SSブログ

Downtown Canon - ウォルター・ベッカー Circus Money Analysis [スティーリー・ダン]

画像


扨て、以前視聴曲の全曲寸評をした中でD♭mM7(13)が出現する(C7aug/D♭のようにアプローチしても可)というコトを語りましたが、左近治の英語のヒアリング、少々惜しかったですね(笑)。

「the」を「a」に聞いてるようじゃまだまだダメダメですが、「Greene Street」とは(笑)。スティーリー・ダン好きな人ならフェイゲンのアルバム「Nightfly」に収録されている「Green Flower Street」を連想すると思うので、私もついつい「Green Street」と思っていたのですが(笑)。

それにしても多くの人にも判り易く提示してきたというか、まあ、ジェームス・テイラーがどれほどポピュラーかは判りませんが、70年代前半のジェームス・テイラー、或いはジョニ・ミッチェルの「Court and Spark」とかランディ・グッドラムとか好きな人、さらにはロバータ・フラックの「Feel Like Makin‘ Love」の音世界が好きな人にはスンナリ聴ける曲でしょう。毒ッ気もほんの少し添えて、それを自然と聴かせるさりげなさ。曲中盤以降のハミングとハモンドのフレーズが実に泣かせます。ついつい口ずさみたくなるほどです。

前作「11の心象」ではあれほど音を削ぎ落として「難解な世界」をこれでもか!とばかりにちりばめて毒ッ気全快だったのが、今回はこのように実にやさしいAORの世界を構築しております。とはいえ前作の「Jankie Girl」はサラリと聞き流せるような毒ッ気の薄い世界かと思いきや、実はギター・ソロのフレーズに毒が隠されているワケですね。

執拗なまでに一定のリフを繰り返し、曲の調性の移ろいを楽しむかのように味わうベッカー先生の世界というのは今作でも他の曲であったりするんですが、陶酔・酩酊・卒倒・中毒感のある世界をこういう風に構築しているのだろうなーと思うワケです。

まあ、「Downtown Canon」は他の曲と比較してドラム類のアンビエンスは抑え気味にしているようですが、ハットやスネア辺りのサイドチェインを用いている帯域(恐らくBPF)の妙味は、ハットならオープン時に探ることができます。リリースタイムを。

フロアタムを叩く時に結構アンビエンスが「見える」ので、この辺りから色々研究してできるだけ盗もうと企てている左近治です(笑)。

スネアのコンプのかかりがイイですね。飽和感のあるいかにも「あの音」ですが、強めにコンプかけると大概高域のどこかが「残る」もんですが、この辺りの残った部分をソツなく抑えながら周囲のアンビエンスに溶け込ませている妙味は素晴らしいですね。

まあしかし、イントロのフレーズも実は毒ッ気を醸し出していて、この辺は単音フレーズだからわざわざ左近治が語る必要もないと思って、先日も語らなかったんですけどね。曲中盤以降のハミングが実に味を出しておりますね。そのまま口ずさみたくなるというか、いつまでも聴いていたい心地にさせてくれるというか。

ただひとついえるのは、この曲に限らず今作はスティーリー・ダンやウォルター・ベッカーの独特な音世界に興味の無い人でもスンナリと聴けてしまう優しさを備えているところでしょうか。サウンド全体において、いわゆるテクノ系やフロアシーンで聴けるようなエフェクティヴなギミックは無いものの(実際にはほんのりと使っています)、ダブ系が好きな人なら特にオススメなのが今作でありましょう。ジャズ寄りな人達よりもロック寄りで少々モッズでkinkyな人達に対して開拓しようという狙いがあるのか、はたまたベッカー自身が備えるkinky魂がそうさせるのか・・・。

ともかくレスリー&ハモンド、ハコ鳴り感が備わったエグみのあるスーツケース(=ローズ)の音といい、ファットでマットなスネアetc非常に心地良い曲です。