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「釣り」をドラムにフィードバック (逆もアリ) [ドラム]

下野正希氏と東原力哉氏。両氏とも私にとっては非常に尊敬できる人物であります。下野氏の方がやや軽妙であるものの、共通するのは関西の人であり、優しさが満ち溢れているという所でしょうか(笑)。

プロとしての門外不出のイロハは両氏とも有しているはずですが、一般的に見ればその領域というのはあまりの遠くかけ離れているものの、礎があるからこそその領域に達することができたという証明でもありまして、自転車の乗り方や泳ぎを覚えた人がそれらを忘れることなくこなすことができるというのは、基本が身に付いたからでありまして、その基本の難しさというものを実に優しく提示できる、加えて、身近に感じることのできる人物だと思うんですなあ。

まあ下野氏は釣りのプロの方ですけどね(笑)。


「魚釣り」なんか全く興味ねえぜ!


と宣う方も多数いらっしゃるとは思うんですが、実は釣りにはドラムにも応用できる「共通点」というのがありますんで(笑)、今回は釣りキチ左近治の無理矢理な畑違いの共通項を語らせてもらおうかと思います。

ドラムの経験の浅い人のバチさばきというのは概ね共通するものでして、ひとたびスティック握らせれば「親指の爪」が上を向いて、その向きのままに上下に振ろうとするんですな。おそらく「叩く」というヒット感を強固にするイメージするためか、ヒットした瞬間の力を親指に託してしまうんでしょう。何も教えなくても殆どの人はこういう手首の動作になるんですな。

正しいマッチド・グリップのフォームだと手の甲が上を向いてそれを上下に振る、と。この時親指の爪は横を向いているワケで、左右の親指の爪は内側を向いているワケですな。

手首の動きからすれば、親指の爪を上に向けたまま上下に振る可動域よりも、手の甲を上にしてそれを上下に振る方が可動域は広く、スムーズなんですね。

ただ、この動作こそが日常生活においてあまり縁のない動作だからかもしれない。だからこそ多くの人はポピュレーション・ステレオタイプにいつしか毒され教わったワケでもないのにそのような動作を自然と身に付けてしまう、と。釣りやドラムの世界に置き換えれば、なんとも「おかしな」動作を身に付けてしまうコトに等しいワケです。

スティックを握って左右の手の甲は上を向く。そうすると肘は外を向く(あまりに脇を開きすぎてもアレなんですが)。この肘が外に開くという「捻り感覚」が、多くの人にとっては負荷に感じられてしまうからでありましょう。上腕部は内側に絞るという動作になるんで、足に例えると内股のような絞ったような負荷の感覚のようなモンですな。

足の内股と言っても、膝が内に絞れるだけで可動域のスネや足先は開かざるを得ない。こういう動作に似ているという意味です。

サッカーにも例えることができましてですね、例えば、ボールを両足の足先で両側から挟みます。両足の親指の付け根で挟み込むような感じをイメージしつつ、足首を軸にして互いに足をキュッと内側に回転させるだけの動作でボールをヒザよりも上に上げることが出来るか!?というような動作を少年少女たちにテストさせてみるとします。

すると、ココでも日常生活での動きのままでサッカーボールを扱おうとするため、よっぽどサッカー経験にある子じゃない限り膝の上まで足を内側に閉じる力で上げるコトができないんですね(この動作は右足は反時計周りに、左足は時計回りで互いに同時の足を内側にひねる動きでだけでボールをヒザ上に上げるという動作ですのでお間違いのないように)。

大概の子は、斜め前方に上がっていくだけでヒザ上すらも飛ばず、また別の子は足の甲をコロコロとボールが転がるだけの子だとか、斜め前方にしかボールが上がらないものだからムキになって(笑)、斜め前方の飛距離を稼いでボールを膝上よりも上げようとする子だとか(笑)、大体こういう感じに分類されていくんですな。

じゃあ、そのサッカーボールはどうやって膝上よりも上げることが出来るようになるのか!?というと、ボールを挟んだまま腰を若干おとして尻で大地を掴むような感覚で中腰の姿勢にして、膝を内股にします。この時両膝の内側がかなり絞れていてそれこそ両膝の側面を付けるような(付けなくても可)感覚です。で、その姿勢を維持して足首をクィッ!と内側に絞って回すだけで、ボールは真上に膝より上に上がってくれるワケですよ。

こういう一連の動作を最初に提示する時というのは、腰を落として〜膝を絞って〜・・・などというようなコトを見破られないように一瞬でやる必要もありますが(笑)、その前に、大半の子は体得できていないので、見破られやすいような動作を持ってしても多分そこには気が向いていないので気が付かないと思います。

つまり、サッカーだろうが釣りだろうがドラムだろうが、自分自身が日常の営みで得たただ単に動きやすい動作だけで対処していては、より良い動作で勤しむことができなくなるということなんですね。カラダの特性を知ることが重要なワケです。


釣りの場合はというと、例えばベイト・リール。


ベイト・リールをまともに使えないのにベイト・リールを買っちゃった!という釣り少年は全国各地で目撃することができます(笑)。名も知らぬ少年のベイト・リールのバックラッシュ(=このリールは遠心力によって巻かれている所がグルグル回転して飛距離を稼ぐ狙いがある特性をもつため、制御しきれない回転のまま着水してしまうと、リールに巻き付けてある糸が真の内側からほどけてしまうことで、外側に巻き付けてある糸からハミ出してしまって絡まってしまう、という現象をback rushと呼びます)と奮闘しながら釣りどころではなくなってしまっているという少年達ですね。

こういう問題に直面しているベイトリール使いの少年達は、やはり投げ方が悪いからですね。正しい投げ方をしてもバックラッシュに遭遇することはありますが、それ以前に正しいフォームではないからというのが大半なんですな。

つまり、釣り竿を握っている時とスティックの握り、と全く同じことで、親指の爪を上に向けたままそれを上下に振ると、まともにベイト・リールでは飛んでくれないワケです(笑)。足元に思いっきり着水している筈です(笑)。

ベイト・リールを扱う時は、手の甲を上にして、それを上下に振らないとまともに糸が出て行かないんですな。この要領こそがドラムのマッチド・グリップのスティック・ワークに置き換えるということができるワンシーンであります。


左近治はベース弾きですが、一番最初はドラムやってました。まあ、そんな私がドラムにアレコレ言うのもおこがましいのでありますが、まともなストロークを身に付けてしまえば、その動作を体得した時には現実に楽器を目の前にしていなくともイメージすることが可能で、打ち込みにも昇華させることが可能であります。ドラムに限ったことではありませんが、今回はドラムを中心とした話題ですので。

では、今回はマッチド・グリップによるバチさばきの簡単な絵を用意したので(笑)、それを見てもらいつつスティック・ワークというものを語ってみるコトに。

MatchedGrip.jpg


例えば、片手で「タン・タン・タン」と3打続けて連打することを想定してみましょうか。テンポ80くらいの四分音符3つでも構いません(笑)。別に笑うところではなく、これくらいから始めるのがベストですけどね。ただ、3つ連打といっても同じ強さではなく、ファースト・ノートは非常に弱く、2打目はメゾフォルテ、3打目は強く、というのをイメージしてもらいたいと思います。

MIDIレベルで置き換えれば音源にもよりますが、ノート・オン・ベロシティは「25→56→110」というイメージを抱いていただければ幸いです(笑)。


フォームで重要なのは図で示したように「緑色のライン」。ヒジの外側から人差し指を突き抜けて、親指と人差し指とスティックが接する点と、その先のスティックが「一直線」になるように、線で結べるフォームが理想です。

赤いラインの外腕部と、オレンジ色の手の甲の外側のラインは一直線なのが望ましく、図ではわざとズラしています。赤色とオレンジ色のラインを直線にするというイメージを持ちながら、前述の緑色のラインをキープする、と。

緑色と赤色が平行になることはまず不可能です(笑)。


通常のワンショットというのは、ダブルストロークおよびトリプル・ストロークを身に付けた人なら、「ヒット感覚」というのはスティックそのものに打撃感を感じているのではなく、図で言えば真ん中のピンクの丸付近に力を感じて、スティックに抜けていく、という動作だと思います。

アクセントや抑揚を付けて連打するという動作においては、この打撃感の移動と、先に抜けていく感覚を身に付けないとまともな音にならないと思います。

例えば、先述のように3つの音の連打をクレッシェンドする、というような場合、打撃感は手前のピンクの丸(手首の辺り)→手の甲の中央、中指の下辺り→親指・人差し指・スティックとの接点

という風に打撃感が移動していって、スティックの先に抜けていくような感覚を身に付けられるようになると思います。ピンクの丸が自分から遠い方へと移動するような感覚ですね。


ちなみにロールというのは、手首部分を除いたピンクの丸とスティック先端に抜けていく感覚の3つの動作で成立している、と左近治は感じております。


尚、ヘタな図では誤解を生じると思いますが、緑色のラインとスティックはもちろん同軸上にあることが望ましいです(笑)。


生楽器に触れる機会がなくとも音を出せてしまう昨今、物理的な動作を意識することなく、日常生活のラクな動作からイメージすることなく楽器に触れてみて得られるコトは非常に多く、それをモノにするのが一番辛いからといって迂回してしまうと応用の幅も狭まるコトになりかねないので、今一度生楽器や畑違いのジャンルからフィードバック可能な要素を掴んでもらいたいと思うばかりであります。

熟練者というのは、この打撃感の重心の移動はもちろん、「抜け幅」が非常に広いのが特徴です。スティックの握りを固定するだけではなく、若干握り具合を緩めて、さらなる抜け具合を作って新たな動作を得たり、など。こうしてスムーズな動作というものを得られるようになり、ひとつの大きい動作でいくつもの音を連続して出せたりするようになるワケですね。イメージを掴むことができれば生楽器から離れようともシミュレートが可能となるワケであります。