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西海岸サウンドとやらは・・・ [DAW]

扨て、ジェイ・グレイドンとランディ・グッドラムによるユニット「JaR」のアルバム「Scene 29」の国内盤はまだ入手していないものの、海外盤は有しております。

以前のブログでも触れましたが、このアルバムにはドラムにはTOONTRACKのSuperiorが使われているようでして、「らしさ」を感じるワケでありますが、左近治がよ〜く用いるドラム音源で名だたるものはXLN AudioのAddictive Drums(以下AD)か、TOONTRACKの「Superior 2.0」でありまして、正直なトコロBFD2は様々な理由により私は嫌いなので所有していないのであります(笑)。

但し、これらのドラム音源というのも使い分けは勿論しておりまして、特にSuperiorの場合は一旦アナログを介在させて作ることが多いのであります。これには色んな理由があるんですがとりあえずはSuperiorを使う時はアナログ介在が私は好きなのでありますな。

チョット前のブログでも触れた理想的なドラムの音というのは、ザ・セクションの3rdアルバム「Fork It Over」収録の「L.A. Changes」という曲などは代表的な垂涎モノのドラムなのですが、まあ、西海岸サウンドにイナタさがあった最後くらいの時期のアルバムとでも言えばいいでしょうかね。ジェイ・グレイドンやらデヴィッド・フォスターやらマイケル・マクドナルドなど、どちらかというと西海岸の音楽シーンからイナタさを消し去った人達と揶揄されるコトもあるんですが(笑)、スワンプ系サウンドが好きな人というのは特にキビシイ耳でこれらの方々を聴いているのではないかと思います。

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まあ、ATTITUDESやらCDリリースされないものかと私は首を長くして待っているクチではあるんですが、西海岸に限らず、ある特定の時期から音楽が変容したのはシンセサイザーやらリバーブ群の発達が大きく影響していたのではないかと思うワケですね。

エンジニアやスタジオにもよりますが、概ねCTIレーベル系の管楽器のアンサンブルでの浮かせ方、みたいなミックスは非常に特徴的ですし、金物類のコンプの掛け方にもCTIはチョット特徴的だったりします。MCAだとバタ臭い中音域が実に官能的だったりというミックスが多かったり、レーベルの世界観みたいなモノはあったと感じるんですな。特にCTIのEMTとおぼしきリバーブの音などは、現在のDAW環境においても非常に役立つお手本ミックスのようなモノが沢山あって、私はよくお手本にしております。

イナタさを残すには過剰な残響は不要なのですが、よほど人工的な音ソースではない限り、どんな音にも残響が付加された上で構築された音であることを、普通の人は全く感じることなくそれを受け入れているワケですね。無響室での音の経験が大きかった左近治は、あの経験があったからこそあらゆるソースの「アコースティック」な音の本質をイメージできるのかもしれません。

そもそもアコースティックという言葉の意味というのは、共鳴や干渉を伴って構築された音のコトなワケですから、電力いらずというのがアコースティックという風に間違って意味を捉えているとトンデモないコトになっちゃうんですな(笑)。

いわゆる初期反射部分の「アコースティック」な成分が音質キャラクターをかなり決定しているワケなんですが、音ソースが発音してから概ね10msec以内の世界に凝縮されていたりするモノでして、ココを見抜くコトがミックスにおいてはかなり役立つコトが多いんですな。

例えばEQやスペアナを確認してみても、DAW初心者の多くの方は、市場のCDと比較してもEQやスペアナレベルでは周波数やレベルを満たしているのにコモった音になってしまっていたりとかそんな経験をしている人は、音の減衰部分に耳が向いていないから陥るワナでもあると言えましょう。言葉で例えるなら母音の減衰具合に耳行ってない、みたいな(笑)。

さらに例えるなら、ドラムの音は「叩くのみ!」みたいな(笑)。ドラムで減衰部分に注力するとしたらシンバルを途中で手で止めるような「チョーク」が一例に挙げられますが、あらゆる音ソースに対して減衰時間に注力する、というコトが重要だと思われるですな。

何も知らずに色んな音ソースかき集めてミックスすれば、誰もが低域部分というのはエネルギーも増してふくよかになりますが、EQでハイをブーストせずに高域にツヤを出すような方法とか、色んなテクニックはあるワケですね。

EQのピークとしては現れないものの、特定帯域の減衰に変化が現れることなど、コンプなどを使っているわけでもないのに現れることがアナログ回路というのはそれが全てではないものの、そういう特性があったりするものでして、厳密に回路プロセスやらを熟知していなくても、それが自分の好みにあったキャラクターとして受け入れている人も多いでしょう。

だからといって特定帯域を無理矢理エキスパンドさせたりすれば不自然な音になりかねません(笑)。音のオイシイ減衰具合やら「アコースティック」な成分をゲートを使って見抜いたりすることがミックスにおいては重要な要素であるワケでして、折角素晴らしいリバーブというエフェクトがあってもふくよかすぎて使う気になれないというような人は概ね、元ソースの音と残響が作り出す特定帯域の「かち合う」音や減衰具合の調整がヘタだから避けてしまうのではないかと思うんですな。

この辺りを熟知されている方なら、どんな道具を使っても狙った音が出せるでしょうが、イメージとして一番伝わりやすいのはAPIの音でしょうか。APIを用いずとも、音響的な特性を見抜ける人でしたら何を使っても大丈夫でしょうけどね(笑)。

そうすると、イナタさの中にある隠れた「残響」とやらを付加させることができるようになると思うんですな。但し、「音源」の場合はムダに残響が付加されていたりするものもあるんですが、これを削ぎ落としつつ「利用する」ことも必要ですし、一筋縄ではいかないものでもあるんですが、残響と直接音の減衰に耳傾けることが重要かな、と思うワケです。

音を出すことは簡単ですが、音を切るのは難しいワケですよ。切るタイミングそのものは合っていても滑り台のスロープ加減を知らないとダメってこってすわ。今回は結構重要なコトを述べているのはですね、JaRのScene 29のジェイ・グレイドンの憂いている要素に更に私が感じたことを「付加」しているワケであります(笑)。