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ベースの面白さ [ベース]

以前にも弦振動ってぇのは台形を形成すると述べたことがありましたが、それについて補足しておこうかな、と。

例えば、アナタがブリッジサドルから30cmネック寄りの所を弾いていたと仮定しまひょか。弦の弾き方はこの際どうでもよく、とりあえず「点」で弾いていると思ってください。

ちなみに弦長は90cm、40Hzにチューニングされていると仮定します。


台形の「ドラマ」は、この1秒間に40回振幅する「1回の振幅」の正相が全てです。ちなみに1回の振幅には正相と逆相という表裏一体の関係となっているものですから、1回の振幅のそのまた半分にドラマがあると思っていただければ、と。

ではまず、上記の通りブリッジサドルからネック寄りに30cmの部分をピンポイントで弦を弾きます(開放弦)。

弦が放たれる直前というのは、物理的には完全な三角形ではないですが一応「三角形」だと思っていただければな、と。ナットをAとするなら、ブリッジサドルをB。そして弾かれているポイントが「C」という三角形をイメージしてください。

弦が放たれて振動を始めた直後、弦はどうなるかというと、Cという点は消失し、替わりに2つの点に変わります。ナット側とブリッジ側にそれぞれ点が2つになって、ブリッジ側に波が伝わる点をDとするならナット側はEというワケです(Cは消えています)。

この時点でABEDという四角形、しかもDとEは曲線ではなく常に直線を保とうとします。すなわち、この時点で台形なワケです。

ブリッジ側に伝わる波Dは、ナット側に伝わろうとする波よりも速くブリッジサドル(支点B)に到達します。この瞬間、ナット側に伝わる波はまだナットに到達していません。ナットから30cmブリッジ寄りの所に波があります。

ブリッジサドルに伝わった波は今度は逆相の動きを始めるんで、今度はナット寄りに振動を戻すかのように伝わります。

ナット側に伝わっていた波がようやくナットに伝わった時は、ブリッジ側の波はブリッジサドルから30cmの所に波が来ています。ここでも台形ではなく三角形になる瞬間ですね。

で、ナットも逆相の動きで今度はネック寄りに波を伝えます。ナットからブリッジ寄りに30cm動いた所は、ここが初めて両者の波の動きが「出会う」所です。

ここまでの一連の「動き」が、弾かれた周波数の1回の振幅の「ドラマ」です。これを40回1秒間に繰り返して40Hzの音となっているワケですね。別に1秒鳴らし続けなくても40Hzの周波数が実際に40回振幅するのを待たなくとも、40Hzの音は40Hzというのはお判りですね(笑)。


これらのドラマから判るように、弦振動を阻害するようなものが無ければ、弾かれたポイントの線対称&面対称の形、つまり「平行四辺形」を作ることになるんですな。

ブリッジサドルから30cmナット寄りの所を弾けば、ナットからブリッジ寄りに30cmブリッジ寄りの部分が等しく振幅の「山」を作ろうとする、というこってすわ。

実際には指板やらがあって、極力自由な運動を求めて振動しようとする弦は、実際には阻害されているものも含めて多様な音質(倍音)となるわけですが、結局はそういうこってす。別にベースに限らずピアノだって同じことが言えるんですな。

※弦長とピッキング・ポイントの関係は、それが自然倍音列に符号する場所だと、自ずと当該倍音はロスする音となりますんで、その辺りを一応念頭に置いて、弦振動の原理を知ってもらえればな、と思います。物理的な弦振動が平行四辺形となるわけで、音声信号の波形が比例して矩形になるわけではないので、その辺りも誤解されぬようご注意願います。

ロー・ポジションを押弦してあまりに強く振動させようとするとベッキベキの音になることからも判るように、実は阻害される要因を強めてしまうので逆効果でもあるワケですな。もちろん弾くポイントによっても変わりますけど。

ベースの音の立ち上がり自体を向上させるには、弦を弾くポイントをなるべく点ではなく、台形が速く現れるように「広く宛がう」ことが推奨されるのはこういうことでもあるんです。それに、点に近い狭いポイントで連続的に弾いた場合、先に鳴っていた振動を殺しきれずに(弾くポイントが狭いため弦が勝ってしまう)、それがロスとなって「弦負け」したロスのある音になって、弦振動を捕まえきれない音となって、ピッキングする側もそれをカバーするかのように乱れが出てしまって、弾きムラとなって音に現れる、と。まあ、それが全てではないですけどね。シンセレベルに匹敵するエンベロープのADSR調整に似たものがあるかもしれません(笑)。

ベースらしい太い音で、且つ速いパッセージでもロスのない音を出すベーシストで左近治が好きなベーシストはリーランド・スクラーでしょうか。パーシー・ジョーンズもフレットレスですが似たタイプの音を出す人でありましょう。ジョン・ポール・ジョーンズもその音を知ってはいても、速いパッセージで弦振動と自身の指が補いきれない部分でロスがあるような音を出すので、私はあまり好きではないです。スティックも使うし、シチュエーションによっては好きな時もありますけど。

アンソニー・ジャクソンは「その音」をつかむのが巧い人だと思います。

とまあ、色々書いてみたワケですが、じゃあスティックは?それは次回に。