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コード進行に彩りを [スティーリー・ダン]

Half Diminished 9th。

何を意味するのかというと、ハーフ・ディミニッシュといえばナンタラm7(♭5)。つまりマイナー・セヴンス・フラット5thってこってす。

通常、チャーチ・モード内で現れる場合は、ハ長調なら第7音、つまり「シ」から「シ」の音階で、このモードの開始音を基本音とするコードは、ハ長調ならBm7(♭5)ということです。

Bm7(♭5)の9th音は、長九度であるからしてD♭となります。すなわちハ長調を維持した9th音は♭9となるワケでして、Bm9(♭5)となると、通常のチャーチ・モードでは出現しないコードということを意味します。代理和音のG7(9、#11)ということでもありますな。G7に11thは使わないでしょ、と。アボイド・ノートですからね。まあ、B♭△/C△ということもありますが、ドミナント7thとそれは性格が違うのはお判りですね。

このコード(ハーフ・ディミニッシュに9th音を加えた)はジャズでは常套句。メロディック・マイナーの第6音を基本音とするコードだからです。但し、ジャズの場合はメロディック・マイナー・トーナリティーが先にあるというよりは、体系的にリディアン♭7やオルタード・スケールを用いたことで、メロディック・マイナーを意識するという覚え方の方が実際には多いのではないかと思います。

メロディック・マイナー・トーナリティーを意識しないのに、知らず知らずの内にリディアン♭7thやオルタード(=スーパー・ロクリアン)というスケールの名称を知っていたりする人はいます。そういう人も知らず知らずの内にこういう和声は使っているかもしれません。少なくとも私の周りには居ました(笑)。

彼の場合は「ハーフ・ディミニッシュに9th音は合う」というハナシが過去にあったんですが、その彼というのは楽理的なハナシは弱いです。というより、色んな名称やらが本人にとってウザいのか(笑)、その手の名前は覚えようとしません。ただ、耳や感性は確かなためかほんのわずかな違いをも解釈してモード・チェンジを行います。

「モノ珍しいだけで、実際に使えないような突拍子もない音なんだろ!?」

という穿った見方をする人も実際には多いものですが、咀嚼しきれていないというか理解していない人達の多くはやたらと奇異性ばかりを気にして及び腰になってしまっているのが実情。というよりも拙い音への習熟度であるにもかかわらず、自身の嗜好する音だけにしか興味を向けないために否定的に陥りやすいタイプの輩というのは左近治の周囲にも珍しくありませんでした。

メロディック・マイナーへの入り口などオルタード・テンションが現れるような所なら大概内包しているし、やたらとマイナー・メジャー7thを強調しなくとも使える時というのはあるんだぞ、という一例を今回は提示しようと思いまして。

先のブログで例を示した「2→5→1→6」のおける遊び方というのは、ところどころクロマチック音程が続くところがありましたが、クロマチックが3音続けば、そこからハンガリアン・マイナー・モードに
拡大していくことも可能ですし、メロディック・マイナー・トーナリティーやらメジャー7th上における♭9、♭13、オーギュメンテッド6thを用いることで、よりそちらの世界へ拡大することが可能ですが、クロマチック音程を多用せずにメロディック・マイナーと近しい響きを持つものは他にもありまして、それが「ハーモニック・メジャー」です。

ハーモニック・マイナーならポピュラーでしょうが、ハーモニック・メジャーというのは、ハ長調で例えるなら「ラ」(=A音)のみがフラットした音階です。

ただ、この音階は「ハーモニック・メジャー」として用いるよりも、ハーモニック・メジャーの第2音から開始するモード、或いは第4音から開始するモードの方が「比較的」ポピュラーだと思います。

ハーモニック・メジャーの第4音から始まるモードは、メロディック・マイナーの第4音を半音上げた音でありまして、ココでは便宜的に「Melodic Minor Augmented 4th」という風に呼んでいこうと思いますが、実はコレが結構多用されるワケです。

メロディック・マイナー感を旋律的にではなく和声的に表現するとなると、マイナー・メジャー7thコードを用いるワケですが、マイナー・メジャー7thの響きというのはそれだとどこか不安定であったりするので、より安定させながら強調するには上に9thや11th音を積み上げた方がより性格を出しやすいというのは過去にも語ったことですが、要は11thを#11thとして、マイナー・メジャー9thシャープ11thという風に使うこともしばしばなのだという意味でして、これが現れた時というのはメロディック・マイナー・トーナリティーではなく、ハーモニック・メジャーのトーナリティー(またはハンガリアン・マイナー)を示唆する時でもあるわけです。

HarmonicMajor_MelodicMinor.jpg


譜例にある通り、上段が「ハーモニック・メジャー」、下段が「メロディック・マイナー」であるわけですが、Cメジャー(=長音階)から見れば、AとEがそれぞれ半音下がって変化しているワケですね。

つまり言い換えれば、ハーモニック・メジャー単体とメロディック・マイナー単体の両者の特徴的な音は完全4度の関係にありまして、フラふき加減としては「安定したフラつき」でもあり、両者を使い分けることで、安定したフラつき(矛盾した表現ですが)を強めていくことが可能でありましょう。但し「使い分け」が重要で、「面倒くさいからC、D、E♭、F、G、A♭、B」で使うと「ハーモニック・マイナー」になっちゃいます(笑)。

「C、D、E♭、E、F、G、A♭、A、B」という愚直な使い方をする人はいないでしょうし、特徴的な音だけを拾うと、全然違うコードを使いかねないぞ、と。ハーモニック・マイナーは特徴的な音で実に深みのある叙情性を持つ「短音階」として君臨するからで(笑)、使用するシチュエーションも異なります。

もちろんハーモニック・マイナー完全5度下なんていう世界感はウリ・ジョン・ロートをはじめ、その後のインギー(=イングヴェイ・マルムスティーン)が構築した「あの」世界でもポピュラーなハーモニック・マイナー・モードの世界があるワケですが、ハーモニック・マイナー・モードの世界とは全く異なるので混同しないようにしながら「使い分け」をしなければなりません。


扨て、今回のサンプル曲は4小節のループ。キーはDmですがDドリアンで代用という風に考えてもらって差し支えありません。ただ、ドリアンを示唆する音は用いておりませんけどね(笑)。ただ、これを突然聴いてKeyがCやAmを想起する人はまず居ないと思うので、とりあえずDドリアン(=Dマイナーの代用)という風に聴いてください。

Dドリアンを想起することで、音符上では調号と変化記号を使うことなく先の譜例でどの部分が変化するのかがより明確化されるとも思うんで判りやすいと思います。

それではまずコチラを。



コード進行はというと、

Dm9→Dm7(on G)→Dm9(♭5)と1小節1コード、最後の4小節目が

F△/G→
G△/A→
A7aug

という風にしております。

3小節目のDm9(♭5)のところのガイドメロディはC音に置いています。このコード内において、そのメロディをB音に行かせたりすればそのモードは「ハーモニック・メジャー・トーナリティー」、

B音ではなくB♭音に行かせると、Dドリアンではなく他調への方向性が強まってしまうと思います。維持できなくはないですが(笑)。センター・トーナルがDに聞こえなくなってしまうという意味ですね。

やっつけなメロディラインのようですが(笑)、実はDマイナー感を演出させながら、ハーフ・ディミニッシュ9thの感じを理解してもらおうと思い、さらに、その先にあるB音orB♭音に自由度を持たせた研究材料となるように工夫を凝らしたつもりです(笑)。

このコード進行の展開ならB音を使った方がイイですけどね(笑)。フグがどれだけ危ないのか食ってみなけりゃ判らん!ってワケじゃないだろう、B音選んで各自遊んでいただければな、と。