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Walter Becker 「Medical Science」着手 舞台裏 [スティーリー・ダン]

ウォルター・ベッカーの1stソロ・アルバム「11の心象」に収録の日本盤限定ボーナス・トラックである「Medical Science」にようやく着手することになった左近治。ホントは3年前にKクリで着うた開始になった時から作ってはおりましたが、その時のアレンジはいわゆるスムース・ジャズ系でローズが左右に飛び交うようなアレンジでテンポも結構速くしたアレンジでした。

しかしながらこの曲はコードが非常に多くてですね、さらに短い音価の中で和声を欲張るとどうしても重厚すぎるほどの和声の響きが出てしまうので、あっさりしたエッセンス色が失せて、プログレッシヴ・ハウスよりもさらに陰鬱な世界になるので、「こりゃチョット妖し過ぎて、いくらウチのショップのお客さんに拒否反応示されかねない」と思ったのも、当時リリースを避けた理由のひとつ。

さらには着うたを段階的にパワーアップさせるような展開をしていくには、最初からヤリ過ぎ!と自制心が働いたのも事実(笑)。当時はブログで詳細を語らず、週次(リリース毎)の端末上のコメントの数十〜数百文字数のコメントで解説していたりしたもんですが、ただでさえ字数の多い左近治の音楽的解説なのに、「Medical Science」を端末上で全て語りきれるワケなかろう、と思ったのもさらに大きな理由のひとつ。

そんな凄さを理解してもらって耳で確認してほしいからこそ、当時の状態ではとても満たせるモノではなかったので(笑)、機をうかがいつつようやくその日が来た、みたいな(笑)。しかも、ウォルター・ベッカーの場合一般的には蔑ろにされてしまっているかのような位置づけ。

ソロ・アルバム制作に着手しているらしいような噂は当時から聴こえて来ていたので、次の作品出た頃にでもリリースした方がよさそうだな、と(笑)。その私の目論みと2ndアルバムはおそらく「こうしてくるだろう」という私の推測が巧いコトいって、今回こういう風に着手できるのも「Circus Money」という判りやすい提示を見せてくれたコトからヒントを得たものであります。

とにかくコード・プログレッションがスゴイ。ベッカーのソロ・アルバム「Circus Money」で彼の魅力を理解できた人であれば、「Medical Science」をひとたびアナライズすれば、たった数小節で数十倍驚いてくれるでありましょう(笑)。

まあ、とにかく他を寄せ付けないような響きが満載なんですな。

なにせ、Aメロの最初の4小節だけでも、コードネームで表すコードの数が今数えただけでも15コと来たモンだ(笑)。「11の心象」を蔑ろにしていたような方ならAメロの1小節目と5小節目など多分同じ響きにしか聴こえていないだろう、と思うばかり。

「11の心象」から楽理トコトン学びたければ「Medical Science」と「Hat Too Flat」は避けて通れない曲です。これらの曲でスンナリ受け止められなかった人は、「Junkie Girl」「Lucky Henry」「Girlfriend」「My Waterloo」「This Moody Bastard」の旋律的な叙情性からモードを示唆する音を取りこぼさないように聴いてね♪

と、本人はどう思っているか知りませんが、「やさしさ」を秘めた提示はそれらの曲なんですな。

「Surf And / Or Die」と「Hard Up Case」というのは、SDの初期作品、特に1〜3枚目くらいによくあった、和声を欲張らずに旋律的に叙情的にモード・チェンジをちりばめるタイプの手法。コレは私に言わせると、ディジー・ガレスピーとバド・パウエルの手法に近いモノだと思っていただければ、と。

あんまり重厚な和声にするのもアレなんで、モンクの手法もちりばめる、と。ウォルター・ベッカーを研究したいのであればこれらのジャズ界の3人の巨匠からヒントを得ると、かなり分析に役立てるコトができると思います。

まあ、曲をリリースしてから楽理面の深部には語って行こうと思いますんで、その時は「Medical Science」のコード進行辺りで目ン玉飛び出るほどオッたまげてほしいモンでございやす(笑)。

何はともあれ、今一度「11の心象」をお聴きになってみてくださいな、と。