品は知りませんが、当時エアチェックして買うのはやめた記憶があるので私にとっては「Inner Suggestions」だけで充分だということもあって買うには至らなかったんですけど、候補には挙がっているアルバムのひとつなんですな。7000円超えるんだったら他にも欲しいのありまして、文無し左近治は今回見送ったというワケです(笑)。1500円で売られていたミニ・アルバムが故に、手元にはアナログから録音した「Inner Suggestions」がiPodに入っているのもあって見送った、と。

この辺りの年代というのは何が重要かというと、YMOが解散した後の日本の音楽のシンセ事情とはどうなるのか!?という側面で非常に興味があったんですな。先述の浦田恵司然り、藤井丈司や井上鑑とか、その手の人達が使う機材をベース弾きでありながら虎視眈々と追い掛けていたコトがあったモンでした。そういう視点でも1983年以降というのは結構注目すべき時代だったなーとつくづく感じるワケです。YMOでないにしてもシンセの在り方が定着しだして巷じゃABCの「Look of Love」やらYESの「ロンリー・ハート」などのトレヴァー・ホーンの音が席巻し、シモンズは杏里やサザンだって使ってる(笑)、イミュレーターも「II」になりました!みたいな時ですね。その後ハワード・ジョーンズやガゼボやらスクリッティ・ポリッティなどが売れてくる、と。ヒューマン・リーグやデペッシュ・モードとか(笑)。

今でこそNIのAbsynthやReaktorあるいはSpectrasonicsのOmnisphereなど使えば簡単に飛び道具系なパッド音やらSEなど出てくるワケですが、当時のデジタル系シンセは今でも通用するくらいのキャラクターは有していたとつくづく感じます。音色の価値とやらに対価を見いだせるようになったのもこの辺りの時期からではないかと思うんですな。

ここから5年も過ぎればデジタル系な音は飽きられ、世はアナクロな音を求めるようになっていくのに、この辺りのデジタルな数年感は実にめまぐるしく変容し、実にとんがっていたとも思えますね。

そんな「ポストYMO」の辺りではYMOの坂本龍一を除くお二方はレーベル立ち上げて「レコメン」系に触発されたのか、いわゆるYMOが伝播させたような動きを拡大して売り出すような動きがあったりしたモノで、「スネークマンショー」というアルバムは今考えれば、あれが「レコメン・サンプラー」みたいなモノからヒントを得たものだったのだろうなーと思うワケです。

「レコメン」とはレコメンデッド・レコードのコトを言っているわけでして、その辺りは誤解のないようにお願いしたいのですが、簡単に言えば、非常にとんがっていた初期のヴァージン・レーベルが1973〜1978年の辺り。その後ヴァージンは方針をガラリと変えて、超マニアックなアーティストが契約解除を余儀なくされてしまった、と。そうしてヘンリー・カウのメンバーが立ち上げた自分たちのやりたい音楽を「紹介」するというレーベルを立ち上げて出来たのがレコメンデッド・レコードでありまして、屈折したワールド系やらジャズ・ロック系、アヴァンギャルドな音楽に溢れたラインナップなので、もはやその手の音が「レコメン系」と形容されるくらい強い強度を持つ「ジャンル」と呼べるようなレーベルが世の中にあるんだぞ、という事を意味すると言えば理解しやすいでしょうか。

そんなレコメンデッド・レコードが立ち上がる前に「レコメン系」な重要なバンドがプログレ界には存在していて、そのひとつに今回は「THIS HEAT」というバンドの同名タイトルのアルバムと挙げてみます。

今でこそCD発売されていますが、このオリジナル・アルバムはA面B面ともに、最後の最後まで音がカッティングされているので、レコードの溝が最後まで行き着いても音がループして鳴り続けるワケですね。

YMO解散期の頃に、スネークマンショーピテカントロプスの逆襲というアルバムのB面がまさに「This Heat」のそれを彷彿とさせるカッティングを施しておりまして、彼らの(メロンやメロン周辺の人達。その後のDub Master Xとか屋敷豪太も)そうした隠れた「レコメン魂」みたいなものを、スネークマンショー、という企画アルバムにきちんと意味を見いだしていたのは興味深いものでありまして、ただ単にギャグを織り交ぜる手法がスネークマンショーという風にしか理解していないと、決してその奥を読み取ることができないのも、聴き手の選別を心憎いばかりにひた隠す底意地の悪さが絶妙で(笑)、こういうことすらも未だに気付かないヒトだっているのですから、音楽ビジネスにまつわる深みとやらも感じ取ることができる時代の移り変わりというものを実感することができたワケですね。

で、後藤次利だってその後のとんねるずやらおニャン子ではなく、マジな動きがあったワケで(笑)、ポストYMOのシンセ・サウンドの在り方として充分にカッコ良かったのが「Inner Suggestions」だったよ、と左近治は言いたいワケです。立花ハジメの「テッキー君とキップルちゃん」というアルバムも興味深かったですけど、後藤次利の方が「在り方」をきちんと見いだしていたように思います。実際立花ハジメのはその1年後くらいですしね。

左近治にとっては、ただ単にスタジオ系の音楽(クロスオーバー/フュージョン)があるのではなく、プログレもカンタベリー系もレコメン系もテクノだろうがロックだろうが全て1つにまとまっているので(笑)、何の分け隔てもないワケですが、分別のなさという共通項を少しでも今回のブログでお判りいただければ幸いです(笑)。たまには楽理面の話から抜け出るのもイイかな、と思いまして。