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ベース・サウンドあれこれ [ベース]

ココん所、ウォルター・ベッカーの2ndソロ・アルバム「Circus Money」収録の数曲をKクリリリース用の着うた制作に勤しんでいたのであらためてベッカーの妙味に気付いたこともあったので、その手の話題は追々語っていこうかな、と思っております。

まあ、サーカス・マネーのベッカーのベース全般に言えるコトなんですが、ミュートの巧みさ、ピッキング(=ピック弾き)の妙味、ベース・サウンドそのものの心地よさ、というモノを今回語っていこうかな、と。

ベッカーの弾くベースは、サドウスキーのJBモドキのようであります。しかしながらサドウスキーのJBモドキというのはFender 60s JBの音が出るワケでもないし、マーカス・ミラーの音が出るワケでもない(笑)。しかも、アクティブONのトレブル0.1くらいからトレブリーなプレゼンス領域が実に使いづらく(笑)、パッシヴで使いたいくらいの、あのギラついた音が私は非常にキライなのであります(笑)。

とはいえ、ベッカー先生の音を聴くと、とてもサドウスキーのJBモドキを弾いているとは到底思えないくらい、深みと骨のある音なんですな。グレッグ・レイクだってサドウスキーを使いますがその音はまさに雲泥の差。ベッカー先生はSDメンバーであるにもかかわらず、作曲しようがベース弾こうがギター弾こうがあまりにも過小評価されすぎてはいるのではないかと可哀想になるほどです(笑)。ギターのフレーズにしたって音にしたってかなりイナタい音弾いてくれるんですけどね。

で、左近治自身も無い知恵絞ってアレコレ考えてみながら、氏の音を細かく探ってみたんですな。それについては後述することに。

因に左近治がピック弾きする時というのは、まず重要なのがピック選び。

私の場合は、いわゆる小さめのティアドロップ型である渡辺香津美モデルか、今はあるのかどうかも判りませんがジョージ・リンチのピックが好きなんですね(笑)。

左近治が繰り広げる話題となると概ねフュージョン界かプログレ界隈になりそうなモンですが、ジョージ・リンチってぇと!?

そうです。あのジョージ・リンチです(笑)。ピックの持ち方はメセニーにも似ているジョージ・リンチです。

とはいえ、それらのピックを使うにしても私の場合は70度くらい寝かして使います。硬さ的にはそれらのピックよりももっと柔らかい、Fenderで言えばSOFTはおろかTHINタイプでもよかろうソフトなピックを使います。その硬さ(柔らかさ)に加え、広くあてがう当て方が左近治は好んでおりまして、ベッカー先生の音を聴いていると、THINタイプのピックで広く当て気味の音のような気がしてきたんですな。ソフトなピックでなくとも弦にピックを「当てる」のが巧みと言いますか。

そもそも、硬いピックだとついついピックが弦をヒットする、という「ピックが弦に出会った瞬間」で拍の頭を強く感じるため、実際には「出会った瞬間」から少しピックを宛てがって→弦を引っ張って→宛てがっていた指を弦から離す!(←ココが拍のアタマという感覚がのぞましい)

という手順を踏むことが難しく、常に感覚的なノリと実際に出てくる音(←出音こそは遅れますが、ノリが前という意味での前ノリです)のシフトした感覚がイヤなので要所要所でノリを変えようとすると、弦の強度(高音弦と低音弦、押弦したポジションでコロコロ変わる弾性)、ある程度弾性を持ったピックが好きなんですな。指弾きの場合、通常は第一関節を逆反りにすることはありませんが、タッチや拍の追い方によっては弦負けしないように、第一関節の逆反りの有無でノリを変化させているんで。まあ第一関節逆反りは基本としては邪道ですけどね(笑)。弦にヒットした瞬間を強く意識したくないんですな。ピック弾きの人でこういうノリをコントロールして使い分ける人だってもちろん居るとは思うんですけどね。私の場合だと、ついつい音が暴れて破綻するんですな(笑)。まるでゲディ・リーやスティーヴ・ハリスがピックでゴリ弾きしたような音、と思ってもらえれば判りやすいでしょうか(笑)。決して、弦に吸い付くようなレイ・シャルマンやジーン・シモンズのような音にならないんですな、コレがまた。


それを持ってしても、サドウスキーのイヤ〜なトレブリーな音は通常避けられないと思うんですが(笑)、ベッカー先生が.045〜.105のレギュラー・ゲージを使っていると仮定した場合、サドウスキーでは、それらのソフトなピックを使ってもまだまだトレブリーな音はパッシヴにおいても消えきらないのでは!?と予測したワケですな(笑)。

で、そういや昨年のScarbeeのBlack Bassリリース時にトーマス・ハンセン氏がフラット・ワウンドをSterling(ライセンス関連のことも配慮し、且つご本人に敬意を表してモドキ!?と表現しております)に用いているという事を知った後、私もあらためてフラット・ワウンドを見直して、てめえも買って試したワケだったんですが(笑)、もしかしたらベッカー先生のこの音の粘り具合はフラット・ワウンド(若しくはハーフ・ワウンド系)を使っているのではないか!?と最近疑っているのであります。

とりあえずフラット・ワウンドの音色的な特徴はというと、

●中域のエグみのある粘り
●ラウンド・ワウンドのように高次倍音の伸びによって反比例的に中高域がスポイルされない「残る」音
●指板からの押弦リリース時の「重みのある」音(重いビビリ感のある音)※ラウンド・ワウンドの場合高次の部分音だけが際立つ
●細いフレットで効果を発揮する太いエッジ感 ※音程感がより明瞭且つ太いエッジの利いた指板を引き立てる音
●ガラス同士をこすり合わせたような「ギッギッ」とした粘りのディケイ部が長い

とまあ、こんな感じでしょうか。ラウンド・ワウンドの場合、指弾きだろうがスラップだろうがピックだろうが、それらの奏法の違いに伴う音の変化による部分音の差異というのは高次の部分音に顕著に現れ、逆に伸びが高域に広がることで「中和」する所があるんですが、フラット・ワウンドだと高域に広く伸びるのではなく中低域のオイシイ所に残存してくれるような心地よさがあります。


まあ、ラウンド・ワウンドでも奏法技術であのような音にすることは可能なんでしょうが、「あの」サドウスキー(笑)をこういう音にするには、サドウスキーの使い手ならきっと難しい音だというのは感じてくれると思うんですね。そういう理由が前提にあるからこそ、ベッカー先生のあの音はスゴイな、と。あらためて痛感するわけであります。


ピック弾きの利点のひとつは、オルタネイトを選択すれば弦を弾く方向が反対方向から相互に運動することになるので、弦の暴れや音ムラを防ぐことにも繋がります。もちろんダウン・オンリーで弾いても、その宛てがい方を微妙にコントロールしたり、自分の普段使っているベースの弦の振幅のクセとか、ゲージそのものの弾性から得られた微妙なニュアンスを瞬時に判断してコントロールして音の暴れ加減を抑えたりして、破綻の少ない音を得ようとすることが多いと思いますし、これを的確にこなしてこそ技術の表れと思えるベースの技とも言えるでしょう。

サドウスキーのポジティヴな面は、ロー・ポジションにおけるネックのシェイプが若干Vタイプに近く(個体差はかなりありますが)、実直カマボコタイプは少ないと思います。加えて音程感が明確で、フレットが細いので音に指板の粘りが加わるんですが、トレブリーなハイのクセがそれをかき消してしまう(笑)。

サドウスキーに限らず、これがプレベだったら、レギュラー・ゲージよりもヘヴィーなゲージを張って、弦そのものの「安定感」を利用して、弦の物理的な重量も増してそれが音の暴れ加減を抑えたり、音のバタつきを抑えながら、ファースト・ノートではない二の次の音の破綻を少なくさせて、奇麗な音を出しやすいと思います。

2ピックアップタイプでバランサーを振らない音にしている場合は、その音そのものが中和された音でもあるのですが、ワン・ピックアップの音を好む方ならプレベに限らずどんなベースでも、ヘヴィー・ゲージ張った方が音の安定感を得られやすく、低音側の弦でハイポジ・グリッサンドを多用する方ならベースそのもののサステインが増強されて馴染んでいくという相乗効果も出てきます。

ただ、「マーカス・ミラーの音に限りなく似せる!」というタイプの方は(笑)、ゲージの違いが音そのもののキャラクターをかなり変えるので、その手の音を気にする人はレギュラー・ゲージや、「マーカス・ミラーそのまんま」を目指していただいて構わないのでありますが、言いたいことというのは、とりあえずまあ、こんな所なんですな。


一応、左近治本人がこうして偏狭的な世界でアレコレ無い知恵使って考えた結果、ベッカー先生のサーカス・マネーでのベース全般の音は、

●比較的柔らかいピックを使っている
●ピックの当て方によるピッキング・ワークのノリ粘り具合が絶妙

という結論に達したワケです(笑)。

これで

「硬いピックだよ♪」

と言われれば感服せざるを得ないのでありますが(笑)、「あの」サドウスキーでこの音って相当難しいよなーと穿った見方をしているので勝手にこういう結論に達したワケであります、ハイ。


とはいえ、近年てめえの視野の狭さは忘却の彼方で、自分が出会ったソースや知識だけでそれらを勝手に当てはめて推測しているワケではなく、とりあえずヘッポコ左近治なりにその根拠というのはありましてですね(笑)、今回そんな結論を導いた理由を後述にて語っていこうかな、と。


余談ですが、これのような要素をラウンド・ワウンドで実現させたい場合、私はゲージを太くして弦の自重と部分音の変化で生み出そうとしますし、粘りの要素が強く出るグロス・フィニッシュのメイプル単板ネックや細くて低い山のフレットを好みます。

まあ、フラット・ワウンドの中域辺りの「ガラスのこすれ合う」ような音は、CP(=ヤマハのエレピ)のような中高域の摩擦感のあるベトついたような「あの音」っぽさを連想していただければニュアンスがお判りになっていただけるのではないかと。ちょっとツンツンしたような音ですな。

正直、私のサドウスキーは初期の頃のシャーラー・ブリッジで、現在のサドウスキーに用いているブリッジよりもゴリ感が細く、アタック感が平滑化されてしまって高域が変にギラ付くだけなので初期のシャーラー・ブリッジのサドウスキーは好きではないんですな。フレットレスには向くんですけどね。

フォデラが無い頃のアンソニー・ジャクソンのピック弾きプレベもオツなものがありますが、プレベの暴れ具合による音の変化を巧みに操りながらプレイしているとなると筆頭に挙げられるのは、私はウィル・リーとレイ・シャルマンの二人より巧みな人は居ないのではないか!?と思っております(笑)。

この人達の特徴はファースト・ノートでガツンと行かないで、その後の二つ目、三つ目やらの音の破綻を防ぐのが巧みなんですな。ファースト・ノートで得た原振動で「安定した」弦振動を行おうとする弦から見れば、やっとこさ安定しようとした所で弾き手が次の音を弾いてしまうもんだから場合によっては次の音がデッドな鳴りになったり、しゃっくり出そうな時に屁が出そうになったような「つまずき」から来る音の破綻、これがプレベには特に多く現れやすい「暴れ」。これを操るのが巧いというワケです。

弦そのものを安定させたい場合は弦の巻き方もさることながら、弦の自重を重くしてあげて平衡への強度を増長させる手もあります。さらには左手と右手を巧みに使った、次の音を極力奇麗に出すためのファースト・ノートのミュート。これがキモとなるのでありますが、こういうのは別にプレベに限らずベース全般に言えることですが、プレベは出音にすぐ反映されるので、こういうプレイをプレベで身に付けて、特定周波数帯域にクセのある音が出るようなベースを扱うと有利に働くのではないかと思います。

ベッカー先生のピッキングを聴いていると、その巧みさがビンビン伝わってくるんですなあ。まあ今回の「Circus Money」というアルバム全般的にスローなbpmが多いことが、こういうプレイの瞬間をもより深く聴かせてくれるのでありましょうが、ゆったりとしたテンポに埋没してピッキングやらグルーヴのノリを忘れて、勢いだけで弾いてしまうような人達とはやはり全然違うワケでありますな(笑)。