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Upside Looking Down - ウォルター・ベッカー Circus Money Analysis [スティーリー・ダン]

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冒頭のスナッピーレスのスネアのゲート具合が堪りませんな(笑)。サイドチェインのトリガーに用いている帯域が絶妙なので、不自然に切れません。チューニングが揃っていないと少々打点が変わるだけで部分音の構成がかなり変化しやすいので、ヘタなチューニングされてしまうとサイドチェイン用の帯域選びなんて幾らあっても足りなくなってしまうくらい困るものですが(笑)、こういうスネアを聴くと本当に心地良くなってしまいます。おそらくスネアは2つ使っていると思いますが。

スネアのボトムヘッドの音も他よりも若干強めに出ています(スナッピーサウンドを用いた時)。

あまりにシンプルなギターのアルペジオのリフがラフミックス感すら感じてしまうかもしれませんが(笑)、アンサンブルが入ってくるとそういう風に聴こえなくなるという不思議。

ヘタな人の演奏だったら、これだけシンプルに聴かせられたらタッチノイズやらズレやら気になって聴けたモンではありませんが(笑)、そういうシンプルな世界はほんの一瞬。

ランディ・グッドラムやスティーブン・ビショップが唄ってもおかしくないほどメロディアスで、SD知らない人にもあま~いAORサウンドを構築しています。

旧来のSDファンであれば、このサビの曲調には「Third World Man」を想起するかもしれません。もうちょっと突っ込んだ見方をすれば「11の心象」収録の「Book of Liars」もこの曲のように聴いてもらいたかったんでしょうな。あちらは起伏の少ないリフが延々と続くような曲なので賛否両論(大概は「否」の方が多くて、ダラダラ感があると捉えられてしまいますが)あるものの、ドラッグの陶酔感を演出するには、例えばエフェクトに多くあるようなLFOスピードのパラメータは0.01とかが最小値だったりするものが多いわけですが、それよりもさらに遅い「波動」に酔いしれるような感覚を楽曲に応用したいのでしょう。

無論、その手の演出はアンビエントなジャンル、時にはプログレなどでも多く聴けるものの、いわゆる一定のリフの延々と刻み込まれていくような形式には、シラフで集中して楽理面を追求するというような「純朴な」側面での音楽の耳だけで聴いてしまうと確かに辛いかもしれませんが、サイケな感覚や時間の感覚が変容しそうな世界をイメージしながら聴くと余計にベッカーの世界観が理解できるかもしれません(笑)。

チョットしたギター・ソロのテープエコー感が実にマッチしていて泣かせます。この曲に限ったことではないんですが、ギターの音の奥行き感はアルバム全体で最も顕著に現れているようで、iPodで聴くには勿体無いかもしれません。