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DAWワールド [制作裏舞台]

左近治の周囲にはProToolsやらDigital Performerなど色んなDAW環境を有している人達がおります。他のDAWアプリケーションを挙げなかったのは、MIDI部分でソフト音源など殆ど使うことなく、それらの2つのソフトをMTRの代用として使っている人の比率が高いからです。

ソフトシンセやソフトサンプラーなど、一昔前に比べれば本物と遜色ない音が得られますが、やっぱり人間の演奏をそのまま録音したモノにはかなわないんですな(あまりにヘタだと別問題ですが)。

ハイエンド環境における比類なき音質のアナログ環境を兼ね揃えているのならまだしも、アナログを介在しなければならなかった時代と比較すれば、現在のようなシチュエーションにおいてプラグイン類を多数挿入してもノイズなど殆ど無縁。MIDIに頼る・頼らないというのは狭い世界でのボヤキであり、録音ソースに徹底的に編集を施せるのがやはりDAWアプリケーションの醍醐味だと思うんですな。

オートメーションのカーブを目まぐるしく変化させて描いても簡単に追従する。今やDAWアプリケーション筆頭株のLogic Proのオートメーションはメタイベント領域を使用しているので、MIDIコントロール・チェンジと同様128段階。もちろん各段階はアキュレートされるんで均されるわけで、ゴツゴツとした分解能の音にはならないわけですが、一部には7ビット長を超えるパラメータを備えたプラグインもあるので、例えばそれが256段階あるとしたら、強制的に128段階のパラメータにしか扱えないジレンマを感じることは多々あります。

特にReaktorはパラメータ幅の自由度は高いので、平気で7ビット長の可変幅を備えることができますが、それが均されてしまうのがイヤなのであります。ただ、それらよりも可変幅の大きいデータを独自のプロトコルで処理するようになれば処理が重くなるのは避けられないでしょうし、Logicに限らず、DAWアプリケーションの抱えるジレンマというのはMIDIに頼らざるを得ない部分があるのでなかなか脱却できない側面を備えているとも言えるかもしれません。SysExデータとなると、ハードをつなげば次のエクスクルーシヴ・データを受信するまで物理的な時間の間隔を最低でも●●秒必要とか制限がありますし、データ長を長くするにはどうすればイイのか、左近治には到底考えが及びません(笑)。

MIDIケーブル上を経由していなければ、MIDIとして扱っているデータの送受信もMIDIケーブル上のそれよりも速くやり取りしているでしょうから、従来のMIDIデータでも十分なのでは!?と思えることもあるものの、正確なパラメータ保存(トータルリコール)を行いたい場合、DAWアプリケーションのオートメーションの特性とやらを知っておく必要があると思います。

卓がまだアナログで、時は1971年。MTRだって8トラックくらいであったであろうそんな時代に、ドイツのグループ、ファウスト(Faust)が登場する、と。

事前にそんなことを知らせずにファウストを知らないDAW世代にFaustの1stアルバムでも聞かせたら、近年のエレクトロやらインダストリアル要素を採り入れたミクスチャー系に聴こえるかもしれません。音も素晴らしくイイですしね。よもや1971年に録音された音とは到底思えないほどの凄さ。スプライシング・テープで継ぎ接ぎされた音とは到底感じることなどできないでしょう。ピンク・フロイドの「Money」など遠くに及ばないほどの編集の凄味を感じます。

スティーリー・ダンの話をするなら、そんな頃から彼らは独自の音を追究していたワケで、先のウォルター・ベッカーの新アルバム「Circus Money」で各曲の寸評をした左近治でありましたが、あらためて申し上げたいのは、ベッカーがこういう音を嗜好するのは今に始まったコトではない、ということ。

おそらくや母親の胎内にすら存在しなかったであろう、今の若い世代の人達には、そういう古い世界での音楽からもあらためて痛感させられることは多いと思うんですな。ファウストなんてそうそう名前はポピュラーではないかもしれませんけどね。録音や楽曲の世界構築とは何ぞや!?ということを認識させてくれると思います。配信音楽、例えばiTunes StoreでFaustと検索すれば、片手のレントゲン写真のジャケットとかあるでしょう。それが1stアルバムなんで、知らない方は是非この機会に騙されたと思って聴いてみてください。1曲150円ですよ(笑)。当時母親の胎内にも存在しない、ある意味左近治がこうして汎精子のように語るのも悪くはないんですが(笑)、参考になれば幸いですな。

先のベッカーの寸評も、コードネームを挙げて書いているのがありますがそれら以外は「左近治の興味の示さない類」と思っては困ります(笑)。

ベッカー自身がおそらく「判りやすい」アプローチで、こんなに素晴らしい楽曲を12曲も用意したワケですから、比較的判りやすい曲の中で特徴が現れている曲に敢えてコードネームを付け加えて感想を述べたワケでありまして、他の曲にはもっと興味深い音は沢山ありますし、スティーリー・ダン・サウンドが好きな方々なら、そんな音を簡単にLet it goしないだろうな、という思いと、ベッカーを軽視してほしくないからこそ判りやすい曲で、こちらも判り易く解説を付け加えた、という思いからなんですね。

「11の心象」から教えてもらったことは沢山ありますからねー。リスペクトどころか足向けて寝られません(笑)。

思考が、オートメーションカーブの描画に均されて、埋没してしまわないようについつい注意喚起とでも言いましょうか(笑)。DAWでは音が埋没するように均されているわけではないのに、人間の思考というのは均されがちですからね。

良いものは見落とさないよう注意が必要ですな。